新宿高野が販売する「シャインマスカット」(左)、「ルビーロマン」(右)、「ナガノパープル」(上)(東京都新宿区で)

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 ブドウの主産地が、高価格が期待できる品種やブランドの販売を強化している。全国で栽培が広がり市場評価の高い「シャインマスカットに続け」と、大粒、高糖度といった良食味品種を相次ぎ投入する。環太平洋連携協定(TPP)など大型通商協定の発効で、安価な輸入品が市場で攻勢を強める中、国内産地は品質面で競争力を高めようと、高級路線にかじを切っている。(船津優也)

 高級ブドウ市場をけん引するのが「シャインマスカット」だ。農水省の調査では、2016年には42都府県が栽培し、1195ヘクタールと前年(992ヘクタール)より20%増えた。ブドウ全体の栽培面積が減少する中で、「巨峰」「デラウェア」といった既存品種からの転換が進む。

 産地は次の一手に動く。「シャインマスカット」の有力産地、長野県は大粒で黒系の県独自品種「ナガノパープル」を着々と増産。昨年から県外生産も認め、流通量を増やし認知度向上を狙う。22年産からは大粒で赤系の「クイーンルージュ」を売り込み、この3本柱で高価格販売を進める。

 山梨県は「ピオーネ」を種なしにして商品力を高め、首都圏などでの販促に力を入れる。「シャインマスカット」の増産と併せ、黒系の「ブラックキング」を19年産から販売。流通量は少ないが、「黒系シャインとしてブランド力を付けたい」(JA全農やまなし)と意気込む。同県では赤系シャインと位置付けた新品種も開発しており、数年後の販売を計画する。

 岡山県は、大粒で粒ぞろいが良い県独自品種「オーロラブラック」に力を入れる。栽培しやすく、色が入りやすい利点を生産現場にアピールして、増産を目指す。今年から全国に苗木の提供を始めた。白系の「瀬戸ジャイアンツ」なども売り込む。

 石川県は今年、赤系の県独自品種「ルビーロマン」の販促フェアを東京都内で展開した。

 産地が高価格路線に向かう背景には、農家の高齢化などで国内生産量が減少していることがある。高単価販売が期待できる品種を導入し、農家所得を確保したい考えだ。TPP発効などを契機に、オーストラリア産やチリ産など安価な輸入物の出回りがさらに増加している。国産は価格競争では不利なため、食味などの品質面で差別化を図る。

 国産高級ブドウに対する実需者のニーズは強い。果実専門店の新宿高野(東京都新宿区)では、「シャインマスカット」や「ナガノパープル」「オーロラブラック」など大粒で皮ごと食べられる種なし品種を展開する。1房8000〜1万円を中心に扱い、近年、販売量は右肩上がりだ。担当者は「シャインマスカットのヒットを機に国産ブドウの品質面への評価が向上し、需要が高まっている」と指摘する。