レアル・マドリードのフベニールC(U-17相当)に所属する中井卓大【写真:Getty Images】

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小3から知る恩師・木場トレーナー語る「ピピ」の成長曲線

 海外サッカーのスペインリーグ1部マジョルカの日本代表MF久保建英は今季、名門レアル・マドリードから期限付き移籍で武者修行中だが、「白い巨人」のトップチームデビューを目指す、もう一人の“メイド・イン・ジャパン”がいる。下部組織のフベニールC(U-17相当)に所属する「ピピ」こと、中井卓大だ。トップチームまであと4カテゴリーと期待を集める15歳の神童は、なぜ順調な進化を続けているのか。小学3年時から指導するプロトレーナー・木場克己氏は成長の裏に隠された中井の「聞く力」について証言している。

「まだ15歳のピピですが、すでに身長180センチを超え、私も抜かれてしまいました。本人が喜んでいる部分は、レアルのチームメートはみんな怪我をしているのに、彼だけ一度も大きな怪我がないところ。体幹・バランスを強化しながらも、成長段階で怪我をしない体作りができている証拠ですね」

 こう語った木場氏は体幹・体軸・バランスを強化する「Koba式体幹・バランストレーニング」の開発者で、競泳のリオデジャネイロ五輪代表・池江璃花子(ルネサンス亀戸)、サッカー日本代表DF長友佑都(ガラタサライ)らトップアスリートを指導。久保やバルセロナBのFW安部裕葵ら日本サッカー界の新鋭が師事する名伯楽だが、中井との付き合いは長い。

「出会いはピピが小学3年生の時です。レアル・マドリードのファンデーションキャンプで初めて出会い、凄まじいドリブル技術ですでに天才少年と呼ばれていましたね。あんなに小さな子供が『体幹トレーニングの木場さんですか?』と声をかけてきたのが印象的でした」

 地元の滋賀県から参加した中井。すでにドリブルなど足元の技術は神童と呼ぶに相応しいレベルだったが、実は木場氏の著書やテキストを読み、地元で自分なりのトレーニングをしていたという。

「このキャンプは小学6年生も参加していましたが、ピピは圧倒的に技術が高かったので、年上の子供たちもみんなピピの後ろについてきた。陽気な関西弁でコミュニケーション能力も高い。夜中に友達も引き連れて『もっと体幹について教えてください』と宿舎の部屋を訪ねてきた時は驚きましたよ。他の4人はすぐに寝てしまいましたが、ピピだけは食い入るようにトレーニングを見ていました。自分の話も熱心に聞いていましたね」

9歳から光っていた聞く力「天才と呼ばれますが、日々努力している」

 長友らのトレーニングを指導する動画を子供たちに見せたという木場氏。物怖じせずに成長の糧を貪欲に吸収しようとする中井少年に刮目したという。

「なぜこのトレーニングが必要なのか、小3なりにピピは質問していました。色々なアスリートを指導していますが、ピピは情報を収集する能力、聞く力が9歳の時から光っていました。天才と呼ばれますが、日々努力を続けているのです」

 それから、6年。マドリードで日々を過ごす中井に直接指導する機会は年3回程度に限られたが、動画の遠隔指導で絆は続いている。そして、中井には毎日のルーティンが存在する。

「今でも毎朝15分間、自分の作ったチューブトレーニングのメニューを必ずやっていると話していました。あんなに真面目な子は見たことがない。取り組む姿勢は変わりません」

 中井の継続性を高く評価した恩師。9歳から日々、積み上げた鍛錬の成果は明確に、フィールド上のパフォーマンスとして表れている。

「彼は小学3年生で、自分の体幹とバランスがどれだけ大事なのか、聞いて理解しています。怪我をしてから自分の指導を受けに来る選手も多いですが、ピピのように、怪我をする前から怪我をしない体作りに取り組んだ場合、スタート地点が全く異なります。育成年代ではとにかく怪我をしないことがその後のキャリアにおいて、大事になります。今週ベトナムでトレーニングイベントを行いますが、そこでも早い段階で体幹とバランスを取り入れる重要性を現地の子供たちにも説明したいと思います」

 21日にベトナム・ホーチミン市内で体幹・バランストレーニング指導のイベントを開催するという木場氏。どんなに素晴らしい指導やトレーニングに巡り会えたとしても、聞く耳を持つのか、そして、理解できるかは本人次第。「聞く力」という隠れた才能に恵まれた中井はこれから、どんな成長曲線を描くのだろうか。(THE ANSWER編集部)