トランプ大統領は8月のニューハンプシャー州の集会で民主党のジョー・バイデン候補を「スリーピー・ジョー」とディスって笑いをとった。すでに2020年の大統領選は始まっている(写真:ロイター/アフロ)

ちょっと気が早いかもしれないのだが、そろそろ来年のアメリカ大統領選挙を取り上げてみたい。ちょうど12日は、3回目の民主党大統領候補による討論会が行われたところだしね。早過ぎる、なんてことだけはけっしてないはずである。


この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

何より今のトランプ大統領は、「再選されること」を最優先課題としてあらゆる政策判断を行っている。

日々繰り返されるトランプ氏のお騒がせ行動を読み解くためには、「2020年選挙」について知っておく必要がある。これがまあ、なんとも長いなが〜い戦いなのだ。

2020年の米大統領選、東京五輪の時期は「休戦」

次に大統領選挙が行われるのは、来年11月3日火曜日である。投票日は、「4で割り切れる年の11月の第1月曜日の次の火曜日」と決まっている。だからかならず夏のオリンピック大会と重なる。来年の選挙日程をご覧あれ。東京五輪の時期はちゃんと外して日程が組み立てられている。これも「毎度おなじみ」の光景で、今年は二大政党が五輪日程をサンドイッチして党大会を開催する。2004年(アテネ大会、共和党のブッシュJr.大統領再選)や1992年(バルセロナ大会、民主党のクリントン候補勝利)と同じパターンですな。

〇2020年アメリカ大統領選挙日程

2月3日 アイオワ州党員集会
2月11日 ニューハンプシャー州予備選挙
2月22日 ネバダ州党員集会
2月29日 サウスカロライナ州予備選挙
3月3日 スーパーチューズデー(カリフォルニア、テキサス、ほか11州が開票)
3月10日 ミシガン、オハイオほか4州で予備選挙、ノースダコタ州党員集会
3月17日 アリゾナ、フロリダ、イリノイ州予備選挙
3月24日 ジョージア州予備選
4月4日 アラスカ州、ハワイ州、ルイジアナ州
4月7日 ウィスコンシン州予備選挙
4月28日 ニューヨーク州ほか5州
7月13-16日 民主党大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー)

(7月24日-8月9日 東京五輪大会)

8月24-27日 共和党大会(ノースカロライナ州シャーロット)
9月末−10月 テレビ討論会(大統領候補3回、副大統領候補1回)
11月3日 一般投票・開票

候補者選びのプロセスは、来年2月に行われるアイオワ州党員集会とニューハンプシャー州予備選挙で始まる。ときには無名の候補者が、この2つの州で勝利してそのまま大統領候補への道をかけ進む。だから候補者は1年以上前から、この2つの州を入念に遊説して、選挙活動を行うことになる。

4000万人のカリフォリニア州が日程を「前倒し」

ただし2020年選挙の最大の特色は、3月3日のスーパーチューズデーが圧倒的な存在となることだ。いつもは最終盤の6月に予備選を行うカリフォルニア州が、選挙日程を大幅に前倒しにしてきたために、この日の重要性が一気に高まったのである。

なぜそんなことになったかというと、カリフォルニアは全米最大の4000万人の人口と、GDPではイギリスを上回り世界第5位クラスの経済力を有する。そして政治的には、移民問題や環境問題で「反トランプ」を旗幟鮮明にしている。予備選挙においても、同州の存在感を高めようと日程を前倒しにしてきたものと拝察する。

予備選では、各候補が州ごとに割り当てられた選挙人を取り合う。民主党の候補者選びにおける選挙人は全体で3768人。このうち3月3日に開票されるのは、カリフォルニア州416人、テキサス州228人、ジョージア州105人など合計で1420人に達する。実に37.7%がこの日に決定する。だからここで挑戦者が決まっても不思議はない。その場合、2020年の予備選挙は、実質1カ月で勝負がつく「スプリントレース」ということになる。これでは各候補が前のめりになるのも無理はない。

すでに民主党の大統領候補者討論会は、今年6月にフロリダ州マイアミで1回目が行われている。なんと20人もの候補者が集まったので、10人ずつ2回に分けて実施された。7月の第2回(ミシガン州デトロイト)も同様だった。12日、ヒューストンで行われた第3回では、候補者が10人に絞り込まれた。

各候補の支持率がどれくらいか、こういうときの定番、RCP(Real Clear Politics)でチェックしてみよう 。

以下の数字は本校執筆時点(9月13日)のものだ。

ジョー・バイデン元副大統領(デラウェア州)75歳 26.8%
バーニー・サンダース上院議員(バーモント州) 78歳 17.3%
エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)70歳 16.8%
カーマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)54歳 6.5%
ピート・ブティジェッジ市長(インディアナ州サウスベンド市)37歳 4.8%

たまたま9月10日火曜日、文化放送「くにまるジャパン極」 で、パックンことパトリック・ハーランさんと共演する機会があった。ご存じの通り、パックンは「お笑い芸人」だが、ハーバード大学卒のインテリで、テレビ東京のニュース番組『モーニング・サテライト』でもときどきご一緒する。そして長年にわたる民主党支持者でもある。

