VRやVTuber時代のインタラクティブとは? CEDEC2019レポート

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ゲーム開発者のためのカンファレンス「CEDEC」が9月4日〜6日にパシフィコ横浜にて開催された。「CEDEC」では、さまざまな技術セッションのほか、会場内には展示スペースも設けられ、たくさんの人で盛り上がっていた。

特に体験できるデモには順番待ちも続出していた。
ここでは、そんな展示&デモのうち、いくつか気になったものを紹介しよう。


◎中国武術のバトルモーション道場
会場奥にもかかわらず人気だったのが、いまや格闘ゲームやゲームのアクションシーンに欠かせない中国武術のモーションを実演とともに解説してくれる「中国武術のバトルモーション道場」。



小山雅晃(株式会社スクウェア・エニックス VFXアーティスト)さん




どうしたらキャラクターの動きとしてきれいに見せられるかというポイントとともに、さまざまなシーンを紹介していた。中国留学中に15年ほど武術を学んでいたという小山さんによる実演と直接の指導は貴重。もちろん、中国武術の特徴、構えや所作の意味などの解説も差し込まれる。

リファレンスとして動きを撮影したり、身体の使い方を教えてもらったり、常に人だかりが絶えなかった。


◎自分とだけ目が合うキャラクター
画面上のCGのキャラクターなどは、ディスプレイ上では平面的な描画となるため「特定の相手とだけ目を合わせる」ことができない。「モナリザ効果」と言われるが、目が合う(と感じる)角度の幅が広いのだ。

展示は東京工業大学 未来産業技術研究所 三武裕玄助教らによる研究で、目の前にいる複数の人たちのうち特定の人にだけ目を合わせる表現を可能にしたというもの。ディスプレイを2枚重ねて、黒目と白目部分を別々に表示することで立体感を出している。


写真ではわかりにくいかもしれないが、こちらを見てくれている感じ。なお、展示で鏡面を使っているのは、鏡であればその場の状況を背景に使えるからだという





もちろん3Dディスプレイなど深度を表現できるディスプレイもあるが、それらはまだまだ非常に高価だ。しかしこの方法なら、安価にキャラクターと特定の人物のアイコンタクトを実現できる。

今後、キャラクターを使った案内表示やバーチャルアイドル、VTuberなど、ディスプレイに投影されたキャラクターとのインタラクションは間違いなく増えていく。そうしたシーンでの活用を考えているという。特定の人とのアイコンタクトが表現として実現できれば、インタラクションの質は向上するだろう。


◎頭から植物を生やす体験
HMDなしにVRによる感覚を体験できるコンテンツ「ブレインツリー」。
この作品は、国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(IVRC)2018年決勝大会にて総合優勝を受賞したもの。明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 西川尚志さん、椎名星歩さんらによる作品だ。

体験者は椅子に座り、まず、植木鉢を模したカバーをかぶる。目の前にはディスプレイが縦型で置かれ、そこに表示されるとおりに体験が進んでいく。植木鉢の中に種をまき、水をやり、すると葉がのびてくる。風を送ると葉もパタパタ揺れる。そして、しっかり育ったら収穫される。

鏡のように置かれる目の前のディスプレイでストーリーが展開していくのと並行して、風や栄養剤でポッと温かくなる感覚、張った根が引き抜かれる感覚がデバイス側で再現されることで、体験を実現している。根が張る、抜かれる際は頭皮にちょっとした刺激がある。























◎メタリム:第三、第四の腕の誕生
東京大学 先端科学技術研究センター 稲見昌彦教授らによる作品で、肩に付けた第三・第四のロボットアームを足で動かすというもの。SIGGRAPH2018 Emerging TechnologiesにおいてBest in Showを受賞。

足先に付けた曲げセンサーで手を握る(開く)を操作する。腕を上げるには、そのまま足を上げればいい。体験してみたが、肩に背負う腕の部分がそこそこ重いが、思ったより動く自由度は高い。


本体は肩から背負う














もう1つ腕がほしいと思うことは誰しもある。それを実現する仕組みで、非常に興味深い。

こうしたインタラクティブセッションでは、出展者と直接話ができることも魅力の1つ。
技術的な質問や自分なりのアイデアなど話してみるのもおもしろい。


執筆 大内孝子