15日、都内で、インタビューに答えるライブドアマーケティングの穂谷野新社長(撮影:吉川忠行)

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ライブドアグループをめぐる証券取引法違反事件で、ライブドアマーケティング(LDM)<4759>は13日に同法違反(偽計取引、風説の流布)の罪で、ライブドア(LD)<4753>とともに法人として起訴された。

 同じく起訴されたLDM前社長の岡本文人、同前取締役の堀江貴文(LD前社長)、同前取締役の宮内亮治(LD前取締役)ら4被告は、LDM(当時バリュークリックジャパン)による出版社「マネーライフ」買収にからみ、LDMの株価をつり上げ、高値で売り抜けようと画策。2004年後半に、虚偽の買収計画や黒字を装ったLDMの決算短信を発表したとされる。

 今回の事件の「舞台」となったLDMをどう再建し、株主や顧客から失われた信頼を回復していくのか。東京都港区の同本社で15日、岡本被告の逮捕でかじ取りを任された穂谷野智(ほやの・さとし)新社長(43)に聞いた。(聞き手:常井健一記者)

── 法人としてのLDMと前社長、前取締役が起訴された。新社長としての認識は。

 大変厳粛に受け止めている。特に、株主や顧客、関連会社、社員、社員の家族や友人に本当にご迷惑をかけたと思っている。深くお詫びを申し上げたい。

 事件については、スピードを優先するあまり、企業倫理が欠落していた部分があった。私自身の反省も含めて、会社としてしっかり受け止めながら、少しでも信頼回復できるよう取り組んでいきたい。

── LDMとは何をしている会社か。

 インターネット上の広告、テレマーケティングなどの販売促進活動を、法人から外部委託を受けるというサービスを行っている。LDグループの中で唯一、B to B(企業対企業)のサービスをやっている会社。

 良いサービスを作って、法人を営業で一軒一軒回って、提案して、納得して頂く。最近では、外部委託のサービスを活かしたコマース事業も始めた。その一環に買収した衣料品通販会社・セシール<9937>も位置付けている。

── LDMのLDグループでの位置づけは。

 LDとは多少距離を置いた経営体制づくりを05年から進めてきた。資本関係でいうと、子会社から持分法適用会社に変わった。

 私としてはB to Bのビジネスを法人向けに一件ずつやり、効果を出していきたいと思っている。ポータルサイトや金融事業をやっているLDはB to C(企業対顧客)なので、違うと考えている。

── 事件以降、日々の業務に影響していることはあるか。

 やはり顧客の方が、コンプライアンス(法令遵守)や市場などの問題に懸念を抱いているので、売上げなどが一部減少している。一方、多くの顧客から励ましの言葉も頂いている。新規の業務はなかなかできないが、既存の顧客に一歩一歩提案をし、信頼回復への作業を進めている。

── LDMはグループ内では営業力のある会社として、営業畑の岡本被告が強いリーダーシップを発揮したといわれている。営業体制の立て直しは現在できているか。

 営業力を強くしたいという気持ちは、もともと私自身にもあった。かなりの教育や現場指導、上に立つマネージャーの指導など、昨年から改革を進めてきた。それがないと会社としても強くなれないので、今後一層進めていきたい。

 逆にこういう時期で多少時間もあるので、従業員同士でいろいろな情報をやりとりしながら、「かがんでいる」時期なりにエネルギーは蓄えていると思っている。

── 今後、どのような経営をしていきたいか。

 もともと今年は自分たちのメディアを育成したいと思っていた。実は3月ぐらいに新しいメディアを発表しようとしていた。(事件が)発表時期に影響している。信頼性という面でも新規のお客様は難しいので、多少ロスも出ている。
 
 経営諮問委員会も立ち上げた。外部の審査を受けながら、適応かつ適正な懸案をしっかりできるような会社機能を有し、信頼回復しながら、新規の事業にもチャレンジしていきたい。

── 「新しいメディア」とは。

 あまり話せる段階ではない。顧客の成果にこだわった広告メディアを用意して提供したい。もともと広告ネットワークを持っていたのだが、今までのやり方とは若干違う。

── セシール買収当初は、仮想商店街「livedoor デパート」とのシナジーも想定していた。セシールの独自サイトもあるが、LDのポータルを使う戦略に変更はあるか。

 変わりはないが、LDのポータルサイトの価値、お客様から支持の動向によっては、見直さなくてはいけない。セシールをしっかりとした会社にすることを最優先に考えていきたい。

── 代表権の異動が1月23日の取締役会で決定したのに、2月1日に再度、取締役会が開かれ、2度目の発表がされた。取締役会の参加人数など、選任の経緯に違法性を指摘した報道もあるが。

 それは見解の相違。もともと6人いた取締役のうち、3人が逮捕された。会社としての機能を保つために代表の不在はおかしい、ということで弁護士に確認の上、23日に逮捕された3人がいない取締役会で、代表権をいったん私の方に異動した。その直後に逮捕があったので、急きょ社長職にも身を置いた。

 緊急事態だったので、(法的に)グレーな部分は多少あるだろうということで、2月に再度取締役会を開き直して、追認するような形できれいに整理した。

── 選任の適法性を、それぞれ別の弁護士に確認したのは本当か。

 それは当然、事実。適正にやっていかなければならないという反省もあって、いろいろ意見を聞いて整理した。はじめは顧問弁護士、次は違う弁護士に聞いた。

── 10日に発表された「経営諮問委員会」とは。

 LDMは、もともと経営管理機能が強くなかった。LDは内部に委員会を作ったが、われわれは機能的、人的な面でどうなのか考えた。

 しっかりした経験がある第3者に見てもらわないと、今後適正な経営ができないのではという強い思いがあった。多少時間がかかってしまったが、法律、会計、ビジネスの各方面でしっかり見ていただける5人に賛同をもらえた。

 法令を遵守した経営のあり方と、事件について社内調査を委員会にお願いしている。また、いろいろな助言、勧告を受けながら、業務執行ができるようにと考えている。委員会に連動して取締役会をしっかりやって、適正な経営管理を有した経営をしていきたい。

 社内調査には直接われわれが入らず、委員会にやってもらう。

── 05年12月期決算の業績発表が2月末に迫っているが、予定通りできるのか。

 間に合うようにやっている。地検にかなりの書類が押収されてしまっているので、地検の捜査と連動しながら、しっかり決算ができるように準備を進めている。

── 港陽監査法人との契約見直しがグループ内で進んでいるが、今回の監査はどこが担当するか。

 05年12月期は港陽が行う。すでに始まっている今期(06年12月期)については、港陽にお願いできないと思っている。いま一生懸命、あちらこちらの監査法人にあたって探している。(「下」につづく)

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