パックンに「有力5候補」に対する意見を聞いてみた

そのパックンに、これら有力5候補に対する意見を聞いてみた 。

ジョー・バイデン氏が先頭ランナー。1973年から上院議員で、オバマ政権下では8年間副大統領を務めた。知名度は高いけど、政治家としての経歴が長過ぎる。そういう人は過去に恥ずかしい投票行動があったりするので、かならずしも有利な条件ではない。
バーニー・サンダース氏はいつも怒っているお爺さん。貧富の差の拡大を憂えている。トランプ大統領は「社会主義者!」と批判するけれども、「そうだよ、自分は社会主義者だけど、何か?」と言えちゃう。問題は本が売れすぎて、自分がミリオネア(百万長者)になっちゃったこと。だから今はビリオネア(億万長者)を批判している。
エリザベス・ウォーレン氏はブルーカラー家庭の出身だけど、ハーバード大学教授になって、消費者金融保護局の設立に貢献した人。上院議員としての経歴は、それほど長くないから叩きにくい。いまいちばん勢いがあって、最有力候補だと思う。
カーマラ・ハリス氏は、インドとジャマイカ移民の家庭で育ち、5人の中では唯一の有色系候補。カリフォルニア州女性初の司法長官だったという経歴を持つこともあり、とにかくディベートが上手い。第1回の討論会でバイデン氏をやり込めたときは、みんな鳥肌がたったよ。

* ピート・ブティジェッジ氏は37歳で、同性愛者であることをカミングアウトしている初の候補者。将来は楽しみだけど、今回はたぶん消えていくと思う。市長さんと言っても、サウスベンド市は人口で全米301番目の小さな町だからね。でも、何度も破産したビジネスマンであるトランプさんよりは、よっぽどマシだと思うけど!

ということで、「本命ウォーレン、対抗ハリス、穴馬サンダース」という評価であった。実際に選挙権がある人の意見だけに、説得力があると思いますぞ。

さて、最後にトランプ大統領の再選確率について、現時点の観測を述べておこう。

アメリカ大統領選挙は現職が有利に出来ている。それはわが国における県知事選挙と似たようなもので、現職は日常のすべてを選挙運動に換え、公費で活動を賄うことができる。ましてドナルド・トランプ氏は良くも悪くも超・著名人である。「知らない」という有権者はさすがに居ないだろう。

これに対し、アメリカという広大な国土においては、挑戦者は名前を売ること自体が容易ではない。50州を駆け巡るためのコストも膨大なものになる。だからこそ、1年以上をかけて候補者を選定するプロセスがあるわけだ。2020年選挙においても、「トランプ大統領が何をするか」よりも、「誰が挑戦者になるか」の方が重要だと言える。

過去の歴史をひも解いても、選挙で勝った現職が負けるのは、アメリカがとてつもない不況に襲われたときくらいである。第2次世界大戦後でいうと、1980年のジミー・カーター大統領と1992年のブッシュSr.大統領がこれに該当する。景気後退リスクが囁かれ始めた昨今ではあるが、2020年のアメリカ経済がそこまで急激に悪化することはないだろう。

トランプ再選確率は最低5割でも最高でも6割止まり

しかし、これだけ党派色が強まった今のアメリカにおいては、「最後はかならず接戦になる」ということも忘れてはならない。21世紀になってからの選挙戦において、もっとも大差となったのは2008年選挙である。このときはバラク・オバマ候補がジョン・マッケイン候補を破ったのだが、一般投票数では53%対46%であった。選挙人の数では大差であったけれども、一般投票数ではわずか7ポイント差であったのだ。

そうだとすれば、2020年選挙も「最後はかならず接戦」と考えておくべきだろう。トランプ再選確率は最低で5割はあるだろうが、最高でも6割止まりなのではないか。おそらくはトランプさん自身も、そのくらいであることを自覚している。だからこそ、日々の行動が過激なものになっているのではないだろうか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

秋競馬が始まった。台風一過、少し涼しくなった中山競馬場が僕らを呼んでいる。今週末は3連休で3日間開催となる。

16日(月曜日)には朝日杯セントライト記念(中山競馬場、芝2200m、G2)が行われる。

まだ格付けが済んでいない3歳馬たちが、菊花賞(10月20日、京都競馬場)に向けて3枚の切符を争う。春のダービーで不覚を取った馬が、夏の間に人知れず成長していて、このレースで覚醒することがある。2015年のキタサンブラック(ダービー14着)、18年のジェネラーレウーノ(同16着)がその典型だった。

セントライト記念はオルフェ産駒のタガノディアマンテ

今年もダービーで振るわなかった馬が大勢出ている。その中で狙ってみたいのはタガノディアマンテだ。皐月賞6着、ダービー9着だが、いずれも上がり34秒台と鋭いところを見せている。鞍上は中山巧者の田辺裕信騎手で、去年もこのレースを制している。幸いなことに人気薄。ここは決め打ちで、単複で勝負してみよう。

タガノディアマンテはわが偏愛するオルフェーヴル産駒。というと、「またか」と言われそうだが、この法則をご存じか。オルフェの父、ステイゴールド産駒に共通するのは、2200mとか2500mといった中途半端な距離のレースに強いこと。だから宝塚記念と有馬記念でよく来るのですな。

そういう「へそ曲がり」の血筋だけに、2200mのセントライト記念は3頭出ているオルフェ産駒は無視できませんぞ。ちなみにあと2頭はエングレーバーとオセアグレイトなり。