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ミドシップかフロントミッドシップか

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

ジャガーは次期Fタイプとして、ミドシップ・レイアウトを検討している。加えてかつてのコンセプトモデル、C−X75のデザインを盛り込むことも考えているらしい。

ジャガーのデザイナーとエンジニアは、次世代のポルシェ911のライバルとして、Fタイプの方向性に関する重要な決定をしようとしている。現在のFタイプはフロント・ミドシップだが、それを踏襲するか、ミドシップとし純EVかハイブリッド・システムを搭載するか、という内容だ。

現行のジャガーFタイプ

AUTOCARはプロジェクトに近い人間が、後者の選択肢を好んでいることを把握している。デザイン・ディレクターを務めていたイアン・カラムによれば、新ディレクターのジュリアン・トムソンとともに、次期スポーツカーの大枠を決めたことを話してくれた。

「C−X75に近いものになるでしょう。ジャガーには、フロント・ミッドシップというスポーツカーの雛形がありますが、わたしはミドシップが良いと思っています。個人的にも期待するクルマです」 とイアン・カラムは答えている。

現在ジャガーは最低でも2つのアプローチを検討していることになる。1つはイアン・カラム好みの、ショートノーズで純EVを含む電動化されたミド・エンジン・レイアウト。もう1つは長いボンネットを持つ、フロントエンジン。ハイブリッドのV8が載る可能性もある。

今後3年間は継続生産される現行Fタイプ

「EVの場合、C−X75のようにバッテリーをクルマの中央にTかHの形状に搭載したレイアウトを取れます。エンジンを縦置きにしたミドシップも制作は可能です。スタイリングはドライブトレインを決められませんが、ドライブトレインはスタイリングを左右させます」

現行Fタイプの世界的な販売台数は6万2000台で、そのうちの70%はクーペ、残りの30%はコンバーチブルだという。アップデートを受けながら、さらに3年間は継続して生産される予定になっている。その上でカラムは次期モデルの開発もすぐに開発する予定があると、話してくれた。

マイナーチェンジに向けてニュルブルクリンクでテスト中のジャガーFタイプ・コンバーチブル

新しいスポーツカーの開発で重要となるのがプラットフォーム。ゼロから設計すると多額の費用を要し、現在のジャガー・ランドローバー(JLR)社には負担が大きい。2018年に多額の赤字を生み出した同社としては、新しいレンジローバー・イヴォークやディスカバリー・スポーツ、ジャガーXEなどが、中国での不信や巨額投資の穴埋めをしてくれると期待している。

そんなジャガーで期待できるソリューションは、BMWとの連携だろう。既に将来のEVモデルのために電動ドライブユニットを協働で開発・製造することを発表している。さらにBMWは、JLRへ内燃エンジンの供給も示唆。BMWのFAARと呼ばれる前輪駆動プラットフォームも、ランドローバー製のコンパクトSUVへ展開することも可能となっている。

BMWとの連携という可能性も

BMWによれば、次期i8を純EVのスポーツカーにするかどうか、決定を進めているという。既にプロトタイプはテストに入ったそうだ。EVスポーツカー用のプロトタイプを共有することで、BMWとJLRはともに技術開発のコストを削減し、専門知識とリソースの蓄積を進めることができるはず。

一方でジャガーには、Iペイスを構成するEV用プラットフォームも存在する。スポーツカーのスタイルに合わせて多少の投資は必要となるはずだが、EV用プラットフォームは様々なボディ形状や駆動方式に適応させやすい傾向がある。

ジャガーC−X75プロトタイプ

FタイプはジャガーをSUVだけでなく、スポーツカー・メーカーとして評価されることにつなげた。しかしクラスをリードするポルシェ911などと比較すると、販売台数は遥かに及ばない。カラムはFタイプの後継モデルがブランドとしても重要だと主張する。

C-X75は2010年にジャガーが発表したコンセプトモデル。当初の計画では、ジェットタービンを用いた発電機を用いて、電気モーターで走行するスーパーカーだった。実走行可能なプロトタイプでは、実際的なガソリンエンジンのハイブリッド・パワートレインを搭載している。

だが2012年にプロジェクト自体の終了が決定。5台のプロトタイプが作られたが、好評だったイアン・カラムのエクステリアデザインは、生産モデルに展開されることはなかった。