お酒をよりおいしく飲むための「おいしい順序」をご存じですか?(写真:ぱぱ〜ん/PIXTA)

EPA(経済連携協定)が日本・欧州間で発効された影響で、2月からワインの関税が撤廃され、一昔前では考えられないくらい、おいしいワインがお手頃価格で手に入るようになりました。

ワインに限らず、今、日本の酒市場は劇的に変化しています。こだわりの酒屋に行けば、“個性派”の地酒がずらりと並び、街に繰り出せば気軽な1杯を楽しめるお店から、最高の1本が体験できる本格派のお店までがより取り見取り。技術の向上や若い人の活躍で新しい味が生まれたり…。

ここにきて“酒飲み環境”がぐっと活性化しているのです。長年、酒の仕事に携わってきたプロの目から見ても、これほど「楽しい」時代はいまだかつてありません。

もちろん酒飲みの先人たちから受け継がれてきた“伝統”と“常識”も大切です。理にかなったもの、正しい知識が数多くあります。ただ一方で、もっとおいしく飲む方法があるのに、常識に縛られていてもったいない、と思うことがたくさんあるのも事実です。

そこで今回の記事では、よりおいしく飲むための、ちょっとしたコツについてご紹介します。

「飲む順序」でここまで変わる

普段、みなさんはどんな飲み方をしていますか? 残暑の今だと、いつもの冷え冷えワインや焼酎割、発泡缶ビールで、“マンネリ飲酒”になっている方もいるでしょう。慣れた飲み方もいいですが、もっと楽しい飲み方はないか、と思うときもあるのではないでしょうか。

そんな人に伝えたい、ちょっとしたコツがあります。ぜひ押さえていただきたいのは、「飲む順序」です。

実は、1回の食事の中でお酒をよりおいしく飲むための「おいしい順序」というものが存在します。それは、

「アルコール度数の低いものから高いものへ」
「味の軽いものから重いものへ」
「酸味のあるものから甘いものへ」

という順序、です。

どんなお酒でも、まずは喉の渇きを潤すような、爽やかでみずみずしいタイプのお酒から始めます。そして、少しずつ重く濃いタイプ、個性の強いタイプのお酒へと進めていく。コース料理の順番もそうなっているように、お酒もよりおいしく感じるため「飲む順序」が必要なのです。

【ワインの場合】

例えば、今日はワイン!という場合。最初は、爽やかなスパークリングや、甘酸っぱくジューシーな白ワインで喉の渇きを潤しましょう。そして、次に食事に合わせてドライな白ワインへ。

その後、ほどよく軽く飲みやすい赤ワインに進み、最後は濃厚で重い赤ワインを楽しむ。余裕があれば、最後に甘口のワインや蒸留酒で締める。こんな順序で進んでいくと、さまざまなタイプのワインやお酒をいっそうおいしく楽しく味わえるはずです。

【日本酒の場合】

日本酒の場合はどうでしょう。例えば、最初は、最近人気のスパークリング清酒や、吟醸、大吟醸などフルーティーなタイプの冷酒から始めましょう。そして次に、純米系の落ち着いた味わいを常温で味わいます。そして生酛(きもと)や山廃など、飲み応えのあるタイプのぬる燗(かん)へ。最後は個性派の熟成酒をオンザロック……。

【焼酎の場合】

焼酎派の人であれば、こんなパターンはどうでしょう。まず、フルーティーなタイプをソーダ割りにしてハイボールでスタート。そして、次は軽快なタイプの焼酎をオンザロックで。コクのあるタイプはお湯割りか前割りのお燗で。最後はまるでウイスキーのようなキャラクターのはっきりした樽熟タイプをストレートで。

このように、軽快なものからだんだんと濃厚タイプに移行したり、飲み方を変えたりしてみるのもいいのではないでしょうか。

もちろん、これらはあくまでも提案の1例にすぎません。

ワインを飲むなら必ずスパークリングから始めて濃厚な赤か甘口ワインで締めろ、焼酎の最後は樽熟でなくてはならない、と言っているわけではありません。前述のお勧め順序のルールを踏まえつつ、あとは自分の好みに合った銘柄やお酒の種類を自由にアレンジしてみるとよいのではないでしょうか。

「自分好みの味」は必ず見つかる

もちろん、アルコールが体質に合わない人も多いですし、味覚面でどうしてもなじめない、という人もいるはずです。これがセオリーと、無理をして飲む必要はありません。何度も試してみて、それでもどうしてもなじめないのなら、そのお酒には見切りをつけましょう。

ただし、私が声を大にして言いたいのは、1種類のお酒を飲んで味が合わなかったからといって、そのお酒すべてを「嫌い」と断定するのはもったいないということ。

“銘酒”と名高い日本酒を口にしたが、どうにもなじめない。それで「日本酒はどうも受けつけない」と、すべての日本酒にNGをつきつけてしまう。これは、とても残念なことです。

「何度かレッスンを重ねないと、その真価に気づくことができない」というのは私の持論ですが、そうでなくても、そもそも一口に“ワイン”“日本酒”“焼酎”といっても、実は味のバリエーションは大きく分かれるのです。

渋く重い口当たりのワインもあれば、軽やかでフルーティーなワインもあります。甘く濃厚な日本酒もあれば、すっきりみずみずしい日本酒もある。癖のない芋焼酎もあれば、ぐっとぐっと骨太の米焼酎もあるのです。

どんなお酒も、それぞれの銘柄によって味わいは大きく異なります。結論を出すのは、それぞれのタイプをひと通り味わってからでも遅くはありません。「これなら好きになれる」という銘柄はきっと見つかるはずですから。