猫にはずっと元気でいてほしい……。飼い主さんの願いとは裏腹に人間同様、猫も病気にかかります。毎日のスキンシップを大切にして、いち早く猫の異変に気づいてあげることが大切です。野矢雅彦先生が猫の病気について詳しく教えてくださいました。

教えてくれたのはこの方

野矢雅彦(のや まさひこ)

ノヤ動物病院院長。日本獣医畜産大学獣医学科卒業。1983年にノヤ動物病院を開院。ペットの診察・治療はもちろん、動物と人とのよりよい関係を作るために幅広く活動中。ペット関連書籍の執筆・監修も多く手がけています。病院ではパピークラス、しつけ相談開催の他、ペットの預かりにも対応しています。

ノヤ動物病院
埼玉県日高市上鹿山143-19 TEL:042-985-4328

人間と同じで猫も病気にかかる

人間でも年齢を重ねるにつれ、体のさまざまな機能が低下していきます。そのため、若い頃に比べると病気にかかりやすくなるものです。それは猫も同じです。

猫の病気は、早めに治療をすれば完治が可能なもの、完治は難しく病気と一生つき合っていかなければならないもの、そのままにしておくと命に関わるもの、と病気によってさまざまです。

愛猫を病気から守るためには、どんな病気があるのかを、あらかじめ知っておくことが大切です。そうすることで病気の早期発見・早期治療につながります。ここでは猫に多いとされる病気をご紹介します。

少しでもおかしいなと思ったら、早めに動物病院で診てもらいましょう。

猫の病気の種類

出典: FASHION BOX

1:猫風邪

猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症、猫クラミジア感染症などが、猫風邪といわれる感染症です。猫同士の接触やくしゃみなどで感染し、ウイルスの場合、一度感染すると消失することはなく、ストレスがかかるたびに風邪症状が出ます。猫風邪は混合ワクチン接種で予防可能な病気です。

症状
●鼻水
●くしゃみや咳が出る
●発熱
●食欲低下が見られる
●よだれが多くなる
●口臭が強くなる
●目ヤニが出る
など

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2:尿路結石症

食事内容や飲水量の不足、遺伝的なものなどが原因となり、膀胱や尿道に結石ができることで排尿障害を起こす病気です。結石が大きくなると、尿道に詰まってオシッコを出せなくなるなど命にも関わります。治療は、大きな結石は手術で取り除き、小さなものであれば食事療法を行っていきます。

症状
●トイレにいる時間が長い
●嘔吐
●頻繁にトイレに行く
●食欲が落ちた
●尿が濁っている
●血尿
など

3:肝障害

肝臓は「沈黙の臓器」といわれる場所だけに、状態がかなり悪くなるまでほとんど症状を示しません。肝機能低下を引き起こす原因もさまざまです。他の病気と症状も似ているため、血液検査、超音波検査、肝臓生検などの検査で区別し診断していきます。治療もそれぞれの原因に合わせて行っていきます。

症状
●元気がない
●食欲低下が見られる
●体重が減る
●嘔吐
●下痢
●発熱
●皮膚が黄色い
など

4:腎障害

加齢や、他の病気が影響して腎臓の機能が低下する病気です。急性と慢性がありますが、高齢の猫に多いのは慢性腎不全です。慢性腎不全は一度発症すると治らない病気です。治療としては、病気の進行をできるだけ抑えながら、症状を緩和するための食事療法や点滴、投薬などを行っていきます。

症状
●水をたくさん飲み、オシッコの量が増えた
●よく吐く
●食欲低下が見られる
●貧血
●体重が減る
●下痢、あるいは便秘
など

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5:甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、さまざまな弊害を引き起こす内分泌系の病気です。甲状腺の腫瘍や過形成などが主な原因ですが、10歳以降のシニア猫によく見られます。一見すると健康だと勘違いされやすいため、発見が遅れがちです。治療には、抗甲状腺薬の投与、食事療法の他、手術を行う場合も。

