「中国が先行していると言われている5G(第5世代通信)関連では、中国大手通信メーカーの通信機器の9割以上に当社のサーモモジュールが搭載されている。医療分野では血液のDNA分析や細胞分析機器で使用される。成長分野で特に温度管理が重要な装置に使用されるため需要があり、今後も伸びていく」

 「自動車関連ではシートの温度調整用に使用されている。また電気自動車(EV)などに搭載するリチウムイオン二次電池の温度コントロールは、冷却水で調整している。より厳密に温度管理ができるサーモモジュールでの調整を目指し、自動車メーカーなどと検討を進めている。自動車の場合は、導入、実用化に時間がかかるため、3〜4年後からの量産化を目指している」

逆にチャンス、常に先を読んで投資
 ー日本や他の国での事業は?
 「まず日本は、真空シールやサーモモジュールを製造する千葉工場を始め、5月から一部稼働している山形の石英工場、セラミックスの石川・尼崎工場などの拠点をマザー工場として位置づけている。次世代の半導体素材など最先端の研究開発を進めていく。洗浄ビジネスは、現在は中国市場に特化した事業だが、今後は中国外のアジアやヨーロッパなどでの展開も検討中だ。シリコンウエハーも増産に伴い、中国だけでなく世界的に販売を強化する」

 「既存のビジネスに固執している会社は成長しない。会社の発展には常に先を読んで最先端の技術、研究開発をしなければならない。上海には洗浄ビジネスの開発センターと分析センターの設立を計画している。また、人材育成にも力を入れている。中国国内で修士や博士課程を卒業した人材を多く採用している。今後も、社員の特許出願も推奨して、その実績に応じて申請したら報奨金が出るような仕組みづくりも整備していきたい」

 「シリコンウエハー、パワー半導体基板、半導体前工程の製造装置に使用される石英、セラミックス、シリコンパーツ、CVD−SiCなどの消耗材、サーモモジュールと世界シェアの65パーセントを持つ真空シール、半導体製造装置部品の洗浄ビジネスなどの商材と中国の国産化が進む成長産業がマッチしている。特に中国市場においては、米中貿易摩擦を逆にビジネスチャンスと捉え、中国企業にはない技術や製品を強みとして、新たな市場を切り開いていく」

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