外国人と話すとき、知らずに相手に不快な思いをさせてはいませんか?(写真:tkc-taka/PIXTA)

社会人たるもの、言葉遣いはもちろんのこと、相手に不快な思いをさせないように、しぐさや話題に気をつけるのは最低限のマナーですよね。これは日本語に限ったことではなく、英語でも同じ。いや、きっと何語でも同じなのでしょう。でも、私たち日本人がよかれと思って行っていることが、実は異なる文化では失礼なこととして捉えられてしまうこともあるようです。

筆者の会社で働く英語ネーティブの同僚たちに、日本人と話しているときに気になる「やめてほしいこと」はないか聞き込みをしてみました。今回はその中から多く挙がった5つを紹介いたします。皆さんも、外国人と話すとき、知らずに相手に不快な思いをさせていないかどうか、チェックしてみてください。

その1 アイコンタクトを取らない

いちばん多く挙がったのが「アイコンタクト」でした。これは筆者もレッスンをしていると気になることがありますので、ネーティブからは出てくるだろうと予想はしていましたが、堂々の第1位。英語圏では会話をするときにしっかりと相手とアイコンタクトを取るのが常識です。日本人は全体的にアイコンタクトをしない印象があります。


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最近は少しずつ変わってきている気もしますが、基本的にはばっちりと目線を合わせるのは、あまり得意ではないようですね。相手に失礼だと大昔に習った記憶さえあります。視線は「ネクタイの結び目」とか「額の真ん中」とか言われましたが、さすがに今はどうなのでしょうか。個人的には「何かついてる?」と気になってしまいますが(笑)。

個人差は当然ありますが、現代の日本人はアイコンタクト自体にはそれほど抵抗がないものの、程よいところでたまに視線をそらすというのが一般的、心地よいように見受けられます。筆者はちょっと取りすぎているみたいなので、気をつけるようにしています。

ネーティブたちに聞いてみると、目が合ったときに相手が視線をそらすと「何かを隠しているのではないか」と不信感を抱いてしまうのだとか。中には「あなたの話に興味がない」というメッセージにも取れるというコメントも。

慣れるまではなかなか難しいと思いますが、外国人と話すときにはちょっと我慢して、意識的に少し長めのアイコンタクトを取るようにするといいかもしれません。また、目が合ったら軽く微笑むくらいの感じが好印象です。さすがに英語圏でも無表情で見つめられたら、ちょっと怖いです。

その2 照れ笑い

意外に多く挙がったのが「照れ笑い」です。どうも日本人は会話の中で、この照れ笑いを頻発しすぎているようです。

日本では照れ笑いが「かわいいしぐさ」の1つとして認知されているせいなのか、とくに若い女性などに多く見られるとネーティブたちが口をそろえて言っていました。筆者はあまり意識をしたことがなかったのですが、皆さんはどう思いますか。

言われてみると、確かに英語圏の人たちはあまり照れ笑いをしない気がします。まぁ、英語で話しているときなど、自信がなくなって、つい照れ笑いしたくなる気持ちはとてもよくわかるので、「許してあげてー!」と言ってみたのですが、どうやらこの照れ笑い、私たちが考えているのとは別のメッセージとして捉えられているようです。

ネーティブたちは照れ笑いをされると「相手が真剣に話していない」とか「適当にあしらわれている」といった印象を受けるようです。おそらく相手が笑い出したときに、私たち日本人は「緊張しているんだ」とか「困っているんだ」というメッセージとして理解できるのですが、ネーティブはまず「バカにされている」とか「ふざけている」というほうに直結してしまうようなのです。

緊張で照れ笑いをしながらプレゼンテーションをしている人を見ると、一気にその内容に対する興味が冷めてしまうというネーティブもいました。商談などでプレゼンテーションをするときには、気をつけましょうね。

その3 身体の話をする

美的感覚も文化によってさまざまというのを痛感したのが、この3つ目の話です。ネーティブたちは、初めて会う日本人によく「鼻が高いね」とか「顔が小さいね」とか言われるとのこと。そして、それがすごく嫌だと言うのです。一生懸命「八頭身」というのを英語で説明してくれるのはいいのだけど、ちっとも褒められている気がしないそうです。

日本人とは異なる身体的特徴を指摘されて、まるで自分の身体が普通ではないということを言われているような気さえするとのこと。われわれが日本的美意識で褒めているつもりのことですら嫌がっていますので、「毛深いね」とか「体が大きいね」とかは、もう悪口にしか感じないとのこと。

褒めるときには、身体ではなく身に着けているものを褒めるのが英語圏では無難でしょう。Nice tie!(いいネクタイだね!)とかI like your bag. (そのかばんいいね)とかであれば、相手もすんなりと受け止めてくれるはずです。

