秋田新幹線「開業」にあわせてデビューしたE3系は、400系に続いて開発されたミニ新幹線の車両です。車体の大きさなどは400系とほぼ同じですが、モーターやシステムは大きく変化。いまは活躍の場が秋田から山形新幹線に移りました。

車体の大きさは400系、性能はE2系

 E3系電車は、東北新幹線から秋田新幹線に直通する列車「こまち」用として開発された車両です。いまは山形新幹線に直通する東京〜新庄間の「つばさ」で使用。一部の車両は観光列車用に改造され、山形新幹線と上越新幹線を走っています。


秋田新幹線を走っていたころのE3系「こまち」(2011年12月、恵 知仁撮影)。

 1997(平成9)年に「開業」した秋田新幹線は、先に整備された山形新幹線と同じ「ミニ新幹線」。盛岡〜秋田間の在来線(田沢湖線と奥羽本線)を改造し、2本のレール幅(軌間)を新幹線と同じにして、東北新幹線からの直通運転を可能にしました。

 山形新幹線と同様、車両の走行スペースは新幹線より狭い規格のままだったため、直通運転を行うためには車体の大きさを在来線に合わせた小型車両が必要です。そこで山形新幹線用に開発された400系電車に続き、1995(平成7)年に秋田新幹線用のE3系が開発されたのです。

 400系と同じミニ新幹線向けの車両ですから、車体の大きさは400系とほぼ同じ。東北新幹線の東京〜盛岡間では、200系電車やE2系電車などほかの車両と連結して走るため、東京寄り先頭車に併結装置を搭載しています。これも400系と同じです。

 しかし、シルバー塗装の車体が斬新だった400系に対し、E3系の車体は白とグレーの2色をベースにピンクの帯を巻いた塗装を採用。柔らかな印象を受けます。ブラインドの柄は走行路線にちなみ、秋田の祭「竿灯」をイメージしたデザインでまとめられました。

 また、車体の素材はアルミ合金を使用して軽量化。モーターの出力もアップし、最高速度は設計上が315km/h、営業運転での最高速度は400系より35km/h速い275km/hになりました。実はこれ、同じ時期に開発されたE2系と同じ。モーターを制御する装置などもE2系と共通です。400系の後継車両というより、E2系をミニ新幹線向けにアレンジした車両といえます。

観光車両に改造された車両も

 このほか、当初のE3系にはゴミを圧縮する機能が付いたゴミ箱というユニークな設備がありました。これは東京〜秋田間の所要時間が4時間程度と長く、客が出すゴミの量も多いと考えられたためです。


山形新幹線のE3系。いまは塗装が変わっている(2011年11月、恵 知仁撮影)。

 秋田新幹線のE3系は5両編成でしたが、のちに1両増えて6両編成に増強。400系のグリーン車は3列でしたが、E3系は1列増えて4列になりました。普通車は400系と同じ4列。指定席(12〜14号車)の座席間隔を自由席より広くしているのも同じです。

 1999(平成11)年には、山形新幹線の山形〜新庄間が延伸開業し、山形新幹線用のE3系もデビュー。コンセントや防犯カメラの設置、普通車の自由席と指定席の座席間隔統一などの改良や変更を加えながら追加製造され、400系を置き換えました。

 車体の塗装は秋田新幹線用E3系とは異なり、当初は400系のイメージを踏襲したシルバーとグレーの2色に緑の帯。のちに山形県知事の要望を受け、山形をイメージしたという白と紫の2色に黄から赤へのグラデーションを加えた塗装に変わりました。

 E3系は2010(平成22)年までに261両が製造されましたが、秋田新幹線「こまち」が2014(平成26)年までに新型のE6系電車に置き換わったため、2019年4月1日時点の車両数は半分以下の129両になりました。いまは山形新幹線「つばさ」のほか、東北新幹線「やまびこ」「なすの」の増結用としても使われています。

「こまち」からの引退で余った車両の一部は、観光車両として改造されました。まず2014(平成26)年、山形新幹線の観光列車「とれいゆ」用の改造車がデビュー。車内に足湯を設けているのが大きな特徴です。2016年には、車体の内外を現代美術のアートで装飾した観光車両「現美新幹線 GENBI SHINKANSEN」がデビューし、上越新幹線で運転されています。