二輪の場合は特性の違いが重要視される

 多気筒エンジンにおいては、シリンダーの並び方によって「直列」、「V型」、「水平対向」といった種類に区別される。水平対向については乗用車に搭載し続けているのは、世界的に見てもポルシェとスバルだけだが、他メーカーでは世代によって直列を使ったり、V型になったりと変化している。では、直列とV型のエンジンはどのような違いがあるのだろうか。

二輪では4気筒エンジンに直列(並列)とV型の選択肢があり、同一メーカーの同じような排気量のモデルに、それぞれ設定されていることがある。ホンダの大型バイクでいえばVFR800FにはV型4気筒エンジンを搭載しているが、CBR1000シリーズには直列4気筒エンジンを積んでいるといった具合だ。かつてのように同一排気量でV4と直4を選べるほどラインアップが充実しているわけではないが、あえてV型を好むユーザーに応える姿勢が見て取れる。

 もっとも、二輪レースの最高峰MotoGPでもメーカーによってV4と直4エンジンが混在しているので、どちらが圧倒的に優れているというわけではない。しかしながら、一般論としては不等間隔爆発となるV4エンジンのほうが、その特性からトラクション性能に優れるため、V型エンジンを好むユーザーも存在するのは事実だ。

V6は搭載しやすいが回転バランスに優れるのは直6

 一方、四輪ではシリンダーレイアウトによるエンジン特性の違いそのものは、さほど重視されていない。四輪の場合、同じような排気量で直列とV型が存在するのはおもに6気筒となるが、エンジンの素性による特性の違いでは直列6気筒は完全バランスが取れているのでスムースに回るといった特徴がフォーカスされることが多い。しかし、だからといってV型は振動が多くて仕方がないというほどでもない。

 また、最近ではモジュール設計といって、燃焼室形状などシリンダーごとの設計を共通化して気筒数を増やすことで、必要な出力に見合った排気量にするという設計思想が増えている。たとえば気筒容積500ccの設計を基本に、1.5リッター3気筒、2.0リッター4気筒、3.0リッター6気筒といった具合だ。そうなると同じシリンダーを並べていくだけの直列エンジンがモジュール化しやすい。そのため、直列6気筒エンジンが増えつつある。

 このあたり、ダウンサイジングターボのトレンドとリンクしている面もある。過給を前提に考えれば、ほとんどの乗用車(とくにFF)が求める出力やトルクは4気筒までの過給エンジンでカバーできるからだ。NAエンジンが中心だった時代には大パワーを求めると多気筒化が最良の手段で、6気筒エンジンの主流はV型だった。それは直列6気筒では横置きが難しいからだ。

 ボルボが直列6気筒エンジンをフロントに横置きしたFFを出したこともあったが、FFで6気筒だとV型のほうが積みやすい。そして、縦置き(FR)と横置き(FF)で同じエンジンブロックを共用しようと考えると、V型に統一したほうが合理的である。そのため一時は6気筒エンジンといえば、ほとんどがV型だった。たとえばトヨタではクラウンでは縦置き、アルファードでは横置きといった積み方をしているが、いずれも「#GR」系の同じエンジンブロックとなっている。

 また、FRプラットフォームで考えても、直列6気筒エンジンはノーズが長くなってしまう。一方、V6であればフロントミッドシップに搭載することも可能で、パッケージの面で有利だ。つまり、エンジンフィーリングでは直6が有利だが、搭載性からV6が有利というのが基本だ。搭載性に有利であれば、それ専用に作り込んでいけば運動性能でも優位になる。仮に同じ排気量の6気筒エンジンで、最高出力や最大トルクが同一だとすると、スポーツカーのような運動性能を追求するクルマで、プラットフォームから専用設計するのであればV6エンジンのほうが向いているといえる。

 一方で、グランドツーリング性能やノイズや振動の少なさを重視する高級サルーンであれば、振動の少ない直列6気筒が有利と考えるのが定石だ。また、チューニングの可能性を考えていくと、巨大なターボチャージャーを装着するスペースが確保しやすいのは直列6気筒であったりする。

 求める性能や機能、ポテンシャルなどによって直6とV6のどちらが良いのか決めることはできない。だからこそ、メーカーの考え方や時代背景によって、どちらも主役になり得るのだ。