その4 「外国人だから」という偏見

筆者の同僚たちは日本に住んで生活しているということもあるため、次のような意見も出てきました。旅行者には当てはまらないかもしれません。

簡単な日本語のフレーズ、例えばあいさつだったり、「ありがとう」とか「すみません」というような日常的に使用する一言を言っただけで「日本語ができるんだね!」と褒められると、逆にバカにされているような気がするそうです。同じように、箸が使えることや正座ができることも、いつまでたっても褒められ続けるのがつらいようです。

食べ物に関しても「納豆は食べられる?」とか「刺身は大丈夫?」とかいうのも聞かれ飽きたそう。思いこみで「ハンバーガーは好きだよね」とか「ステーキが好きでしょう」とか言われるのも、ちょっと抵抗があるようです。質問している背景に「外国人だから〜だよね」という決めつけがあるのが見えてしまうのが嫌なようです。

もちろんこういった質問も、思いこみや興味本位で尋ねるのではなく、確認する必要があるときには聞いても問題ありませんが、「〜できますか」というのをそのまま訳してCan you 〜? と尋ねるのは控えましょう。

例えば、Can you speak Japanese?(日本語が話せますか)とかCan you eat raw fish?(生魚は食べられますか)というような質問は避けて、Do you speak Japanese?(日本語は話しますか)とか、Do you eat raw fish?(生魚は食べますか)とDo you 〜?で聞くのをお勧めします。canで能力を尋ねているニュアンスよりも、doで習慣を尋ねているニュアンスのほうが、ネーティブにとっては抵抗感が少ないようですよ。

その5 スモールトークのトピック

たわいもない会話のことをスモールトークと言いますが、このときにする話題にも文化の差があるようです。英語ではHow was your weekend?(どんな週末でしたか)だったり、What do you do?(お仕事は何をされていますか)のような質問はよくあるトピックです。

こういった質問に対して、Nothing.(何もしなかった)とか、I work near here.(この辺りで働いてます)のような返答が来ると、「コミュニケーションを取りたくない」というメッセージと感じられて不快に思うようです。

もちろん、毎週末そんなにすごいイベントがあることをネーティブも期待して聞いているわけではありませんので、たわいもない日常の行動で構わないので「家でギョウザを作った」とか、「友だちと横浜で買い物をした」とか答えればいいでしょう。あまり詮索されたくないという方もいると思いますが、言いたくない情報は言う必要はありませんので、コミュニケーション自体が破綻しないような回答にするよう、気をつけましょう。

本当に何もしなかったという人は「疲れていたので、一日中家で寝ていた」というのでもいいでしょう。そして、どうしてそんなに疲れていたのか話しても構いません。

また、仕事に関しても会社名までは言わないまでも、職業くらいは伝えたほうが、相手に「人に言えない仕事なのか?」などと妙な勘繰りをされなくて済むと思います。例えば、I work for an IT company.(IT企業に勤めています)くらいの答えで十分ですし、オフィスの場所も詳しく明かしたくなければIt’s in Tokyo.(東京にあります)くらいで大丈夫です。

ネーティブはあいまいな返事や、会話が断絶するような答えが来ると不快に感じるようです。でも、日本語でも同じですよね? 強いて言えば、日本人同士なら「ああ、言いたくないのか」と察して、「そこは聞かないでおこう」となる部分が、外国人にはちょっと理解しがたいのかもしれませんね。

それでいて日本人の中には、Are you married?(結婚してるの?)とか、Do you have a boyfriend?(彼氏いる?)とか、How old are you?(何歳?)というような個人的な質問を投げかけてくる人がいるのが、とても信じられないとのこと。

最近は日本でも「こういった話題はハラスメントにつながるので注意しましょう」と変わってきてはいますが、英語ではこのような個人的な質問に対するタブー感は、日本でのそれよりもずっと強いというのは覚えておいたほうがよさそうです。

よりよいコミュニケーションのために

英語が苦手だからといって、自信なさそうにしたり、もじもじしたりすると、ネーティブにはむしろ失礼だと思われてしまう可能性があるようですね。自分の国の言語ではないので、うまく話せなくて当然だと開き直って、堂々としているくらいのほうがいいのかもしれません。

また、文化間の差異を意識して、相手に配慮することは、これからの国際社会の中では必須になっていくでしょう。ですが、気をつけたいのは、その差にとらわれすぎて「日本人は○○だ」「イギリス人は○○だ」というようなステレオタイプを助長していくようなことです。

つい自国の文化にないものに目が行きがちですが、文化を越えて共有するもののほうがはるかに多いのです。お互いの共通点を探していくような姿勢でコミュニケーションを取っていくのが理想的ですね。