GReeeeNが1年半ぶりのオリジナルアルバム『第九』を25日にリリースする。彼らはデビューして13年目、多くのヒット曲を持ちながら、まだまだ音楽を作り続けている。普遍的であり大勢のリスナーが楽しめるポップスをコンスタントに歌い続けている。タイアップ曲、話題曲が多い彼らの音楽のなかにある“揺るぎないもの”は一体何なのだろうか? 9作目『第九』の完成で改めて感じられた、GReeeeNの芯に変わらずあり続ける3つの点、そして、今を更新し続ける、今だから歌えるエモーショナルさという部分に着目してみたい。【平吉賢治】

デビュー13年目、まだまだ音楽を作り続け『第九』へ

『第九』通常盤ジャケ写

 ストレートな恋愛ソングや応援ソングを数多く発信してきたGReeeeNの新作。それらのテイストの楽曲の他にも新たな彼らの魅力が味わえる。例えば「ノスタルジア」など、30代である筆者が初めて触れられる哀愁や、新たな情念が込められていることを感じた。今を更新し続ける、今だから歌えるエモーショナルさを、GReeeeNは現在進行形で歌い続けているのだ。

 “愛唄”を収録した1stアルバム、“キセキ”を収録した2ndアルバム――。GReeeeNのアルバムは9枚目で、変わらずに広く親しまれる音楽を作っている。それこそ、GReeeeNという名前のなかには“エバーグリーン”という意味合いも含まれているのではないかと推測したくなるほど、色褪せない曲を作り続けている。

 名前の由来について正式には、メンバーのHIDEが「GReeN Boyって造語をご存知ですか? 新人とか、未熟者とか言う意味で使われます。で、まだまだ未完成であり続ける、未知の可能性という意味でGReeeeNと名付けました。『e』の数は人数分となっております」と、公式ブログで10年前の2009年3月に綴っている。

 GReeeeNの楽曲と言えば「ポジティブ」「恋愛」「青春」「応援」というイメージを連想する人も多いかと思われる。それを、現在進行形で歌い続けるということは、難しい部分もあるかもしれない。それでもGReeeeNは、“未知の可能性”を希望の言葉と旋律に乗せ、「今だからこそ、この時代だからこそ伝えたい想い」を、あらゆるかたちにして、老若男女に向けて発信し続けている。

 新曲の収録はもちろん、彼らの代表曲のひとつである「キセキ」のリミックスバージョンの収録や、MISIAに提供した、ドラマ『義母と娘のブルース』主題歌「アイノカタチ」のセルフカバーを収録しているということからも、それはうかがえる。

 発信し続けることは、未知の可能性を秘めている。GReeeeNはそれを、アルバム9枚と積み重ねてきた。「ポジティブな想いを、常に発信し、それを継続させる」という3点は、どんな時代でも、特に現代においては「多くの人に想いを届けられる」という大きなパワーになるのではないだろうか。

 畑は異なるが、例えば人気ユーチューバーのチャンネルを観ると、毎日のように動画という作品を配信し続けている。多くの人を惹きつける人のSNSなどを見ると、現在の何かしらの想いや考えを色んなかたちで発信し続けていることが多い。実業家の方なども、揺るぎないスタンスで率先して有益な情報などを様々なコンテンツで発信し続けている。そこには、ポジティヴな姿勢、発信力、継続力の、先述した3点が共通して含まれているように思える。

 GReeeeNはデビューの2007年からほぼ毎年、音楽作品を発信し続け、変わらぬスタンスを時代の背景に適合するかたちで想いを伝え続けている。その根底には、グループ名に込められた想いである“まだまだ未完成であり続ける、未知の可能性”という揺るぎないスタンスがある。そして、ポジティブと発信力と継続力が含まれている。

GReeeeNの「ポジティブ×発信力×継続力」のエネルギー

 アルバムタイトル『第九』は「オリジナルアルバム九枚目」というところから付けられていると伝聞。リスナーからすると、アルバムを作り続ける労力やそこに必要なエネルギーがどれだけのものかというのは計り知れない部分だ。

 そこに必要なものは、先述の3点の力・スタンスの究極形「自分を信じきる」ということではないだろうかということが、作品から感じさせられる。GReeeeNは、現在もそういった強い信条をもとに、作品を発表しているように思える。

 今作『第九』についてだが、「勝ちドキ」はアルバムの1曲目にふさわしく鼓舞するもので、バスケットボールに寄り添ったものになっており、さすがGReeeeNと言いたくなってしまうようなポジティヴエネルギーに満ちている。厚めのギターサウンドとハイトーンボーカルからは“現在のGReeeeN節”が感じられる。

 また、「逢い言葉」のように温かく包み込むようなミディアムナンバーは、ヒット曲「遥か」を連想させるような心の琴線にそっと触れるGReeeeNならではの1曲。「ノスタルジア」のように、大人になって懐古心が出てきて少し寂しさを感じるという、GReeeeNと共に時代を過ごしてきた人が今だから歌えた共感できそうなポイントもある。少なくともGReeeeNと、GReeeeNの音楽と共に大人になって過ごしてきたリスナーにとっては、サウンドもどこか懐かしく感じられるかもしれない。

 そんな、20代、30代、40代に届く楽曲もありながら、10代の学生生活にしっかりと寄り添う「贈る言葉」という卒業ソングや「カワリバンコハンブンコ」のような淡い恋の歌もありつつ、「ポポポポポーズ」では子供と一緒に聴いて踊りたくなったりと――。各年代の感受性に届く“様々な表情”を見せることができるのもGReeeeNならではだ。

 また、1月シングルのカップリングだった「460 〜YOUR SONG〜」のタイトルに含まれた数字だが、この番号は実は今までのデモ番号の通し番号だという。GReeeeNは現在進行形ということも加味すると500曲近く曲を作ってきているということだ。

 このタイトルからは、「もうこんなに作ってきたんだな」というメンバーのリアルな現在の想いであると共に、GReeeeNの音楽(460曲のデモ)を振り返りつつ、GReeeeNが音楽で影響を受けたように、「あなたにとってGReeeeNの音楽がそうでありますように」という、実は一番芯にある想いという気もする。それは、歌詞の<くれたのは!唄でした サヨナラも唄でした>という部分や、<いつでも いつまでも 唄の中にある真実(ホントウ)>という部分に込められているように思える。

 GReeeeNの楽曲は、タイアップや、話題曲が多い。どんな世代のリスナーであっても、どこかのアンテナに引っかかるエッセンスを含めているからこそ、多く起用され、耳にすることが多いのではないだろうか。

 そこに必要な力は、GReeeeNの作品から感じられるポジティヴな姿勢、発信する力、グループの信念を継続するスタンスという、「多くの人に想いを届ける」という、エモーショナルで深みのある大きなエネルギーを常に保っているからではないかと、アルバム『第九』を通して感じさせられた。GReeeeNが積み重ねて発信し続けてきた普遍的な魅力もあり、そして、今改めて気付かせてくれる新しい魅力もある――。

 “今”を13年間更新し続けてきたGReeeeN。9作目のアルバム『第九』は、恋愛ソングや応援ソングだけではない、“今だから歌えるエモーショナルさ”という部分が最新形でプラスされている。