10月下旬から国内で販売を開始するマツダの新型「CX-30」(撮影:梅谷秀司)

「CX-5に続いて、ブランドを牽引し、今後のマツダを支えていく極めて重要な商品だ」。マツダの丸本明社長は9月20日に都内で開いた発表会で新世代商品の第2弾となるCX-30への期待を語った。

マツダは新型のコンパクトSUV「CX-30」を同日、日本で初披露し、予約受注を開始した。CX-30は今年3月にジュネーブモーターショーで初公開され、今月から欧州で販売開始。今後、北米や中国など世界の各市場にも投入し、マツダとしては世界販売台数の3割を占める「CX-5」や2割強を占める「MAZDA3」に並ぶ基幹車種に育てる考えだ。


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CX-30のコンセプトは「どこへでも気軽に出かけられるジャストサイズの商品」で、都市部での使いやすさにこだわった。全長は4395mm、全幅は1795mm、全高は1540mmと、日本の立体駐車場に入るサイズだ。グローバル車種でありながらも、日本の道路環境にも適した作りになっている。

パワートレインには2.0リッターのガソリンエンジン、1.8リッターのディーゼルエンジンに加えて、新型の「SKYACTIV-X」の3タイプを用意。ガソリンとディーゼルの各タイプが10月24日、SKYACTIV-Xは2020年1月以降の発売を予定する。

C-HRやヴェゼルに真っ向勝負

開発責任者の佐賀尚人主査はCX-30の役割について、「マツダ車の入口として広く訴求したい」と話す。

マツダは2012年以降、「CX系」と呼ばれるSUVの商品群を拡充させて販売を伸ばしてきた。だが、全長が4200〜4400mm程度とされるBCセグメントでは、小型SUVの需要を十分に取り切れていなかった。CX-3は1人や2人で乗る分にはいいが、家族で乗るには狭いという課題がある。一方、CX-5は全長4545mm、全幅1840mm、全高1690mmというサイズが都市部での利用には大きすぎることから、敬遠するユーザーもいる。


CX-30の後ろ姿(撮影:梅谷秀司)

現状このサイズのSUVでは、トヨタの「C-HR」やホンダの「ヴェゼル」の存在感が大きい。C-HRの販売はここ最近減速しているが、ヴェゼルとともに、今年1〜7月は毎月4000台以上を販売し、SUV全体でもトップクラスの人気を誇ってきた。 

一方のマツダのCX-3は月間販売が1000台程度にとどまる。「世界的に見てもこのクラス(BCセグメント)の需要が一番伸びており、マツダとしても早い時期にラインナップを強化する必要があった」(佐賀主査)。CX-3とCX-5の中間に位置する新型車の投入は“マスト”だったと言える。

CX-30の国内の月間販売目標は2500台。マツダの既存顧客の買い替え、追加購入が4割、新規客の購入が6割と想定する。既存顧客では、より広い空間が欲しいCX-3ユーザー、子どもが巣立ったなどの理由で車のダウンサイズをしたいCX-5ユーザーを主に想定する。

新規顧客のターゲットはC-HRやヴェゼルのユーザー、あるいはこうした車種の購入を検討している人だ。「これまでマツダに振り向いてもらえなかったヤングファミリーに取り回しのよさや使い勝手をアピールしていく」と、マツダ国内営業本部の齊藤圭介主幹は話す。

マツダは夫婦がともに運転することを想定し、運転が苦手な女性でも安心して運転できるように工夫をこらした。着座位置を高めに設定することで視認性を向上し、斜め前方の死角を減らした。車両後部のピラーの形状を工夫することで斜め後方の視界も広く確保している。

さらにラゲッジスペースにもこだわった。ヤングファミリーが乳幼児を連れて旅行や帰省をする時に必要な荷物を搭載できるように、C-HR(318リッター)やヴェゼル(393リッター)を上回る430リッターの大容量を確保。開口幅も1メートル以上と広く取り、ベビーカーやスーツケース、IKEAで買うような組み立て家具を積み込みやすいようにしている。

こうした運転のしやすさや室内空間の広さに加えて、マツダ車の強みの1つである「魂動(こどう)デザイン」にも磨きをかけた。柳澤亮チーフデザイナーは「世界で最も美しいクロスオーバーSUVを目指した」と話す。

アウディのQ2とも競合

CX-30のガソリンタイプは239万2500円(10%税込み)〜、ディーゼルタイプは288万7500円(同)〜で、C-HR(8%税込み229万円〜297万9200円)やヴェゼル(同207万5000円〜292万6000円)と価格的にも競合する。

