声優・歌手の東山奈央が9月8日に神奈川・パシフィコ横浜で初のツアー『東山奈央 1st TOUR “LIVE Infinity”』を国内ファイナル公演を開催。2ndアルバム『群青インフィニティ』の収録曲を中心に全21曲を披露。当日は台風上陸というあいにくの天気となったものの、「この会場の中だけは晴天にしましょう!」と語りかけ、クオリティの高いパフォーマンスで会場に足を運んでくれた観客をもてなした。

LEDの映像とシンクロしたダンスで魅了

東山奈央

 東山が登場し<やっと出会えた 今日の空>…この日を待ちわびていたファンと東山の気持ちを乗せた「群青インフィニティ」のワンフレーズを歌うと、会場にはファンの大歓声が爆発するように響いた。爽やかなサウンドと、<何度も何度も何度も何度も何度も何度でも>と言葉を繰り返すフレーズが、実にエモーショナルで胸を掴む。「みんなの声を届けて」という言葉にかけ声が飛び、「飛ぶよ」という合図で、集まった観客が一斉にジャンプした。続けてアッパーのロックチューン「True Destiny」では、ステージを駆け回りながら歌う。東山奈央の1stツアー国内最終日は、序盤から爽快かつ快調に走り出した。

 最初のMCでは「どれ1つとして同じ公演はなかった。これがツアーかと実感しました」と、ツアーを振り返った東山。さらにここパシフィコ横浜は、高校生時代に憧れの声優/アーティストの堀江由衣が所属していたユニット“Aice5”の公演を観にきた場所であることを明かし、「かつて自分が感じたものを、今日は自分がみんなに届けたい」と意気込みを語った。

 序盤の見せ場となったのは、東山曰く「あの問題児の楽曲」と評する「さよならモラトリアム」。歌詞は、女神から課せられた“大人になるとはどういうことか?”という難題に頭を悩ます子どもが主人公で、子どもから大人のお姉さんまで多彩な声色で、演じ分けて歌うのも聴きどころ。ツアーでは“大人になるための20秒チャレンジ”と題し、曲中で様々なことにチャレンジしてきた。この日はギターソロという最難関で、膝をついて必死にギターを弾く様子に観客の大声援が背中を押す。アッパーでハイテンションのサウンドに乗せて、合いの手やかけ声、さらに隣の人と肩を組んで<ナーナナナーナナー>と一緒に歌って、会場が一体となって盛り上がった。

 中盤は、ダンサーと共に歌とダンスでたっぷり魅せて聴かせてくれた。ステージ上に設置された8枚のLEDパネルを駆使した演出は、東山自身の要望で企画がスタートしたとのこと。ラップ調の早口ボーカルも聴きどころのエレクトリックナンバー「Mode Style」は、まるで着せ替えを楽しむような演出。可愛らしいペンギンの姿になるなど、LEDの映像と見事にシンクロしたパフォーマンスで、観る者をあっと驚かせた。TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDが提供した「Living Dying Kissin'」でも、LEDを巧みに使った演出と共にダンスを繰り広げ、実にマジカルなパフォーマンスで魅了した。

 そもそも彼女はダンス経験者で、ダンスが大好き。このツアーに際して、「みんなの応援が、私の力になっていることを形にしたかった」と、ダンスシューズをオフィシャルクラブ『虹のわっか』の会員費をもとに作ったことも話した。「このダンスシューズをお守りにして頑張ってパフォーマンスすることで、またみんなに喜んでもらえたら」と、東山。観客のことを第一に考え、常に何かお返しをしたいと考えている彼女らしい感謝の表し方だ。

さらに固く結ばれた観客との絆

ライブの模様

 そんな彼女の気持ちが込められていたのが、彼女が初めて作詞作曲を手がけた「Rainbow」という曲。ライブ終盤に同曲を歌った際には、当時悩みながら作ったことや、同曲が今の自分にとって大切なものになっていることなどを話し、「自分の財産として、生きた証を残していきたい」と、これからも作詞作曲を続けていくことを約束した。

 本編の最後には、特別にもう1曲と、その「Rainbow」のアンサーソングとして作詞作曲した「はじまりの空」を、「親愛なるみなさんと一緒に歌いたい」という呼びかけと共に観客にプレゼントした。

 包み込むような温かさと、微笑みかけるような優しさを持ったこの曲。東山の透明感のある歌声が響くと、会場には白いペンライトの光が広がる。会場を嬉しそうに見渡しながら「いつでも思い出してください。私もみなさんの微笑みを胸に抱いて生きていきます」と東山。最後は全員で<ラララ〜>と歌い、心地よい感動がパシフィコ横浜に広がった。

 アンコールでは、冒頭で触れたAice5の「Love Power」をカバーした他、「君の笑顔に恋してる」では振り付けを会場のみんなと一緒に踊りながら楽しむ。そして最後には、「うぉーうぉーしようぜ!!」と呼びかけて、再び「群青インフィニティ」を熱唱。会場一丸となって、タオルを振り回してライブを締めくくった。

 曲調も世界観も多彩な楽曲群を分かりやすく配置したライブ構成、工夫を凝らした演出やダンスで魅せたパフォーマンス、多彩な声色を聴かせながらも一貫して一本筋の通った透明感のある歌声を聴かせたライブ。一転MCでは思いの丈を思うがままにぶつけ、非の打ち所のないステージで垣間見せる人間味溢れるギャップに、観客はきっと惹きつけられるのだろう。最後に「みなさんが作ってくださる、優しくて温かいライブの空間が何より好きです」と、会場全体に向けてメッセージを贈った。

 このツアーは、15日に台北、22日に上海でも開催。声優10周年イヤーを迎える来年は、10周年記念第一弾シングルを発売することや、オフィシャルクラブ会員限定ライブ「にじかいっ!! vol.2」を2020年1月11日に開催することを発表。彼女が大切にしている“みんなとの空間”が、ますます大きく広がっていきそうだ。

セットリスト

東山奈央 1st TOUR“LIVE Infinity”
1.群青インフィニティ
2.True Destiny(アニメ『チェインクロニクル〜ヘクセイタスの閃〜』TVアニメ版EDテーマ)
3.青空ダイアリー
4.ネバギバ音頭
5.灯火のまにまに(TVアニメ『かくりよの宿飯』OPテーマ)
6.さよならモラトリアム
7.Mode Style
8.Action
9.Living Dying Kissin'
10.I Want You To Know Baby
11.オトメイロ
12.ゆれる
13.Rainbow
14.奇跡
15.君と僕のシンフォニー
16.イマココ(TVアニメ『月がきれい』OPテーマ)
17.未来YELL!
18.はじまりの空

【アンコール】
En 1.Love Power(Aice5楽曲カバー)
En 2.君の笑顔に恋してる
En 3.群青インフィニティ

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