記憶力アップトレーニング方法とは(写真:あんころもち/PIXTA)

記憶力日本選手権大会に6度出場し、すべて優勝している『見るだけで勝手に記憶力がよくなるドリル』の著者、池田義博氏。記憶力を鍛えるうちに、集中力が高まる、メンタルが強くなる、頭の回転が速くなるといった効果まで表れ始めたそうです。今回は、記憶力とは一見無縁のスキルまでアップした理由とその方法をご紹介します。

頭の回転が速い人は分類能力に長けている

そもそも頭の回転が速い人とは、どんな人でしょうか。人気のコメンテーターやタレントを思い浮かべると、頭の回転が速い人の特徴がわかりやすいでしょう。

彼らは、何か意見を求められたり、お題を与えられたりすると瞬時に的確な答えを返せます。これは頭の回転が速いからこそなせる業です。このとき彼らは、与えられた課題のポイントを素早く見つけ、それと共通点がある話を瞬時にたくさん頭に思い描いているのです。後はその中から話すことをピックアップするだけ。

つまり彼らに備わっているのは「情報を分類して、共通点を探し出す意識」で、これは記憶力アップをするためにも大切な力の1つです。ここではこの意識のことを「分類センサー」と呼んでいきます。

分類センサーがあると、覚えるものがたくさんあっても情報量を圧縮できます。覚える量が少なくなるので、記憶しやすくなるというわけです。

例えば徳川家の将軍15人の名前を覚えるとしましょう。ほとんどの名前に「家」という漢字が使われていて、使われていないのは4人だけということに気づけば、覚えやすくなるというのは想像がつくのではないでしょうか。

人が短期間で記憶できる情報量は大体決まっているので、情報は圧縮して覚えたほうがたくさん記憶できて有利といえるのです。

また共通点で分類すると、それぞれのグループに見出しがつきます。例えば「人間、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン」で構成されたグループに「類人猿」と見出しをつけるようなイメージです。この見出しがタグの役割をしてくれて、記憶したものを思い出すときに役立つのです。

1つの入れ物に何から何まで一緒に放り込んでいるだけだとなかなか目当てのものは引っ張り出せません。でもきちんと項目ごとに分類していれば、すぐに見つけ出せます。これと同じく、頭に入れるときに分類しておけば、時間をかけなくてもすぐに思い出せるということです。

実力チェック!

ではここで分類センサーの実力チェックをしてみましょう。

「A」 のグループにあって、「B」のグループにないものは何でしょうか?


共通点を発見できましたか。答えは、「ひげ」です。見つけられなかった人には、情報の分類が苦手という方がいらっしゃるかもしれません。

ポイントは「ない」ものと比較する前に「ある」ものだけに注目して、共通点を探し出すことです。共通点を探し出す意識があると、覚えるものがたくさんあったとしても情報量を圧縮できます。覚える量が少なくなるので、当然、記憶もしやすくなるというわけです。

分類センサーが働くと、アイデア出しや文章作成などのアウトプット能力までもが飛躍的に向上します。では分類センサーを身に付けるドリルをご紹介します。

5つの言葉のうち4つに共通することと仲間外れの言葉を探してください。



答えは……

□共通点:球技、仲間外れ:フェンシング
□共通点:燃えるもの、仲間外れ:海水

ドリルとあわせて取り組むとより効果的な、普段からできるトレーニングもあるのでご紹介しましょう。やることはシンプル。名詞を1つ設定し、その言葉の上位概念か下位概念の名詞を探します。上位概念ならより抽象的、下位概念ならより具体的な言葉にしていくのです。

例えば「犬」であれば、1つ上は「哺乳類」さらに上が「動物」といった具合です。最初に設定した名詞が抽象的であれば具体的にしていってもかまいません。「動物」で始めたのなら下位概念の「哺乳類」さらに下に「犬」というように続けていきます。最低2段階先まで、なるべく早く見つけるクセをつけましょう。2段階以上続けてもOKです。

新聞を読んでいるときに適当に指を置き、指した言葉で考えてみたり、電車に乗っているときにパッと目についた言葉で考えてみたりと、いつでもどこでも取り組めます。特別な道具も使わず、意識さえしていればできるので、ぜひお試しください。

読むスピードを意識的に上げるとより多く記憶できる

記憶には、一度でじっくり覚えるよりも、薄い記憶を重ねて覚えたほうが長く頭に残る「分散効果」という性質もあります。例えば英単語100個を4時間で覚えるとしましょう。じっくり4時間かけて1日で覚えたAさんと、1日1時間で全体をざっくりと覚えるのを4日繰り返したBさんがいます。どちらも同じ4時間を費やしますが、一般的に長く記憶に残せるのはBさんです。つまり同じ時間を費やすなら読むスピードを速くするほうが一石二鳥。


「本や参考書を読むスピードが遅いから……」という方でも大丈夫。意識して読む速度を普段の倍にしてみましょう。1ページ読むのに1分かかっていた人は30秒、30秒かかっていた人は15秒を目標にするのです。

速く読むには、理解速度を上げなくてはいけません。そこでより早く理解するために、脳はフル稼働し、自分が持っている知識と新規情報を照らし合わせようとします。最初はもたつくかもしれませんが、続けていくうちに脳はその状態に慣れていき、脳を上手に使えるようになるというわけです。これも本来、記憶力のトレーニングの1つ。「自分が持っている情報と覚えることを照らし合わせる意識」を鍛えてくれます。

試験勉強もビジネスも、脳の力を鍛えれば、今まで以上に効率よく結果が出せるようになります。脳の力を鍛える方法の1つとして記憶力アップトレーニングを活用してみてはいかがでしょうか。