■濡れたおしぼりを枕元に置くといい

フライト中、CAの睡眠はよくて1時間半。機内に寝台列車みたいなスペースがあり、布団を敷いて眠ります。起き上がったら頭を打つような狭さですね(笑)。着替える時間はないので、ジャケットだけ脱いで、制服のまま。それでも1時間半、爆睡です。目覚ましは、お客様に聞こえないようバイブレーションのものを胸ポケットに入れておきます。

CA流美容コンサルタント 清水裕美子氏

爆睡のコツは大きく2つあります。1つは「眠りやすい環境を整える」こと。例えば乾燥した機内でも喉を痛めないよう、濡れたおしぼりを枕元に置いたり、マスクの中に濡れたガーゼを仕込んだり。これだけでも寝苦しさを抑えられます。お客様からのコールボタンが聞こえて起きてしまうことがあるので、耳栓をするかイヤホンで音楽を聞きます。「パティ・パディーズ」は粘土のような素材をちぎって耳に詰める耳栓。自分の耳の形にピッタリと合わせられるので、すっごく遮音性が高いんですよ。音楽を聞くときはヒーリング音楽をかけています。おすすめは「究極の眠れるCD」。お客様のご迷惑にならない範囲でちょっとだけアロマを嗅ぐことも。眠るときはラベンダーの香りが王道です。アイマスクも使います。私は、機内で用意されているペタンコのアイマスクとは違う立体的なアイマスクを持ち歩いていました。これならまつげが潰れず目元のお化粧も崩れにくいですし、目鼻への圧迫感もありません。「ホテルの枕が合わなくて眠れない」という悩みもよく聞きますが、私はそんなときにはバスタオルを折りたたんで枕代わりにします。

爆睡のコツのもう1つは、自律神経を「交感神経から副交感神経に切り替える」こと。自律神経には交感神経と副交感神経の2つのモードがあり、交感神経は日中の活動中に、副交感神経は休息時に優位になると言われています。CAの場合、眠る直前まで交感神経マックス(笑)。頭もフル回転している状態なので、「今から寝てください」と言われても無理なんです。だから1度、思い切ってリラックスして、副交感神経に切り替えることが重要なんです。

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それにはストレッチとマッサージ。フライトの後は一刻も早く眠りたい、なのに疲れすぎてホテルでもなかなか寝付けないことがあります。でも10分でもストレッチをするとすぐ寝付けるし眠りは深いし、翌朝の体の回復具合が全然違います。マッサージには「中山式快癒器」がおすすめです。1947年からあるアイテムですが、最近また美容雑誌で取り上げられています。2つのボールがついていて、指圧みたいに肩や腰をゴリゴリするだけ。「中山式快癒器」の上で寝転がっているうちに眠くなってきます。そのくらい気持ちよくて。プライベートの旅行にも持っていきます。1泊の旅行だからいいやと持っていかないと、ほんとうに後悔します(笑)。

あとは睡眠前のお風呂ですね。お風呂に浸かると体の内部の温度、深部体温が上がります。すると、体は手や足から放熱して深部体温を下げようとする。そのタイミングでストンと眠りにつくそうです。お湯が熱いとかえって交感神経が優位になるので、40度ぐらいのお湯がベスト。お風呂、ストレッチ、中山式快癒器の3つは、私にとっては眠りの儀式。これで爆睡です。

■食事をキャンセルして時差ボケ防止

CAという職業柄、時差ボケ対策も工夫していました。ポイントは「逆算」。自分が「フルに活動したいとき」から逆算してスケジュールを組むことが大事。お客様の場合は、例えば現地に夕方着いてあとは寝るだけなら、機内では起きていたほうがいい。逆に朝到着してそのまま活動するスケジュールなら、機内では寝ていたほうがいい。機内で寝られない方も多いかと思いますが、工夫次第で快眠は可能です。私が海外旅行に行く際は、朝イチでスポーツクラブに行くなど疲れる予定を入れ、機内で眠るようにしています。

■アルコールは利尿作用があるので睡眠の邪魔

機内では受動的に過ごさないことも重要です。機内での食事時間や消灯時間は全部、サービスをする側の都合。いちいち合わせていたら熟睡できません。食後すぐは消化にエネルギーが使われ、眠りの質が落ちがちなので、食事をキャンセルするのもコツです。到着後に夕食が食べられないなら、機内で熟睡した後、到着する1〜2時間前に起きて食べればいいんです。飲み物も自分のタイミングで飲めるよう、搭乗前に水のペットボトルを買っておく。コーヒーや紅茶、アルコールは利尿作用があるので睡眠の邪魔をします。飲むなら水がいいでしょう。

朝の太陽を体内時計のリセットに使う手もあります。例えば、時差ボケで昼間寝ていたい気分でも、太陽の光を浴びると眠気が覚めます。逆にこれから眠りたいときは、サングラスをかけて空港に向かうなど、光をシャットアウトしてください。ほんの少しの工夫で、機内で寝られるようになりますよ。

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清水 裕美子CA流美容コンサルタント
CAが発信する日本初の総合情報サイト「CAメディア」運営。日本航空・国際線ビジネスクラス・ファーストクラス等を担当。著書に『キャビンアテンダント5000人の24時間美しさが続くきれいの手抜き』(青春出版社)。
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(CA流美容コンサルタント 清水 裕美子 構成=東 雄介 撮影=平山 諭、和田佳久)