世界各地で中国ブランドのブース出展が積極的になりつつある

 中国政府の要人向け高級リムジンのラインアップで有名なのが、中国第一汽車の紅旗(ホンチ)ブランド。ここのところは“民生版”と呼んでもいい、一般消費者向けのモデルラインアップを強化して、ブランド全体の販売台数増を進めている。その紅旗が今回フランクフルトショー会場にブースを構え、プレスカンファレンスも行った。本国から中国第一汽車集団有限公司の理事長を招きカンファレンスでスピーチを行い、一部に同時通訳機が渡されたようにも見えたが、全面中国語でスピーチを行っていた。

 中国の自動車メーカーが、海外の大きなモーターショーへ出展する理由のひとつが、中国国内へ向けてのアピールがある。“海外でこれだけ活躍しています”や、“フランクフルトショーでプレスカンファレンス実施”などと、中国メディアに取り上げてもらうだけでなく、自社のウェブサイトにも掲載して、中国の消費者へアピールするのである。

 今回の紅旗の出展はまさにこのパターンの強いもののように感じた。事実ブース内にいたカメラマンの多くは東洋系(おそらく中国人)ばかりであった。とはいえ、そんな紅旗も規模は不明だが、中国以外にもアメリカやドイツに研究および開発センターを設けている。

 中国車は、たとえ国内専売車であってもヨーロッパのエンジニアリング会社に開発委託をしていたりもするので、ヨーロッパ域内で耐寒などの公道テストを実施している。日本車の目撃は激減したが、代わりに中国車の目撃は増えている。いまのところは海外進出には慎重は姿勢を見せている中国車ではあるが、ヨーロッパでしっかり公道テストまで行っている様子を見ると、日本車が上から目線で見ていられる時代でもなくなってきているのは確か。その意味では中国メーカーも、海外の大きなショー(とくに先進国開催)へ出展して反応を見たいというのもあるだろう。

 紅旗に限っていえば、元ロールスロイスのチーフデザイナーが活躍している。紅旗に限らずヨーロッパブランドで辣腕をふるったデザイナーなどを、“一本釣り”することは中国メーカーにはよくあること。

 今回のフランクフルトショーでは、紅旗も含め3つの中国完成車ブランドと、複数のサプライヤーが出展していた。従来の出展社の出展取りやめが目立つと、それに代わって中国ブランドが目立つのは世界のオートショーにはよくあること。それでは東京モーターショーもと考えがちだが、日本ではいまだに、当時メディアが大々的に取り上げていたこともあり、中国車に関しては過去のコピー車のころのイメージも強く、日系メディアの報道姿勢も含めて出展メリットが少ないと判断しているようだ。とくに完成車メーカーでは、積極的な出展は考えていないとも聞いている。