他方、最新エンジンのSKYACTIV-Xを搭載したタイプは329万4500円〜371万3600円(10%税込み)と輸入車の価格帯と重なる。マツダが特に意識するのはドイツのアウディ「Q2」だ。

Q2は2017年6月に日本で発売。2018年には4767台を販売し、アウディの国内販売の2割弱を占めるまでに成長した。3タイプの展開で、価格は299万円、370万円、411万円(8%税込み)。CX-30のSKYACTIV-Xの価格について、マツダの齊藤主幹は「輸入車ユーザーあるいは輸入車と一緒に検討するような顧客にとっては値ごろ感がある設定とした」と話す。

独自技術でパワーと環境性能を両立

2.0リットルガソリンエンジンのSKYACTIV-Xは「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」というマツダ独自の技術で、ガソリンをディーゼルエンジンのように自己着火させることで、従来よりも少ないガソリン量で同じだけの出力を得られるため、パワーと環境性能の両立が可能になる。


CX-30の新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X 2.0」(写真:マツダ)

量産化に成功したのはマツダだけだ。燃費は現行のガソリンエンジンから最大3割改善。このエンジンに自社開発の24ボルトのマイルドハイブリッド(HV)技術を組み合わせることで、燃費の大幅改善を見込む。

SKYACTIV-XはMAZDA3にも搭載され欧州で販売が始まっているが、国内では12月の発売予定。燃費も国土交通省の認定待ちで、まだ公表されていない。それでも輸入車に乗っているユーザーはMAZDA3のSKYACTIV-Xには高い関心を示していて、すでに契約をしている人もいるという。

マツダとしてはCX-30でもSKYACTIV-Xで輸入車ユーザーを取り込みたい考えだ。CX-30全体に占めるSKYACTIV-Xの販売構成比は25%を想定。これは年間販売で7500台を狙う計算になる。Q2の昨年の年間販売台数を上回り、かなり野心的な目標ともいえる。佐賀主査は「エンジンの静粛性やレスポンスが高く、車により上質さを求める人に訴求していく」とする。

マツダは今年5月に発表した中期経営方針で、収益性向上に向けた施策として、SKYACTIV-Xに代表される上級エンジンモデル投入を掲げた。従来のエントリー価格を維持しつつ、価格帯の拡大を図る方針だ。

CX-30は239万2500円〜371万3600円と、ハイエンドモデルの価格がエントリーモデルの1.5倍を超える。国内では同じ車種でここまで価格の差が開くのは珍しい。丸本社長は「SKYACTIV-Xは導入初期ということもあり、少し高めの価格付けとした。お客さんにどのように評価されるか見てみたい」と自信を示す。

業績回復の起爆剤になるか

マツダは高い動力性能と燃費を両立した革新的なSKYACTIVエンジンや魂動デザインの導入で快進撃を続けてきたが、足元の業績は低迷している。2019年4〜6月期の営業利益は70億円と、前期比79%の減益となった。最大の要因は主力市場の北米が赤字に転落したことだ。

米国では新車市場が頭打ちとなり競争が激化する中、4月に投入したMAZDA3が期待通り売れていない。また、売れ筋のCX-5も競合するトヨタの主力SUV「RAV4」刷新のあおりを受けて販売が低迷。2019年1〜8月のアメリカの販売台数は前年同期比11.5%減の18万9000台と苦戦している。8月に20カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたものの、全体需要が前年同期比0.1%増と弱い中では、厳しい戦いは続く。


マツダの丸本明社長はCX-30について「今後のマツダを支えていく極めて重要な商品だ」と語る(撮影:梅谷秀司)

その点でまったく新しい車種であるCX-30の投入は反攻のチャンスとも言える。「MAZDA3が最初うまく行っていない国をCX-30で補うことができたら」と丸本社長は期待を寄せる。

マツダとしては商品の価値を訴求し、インセンティブ(販売奨励金)を抑制する売り方は今後も貫くつもりだ。その点でどれだけ多くの人にCX-30の価値を伝えることができるか、リアルな接点づくりも大事になる。これまで接点のなかった層に販売店に足を運んでもらえれば、CX-30の購入につながらなくても、CX-3やCX-5、MAZDA3に関心を持ってもらうきっかけにもなる。

マツダの世界シェアは2%。ニッチなメーカーだからこそ、エッジの効いた商品で優良な顧客を囲い込むことが生きる道になるはずだ。将来の基幹車種を目指すCX-30の成否はマツダブランドの方向性をも決める使命を負う。