症状
●食欲は増したのに体重が減った
●大きな声で盛んに鳴く
●目がギラギラしている
●最近動きが活発になった、攻撃的になった
など

6:糖尿病

膵臓から分泌されるインスリンの分泌異常が起こり、血糖値が高くなってしまう病気です。原因は遺伝的なものや、他の病気の影響、肥満などです。そのままにしておくと合併症などを引き起こし、命にも関わります。完治することもありますが、多くは食事療法とインスリン投与を一生続けていきます。

症状
●水をたくさん飲む
●オシッコの量が増えた
●肥満だったが急にやせてきた
●嘔吐
●下痢
●歩き方がおかしい
●ボーッとしている
●目が白い
など

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出典: FASHION BOX

7:心筋症

遺伝、栄養、ストレスなどが関連して発症する心臓病です。年齢に関係なく発症し、不妊手術時の検査で診断されることもあります。確定診断は心エコー検査で行います。早期発見・早期治療が大事な病気ですので、発症しやすい猫種では定期レントゲン検査をするのがオススメです。

症状
●急に後ろ脚が動かなくなった
●呼吸が速い
●動きがにぶくなった
●ジャンプをしなくなった
●口を開けてハアハアしている
など

8:リンパ腫

血液中の白血球の一種であり、免疫を担っているリンパ球が腫瘍化してしまう病気です。猫のがんの中で最も多いといわれています。猫白血病ウイルスの感染もリンパ腫を引き起こす原因のひとつです。病気の進行状況により、抗がん剤を用いた化学療法や対症療法を行っていきます。

症状
●体重が減った
●食欲低下がみられる
●元気がない
●嘔吐
●下痢
●貧血
●息があらい
●けいれんを起こす
など

9:猫白血病/猫エイズ

咬傷や食器の共有など、唾液を介してウイルスが感染する病気です。どちらも免疫力を低下させるので、よく体調を崩す傾向にあります。発症すると、有効な治療法はありませんので、多頭飼育する場合は必ず検査を受けてから同居させます。人間にうつることはありません。ウイルス性白血病はワクチン接種で予防できます。

症状
●食欲低下が見られる
●体重が減った
●発熱
●リンパ節が腫れている
●貧血
●よく体調を崩す
など

10:歯周病/口内炎

口角口内炎は猫エイズ、カリシウイルスその他が原因で起こります。さらに、獲物を引きちぎって食べることのなくなった家猫は歯石がつくようになり、歯周病へと移行していき口内炎をさらに悪化させます。歯周病による歯痛や口内炎による痛みは猫には耐えがたい痛みで、食事を全く食べなくなります。

症状
●食欲が落ちた
●口が臭い
●よだれが出る
●体重が減った
●口をクチャクチャする
●悲鳴を上げる
など

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猫の病気のサイン

出典: FASHION BOX

□寝ていることが多い、やせてきた
□目の色や輝き、毛づやがおかしい
□歩き方がおかしい、ジャンプをしなくなった
□食欲が落ちた、あるいは増えた
□オシッコやウンチの回数、量、色、においが違う
□水を飲む量が急激に増えた
□高齢なのに妙に元気
□耳や口などがにおうようになった

日頃から愛猫の様子をよく見ておき、いつもと比べて「なんとなくおかしい」と思ったら、早めに動物病院へ。また、7歳を過ぎたら、定期的に健康診断を行うことも心がけておきましょう。

(抜粋)

出典: FASHION BOX

TJ MOOK『幸せ猫の長生きBOOK』
https://tkj.jp/book/?cd=TD295538
監修:野矢雅彦

編集/コサエルワーク
編集協力/高橋ヒカル、コダマユミコ
協力/森 瑞(4TuneBox)
執筆/市川知世子、小嶋ひろみ、東 志津
撮影/奧村くみ子
写真協力/PIXTA編集/FASHION BOX
TJ MOOK『幸せ猫の長生きBOOK』)※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください