大阪で開催された20か国・地域(G20)首脳会議で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(右)と握手を交わす米国のドナルド・トランプ大統領(2019年6月29日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】14日に起きたサウジアラビアの石油施設攻撃に対する米国の反応に不安が広がっている──。米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領とサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)の「親密な関係」が、激しい議論を巻き起こしているのだ。

 トランプ氏は17日、サルマン皇太子との協議ため、マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官をサウジのジッダ(Jeddah)に派遣した。米当局はこれに先立ち、世界最大の石油施設であるサウジのアブカイク(Abqaiq)油田の石油施設攻撃に関与したとしてイランを非難していた。

 攻撃後にトランプ氏が投稿した最初のツイートには、米国がサウジに従うといった姿勢があからさまにみられた。これには米政府関係者も驚いた。ツイートには、「どうやってことを進めていくかについて」サウジからの意見を待っていると書かれていたのだ。

 2020年米大統領選へ向けた民主党予備選に立候補しているトゥルシ・ガバード(Tulsi Gabbard)下院議員は、トランプ氏の投稿をあざ笑った。同氏は、米国の軍事介入には批判的な考えを持っている。

 ガバード氏はトランプ氏のスローガンである「アメリカ・ファースト(米国第一)」を引き合いに出し、「トランプ氏はご主人サウジの指示待ちだ。わが国がまるでサウジアラビアの手下であるかのように振る舞っており、『アメリカ・ファースト』とは言えない」と揶揄(やゆ)している。

 石油施設への攻撃について、匿名で取材に応じたある米当局者は、サウジ主導の連合軍から攻撃を受けているイエメンの反政府組織フーシ派(Huthi)に責任があるとしながらも、攻撃はイランから実施されたと述べた。

 共和党は攻撃の背景にイランがいることに賛同したが、民主党はイラク戦争(Iraq War)の教訓から慎重な態度を崩しておらず、米国はサウジとイランの緊張を和らげるべきだと主張している。

■責任回避と強い大統領に見せるため?

 トランプ氏は最初のツイート後、サウジとはいかなる約束も交わしておらず、何らかの行動を起こした場合はサウジから財政面での支援を得られると主張した。米国は自分の意思で判断すると強調したのだ。

 昨年、トルコ、イスタンブールのサウジアラビア総領事館内でサウジ人ジャーナリストのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏が殺害された事件以降、共和党からもサルマン皇太子を非難する声は上がっている。

 だが、トランプ氏はイエメン内戦に介入するサウジ主導の連合軍への支援を停止する米議会の決議に拒否権を重ねて発動するなど、同国に関する問題をめぐっては議会に反対する姿勢をみせている。イエメン内戦について国連(UN)は、世界最悪の人道危機だと表現している。

 トランプ氏は石油施設攻撃に対する反応の責任が自分一人に降りかかるのを避けるため、サウジに従うふりをしている可能性もあると指摘するのは、米シンクタンク「カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)の中東専門家ヤスミン・ファルーク(Yasmine Farouk)氏だ。

「これは、戦争を望まないサウジへの助けとなる」とファルーク氏は言う。だが、トランプ氏は「最終的に軍事行動に至らなかったとしても、自分が弱い大統領に見えないよう見せかけること」にも成功していると指摘した。

 サウジの石油施設攻撃は、トランプ氏が米ニューヨークで開催の国連総会(UN General Assembly)に合わせ、イランのハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領との会談を検討している最中に起きた。トランプ氏は昨年、イランとの核合意を破棄しているが、それからはイランにおける緊張緩和においてフランスが主要な役割を果たしており、両者の会談についても実現に向けて動いている。

■すべては金のため

 ただ、先週末の石油施設攻撃をめぐっては、同盟国であるサウジに対する攻撃であると同時に、米国の信頼性を傷つけるものにもなったとして、米政府は特に怒りをあらわにしている。

 サウジは数十年間にわたり米国と良好な関係を築いてきた。そして、イスラム教シーア派(Shiite)の影響力を抑えたいトランプ氏も、サウジとイスラエルを政権の中東政策の柱に掲げている。

 トランプ氏は武器販売など財政面からサウジとの同盟を正当化している。最近では、サウジの対米投資が4000億ドル(約43兆3000億円)となったと触れ回っていた。

「サウジアラビアがお金を出し続ける限り、トランプ氏は何があってもサルマン皇太子を支持する」とファルーク氏は指摘する。「すべてが金だ。トランプ氏はそれを隠してもいない」

【翻訳編集】AFPBB News