京畿道の烏山(オサン)のサービスエリア(筆者撮影)

この夏、戦後最悪とも言われる日韓関係で揺れる中、世界遺産の調査のため韓国を訪れた。目的地が中部の地方都市や山間部だったため、ソウルでレンタカーを借りていくつもの高速道路を自分で運転する機会を得た。短い時間ではあったが、韓国の高速道路を実際に走った体験をお伝えしたい。

2020年までに6000kmの道路網構築を計画

韓国の面積は北海道より少し広い程度だが、現在国土の高速道路の総延長は4000kmを超えており、図でもわかるとおり国土の隅々までくまなく張り巡らされている。

韓国道路公社のホームページを見ると、2020年までに6000kmの道路網の構築を計画していること、それは国土のどこからでも30分以内に高速道路にアクセスできることを目指しているためだということが明記されている。


韓国の高速道路網(画像:韓国道路公社のホームページより引用)

今回の調査では、ソウル・金浦空港から水原、天安を経て中部の古都、忠清南道の扶余まで、また帰路は大田広域市からソウルまでを別のルートで戻った。その際に利用した道路の1つが、韓国の高速道路の象徴で、ソウルと第2の都市釜山を結ぶ京釜(キョンプ)高速道路である。日本でいえば東名・名神高速道路にあたる。

全長およそ420km、清州、大田、大邱、慶州など主要都市を通り半島の背骨を結ぶ道路で、1970年に全通しており間もなく50周年を迎える。東名高速道路の全通が1969年であることを考えると、ほぼ同じ時期に完成しており、韓国の経済発展を表す「漢江の奇跡」の象徴となる開通であった。


アジアハイウェイ1号線を表す標識(筆者撮影)

京釜高速は一部を除くほとんどの区間が片側4車線で、ソウル近郊では上下10車線の堂々たる設備を誇っている。道路上の表示では高速道路名ではなく、それぞれの道路に振られた番号が表示されており、京釜高速には1号線を表す「1番」が与えられている。

なお、この高速道路1号線は、日本橋を起点に東名、名神、中国、九州道などを経由して、博多港からは海路釜山に上陸し板門店から先は北朝鮮につながる「アジアハイウェイ1号線」にもなっていて、その表示も高速道路上で見ることができる。

韓国の高速道路の制限速度は、普通車で時速110kmと100kmの箇所が混在しているが、今回走った区間はほぼ110kmで走ることができた。


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韓国人の運転は荒い、ソウル市内では運転しないほうがいいとはよく言われることであるが、今回の体験の中では、高速道路ではおおむね制限速度内で走行している車がほとんどで、突然割り込まれたり、脇を猛スピードで追い抜かれるというようなことはまったくなかった。

ちなみに通行料は日本と比べるとかなり安く、ソウルから扶余まで160kmあまりでおよそ1200円、ほぼ同じ距離にあたる東京―静岡間がETC利用でも3220円(10月の消費税増税前の料金)なので、半分以下ということになる。

SAでは日用品を売る店が目につく

韓国の高速道路にも、日本と同様に20〜30分の走行ごとにサービスエリアが設置されている。韓国は高速道路の発達に合わせて高速バス網も四通八達しており、自分で運転しなくても、中長距離の高速バスに乗ってサービスエリアでのトイレ休憩を経験した方も少なくないであろう。

トイレ、売店、フードコートなど基本的な施設は日本と大差ない。今回、昼食を摂った京畿道の烏山(オサン)サービスエリアには、セブン-イレブンとロッテグループ傘下のチェーン店「エンジェル・イン・アス・コーヒー」が入居していたのも、コンビニやコーヒーチェーンが目立つようになった最近の日本のサービスエリアとの共通点である。


サービスエリアに入る靴店と洋服店(筆者撮影)

その一方で、ご当地のお土産が所狭しと並ぶショッピングコーナーは、かなり様相が異なっており、靴や洋服を売る店が入っているなど、お土産というよりは日用品を売る店が目につくのが日本との違いの1つであった。

食事は、ビビンバや冷麺などの韓国料理、トンカツなどの和食(韓国では「日式」と表示されている)、ラーメンなど、提供するメニューによって分かれるフードコートだけがあるサービスエリアと、独立した店舗の形式となっているレストランがあるところがある。今回は韓国式ラーメンと海苔巻き(キムパ)のセットメニューを頼んだが、500円もしないにもかかわらず、味、ボリュームとも十分満足できた。

また、大抵スナックコーナーもあり、ホットドックにくるみ饅頭、トッポギにおでん、たこ焼きなど、バラエティーも豊かで、目移りしてしまいそうなラインナップであった。

日本と同様に国産車の普及率が高い

韓国は、日本と同様に国産車の普及率が高く、登録台数のうち9割強を現代、起亜、ルノーサムスン、韓国GMなどの韓国メーカーの車が占めている。日本ではあまりお目にかからない車が次々と高速道路を走る姿を見ながらドライブできるのも、車好きには至福の時間かもしれない。

ちなみに今回借りたレンタカーは、現代自動車のアバンテ(4ドアセダン)だ。カーナビが標準装備されており、英語にも対応しているため、例えば金浦空港に行くには目的地を「GIMPO AIRPORT」とハングル読みのアルファベットで入力すれば、きっちり案内してくれる。道路標識のハングルとその読みのアルファベット表記がわかれば(例えば、「扶余」は、「부여 Buyeo」と表記)、運転もそれほど難しくない。


ソウルと釜山を結ぶ高速道路1号線は片側5車線(筆者撮影)

また、下関と釜山を結ぶ関釜フェリーを利用すれば、多少特別な手続きは必要ではあるが、自分の愛車で韓国をドライブすることもできる。日韓関係が冷え込む今の時期はためらわれるかもしれないが、片側5車線の高速道路を走る感触を確かめる旅も悪くないように思う。

今回の調査は私にとっては10回目の訪韓であったが、いつもどおり出会った人の親切に助けられた旅で、こういう時期だからこそ訪れる人をもてなそうとする人々の笑顔が心に残る調査でもあった。