色が塗られたキャンバスを立派な額に収めたものや、ブロンズでできた大きいオブジェばかりが、アートというわけじゃない。また、美術館やギャラリーの真っ白に輝く壁や床に飾られたものだけが美術作品であるという決まりだって、もちろんない。

【写真】「女の子が持っているやわらかい線が……」

 形式や置き場所とは関係なく、強い意思に基づいて為されたすべての行為はアートだと思う。だから、こんなかたちのアートだって、じゅうぶんにあり得るのだ。6月に刊行された一冊の本。原案・作画=愛☆まどんな、原作=山田玲司による漫画『白亜』のことだ。


 

昔から大好きな漫画に挑戦した

 愛☆まどんなは、少女をモチーフにして絵画を描き続けてきたアーティスト。各地でライブペインティングをするなどして幅広く活動してきた彼女には、ずっとやってみたいことがあった。

 漫画を描くこと、だ。小さいころから漫画が好きでよく読んでいた。アーティストになってからも、漫画を描いてみたい気持ちは高じたことがあるけれど、コマごとに絵をたくさん描かなければいけないのは大変すぎると思い、やってみる前にあきらめていた。

 ところが数年前、たまたま漫画家・山田玲司と知己を得た。ずっと漫画を描きたかったのだと話すと、

「だったらやろうよ! きっとおもしろいものができる」と、強く誘ってくれた。ネームと呼ばれる下描きの作業はこちらで担当しようとまで言ってくれた。

 それならやれるかもしれない。やるか! という気持ちにさせられた。すぐに打ち合わせを重ねるようになり、時間をかけて全9章から成るストーリー漫画が生まれた。

「天」「地」「小口」と呼ばれる本の断面部分にピンク色の塗装を施したり、ところどころにペインティング作品をそのまま印刷したページが紙質まで変えて挟み込まれていたり。造本も凝りに凝ってつくられた。内容、それを盛る「器」ともに表現への強い意思に満ち満ちて、書物自体が確固たる作品としてのたたずまいを見せている。

「女性の腰回りがいちばん美しい」

『白亜』に出てくるのは、10代の純粋な美少女ばかり。彼女たちが、愛と狂気の同居した、エロティックで不思議な世界をたゆたうさまを描き出している。もともと愛☆まどんなはこれまでの絵画作品でも、少女ばかりを描いてきた。その理由をご本人に聞けた。

「わたしは少女しか描きたくないんです。男性を描こうとすると拒否反応がおきてしまって、ムリ。女の子が持っているあのやわらかい線が好きで、それを描くのがやめられない。とくに腰回りを描くのが生きがいですね。何も身につけていない女性の腰回りが、この世でいちばん美しいと思っています。

 いつもそのままの腰回りを描きたいですが、状況的に何もはいていない絵じゃまずいかなというときには、パンツをはかせていますね。

 わたしは卑猥で下品なものは好きじゃなくて、そういうことを描こうとしているつもりはまったくありません。もっと単純に、『きれいでしょ、見て見て!』って感じで描いているだけですよ」

 純粋にやりたいことを十全にやり尽くして、その成果をすべて詰め込んだのがこの一冊ということになる。これをアート作品と呼ばずして何と言おうか。ページを繰るたび飛び出してくる愛☆まどんなの創作魂に、本を手にしてじっくり触れてみよう。

写真=吉屋亮

(山内 宏泰)