「喫茶店(カフェ)」の倒産が増加している。2019年1-8月累計の「喫茶店」の倒産は42件(前年同期31件)と、前年同期比35.4%増と大幅に増加した。このままのペースで推移すると、過去20年で年間最多を記録した2011年の70件に迫る勢いだ。
 コーヒーの香りに包まれた癒しのひと時。商談で利用。時間つぶし。待ち合わせ場所。喫茶店は、多くの人に様々なシーンを提供してきた。だが、缶コーヒーの進化、大手コーヒーチェーンの出店攻勢、若者の生活様式の変化など、その存在感が薄れつつある。
 さらに、2013年にセブン-イレブン・ジャパンが『セブンカフェ』をスタートすると、瞬く間にコンビニ各社が追いかけ、イートインスペースの広がりで喫茶店はより厳しさを増している。
 もともと喫茶店は体力の乏しい小規模経営が多い。そこに大手コーヒーチェーンの黒船が来襲し、異業種のコンビニも攻勢をかけている。折しも、時代は少子高齢化が進み、嗜好変化や競合に人手不足、さらに最近は「タピオカドリンク」ブームなど新しい飲料にも押され、廃業や倒産する喫茶店が増えている。
 10月には消費増税が実施されるが、店内飲食が基本の「喫茶店」には軽減税率は適用されない。消費税率8%と10%の2%の差が、さらに喫茶店の倒産、廃業を加速させるかもしれない。


  • 本調査は、「日本標準産業分類 小分類」における「喫茶店」の倒産を集計、分析した。

1−8月の「喫茶店」倒産は42件 過去20年で3番目の高水準

 喫茶店の年間(1-12月)倒産は、2005年から急増、2011年は20年間で最多の70件を記録した。2011年の増加は、東日本大震災後の消費マインドの低迷とコーヒー豆価格の高騰が大きな要因だった。その後は、豆価格も落ち着き、2009年12月に施行された中小企業の資金繰り支援策の中小企業金融円滑化法の下支え効果もあって、倒産は一進一退をたどってきた。
 ところが、人手不足で従業員の確保が難しくなるなか、大手コーヒーチェーンやコンビニとの顧客争奪戦が激化、小規模な喫茶店の脱落が目立つようになり、2019年(1-8月)は8カ月間で42件と急増の事態を招いている。

負債は1億円未満が9割超

 倒産した喫茶店の負債合計は10億2800万円(前年同期比91.4%増)だった。負債10億円以上の大型倒産はなく(前年同期ゼロ件)、負債1億円未満が40件(同30件)と9割超(構成比95.2%)を占めた。特に、同5千万円未満が全体の88.0%を占め、ほとんどが個人・零細規模だった。

資本金別、資本金1千万円未満(個人企業含む)が9割超

 資本金別では、「個人企業ほか」が27件(前年同期比22.7%増、構成比64.2%)と、小・零細規模の喫茶店が64.2%を占めた。次いで、1百万円以上5百万円未満が6件(同50.0%増、同14.2%)、1百万円未満が4件(同300.0%増、同9.5%)の順。5千万円以上は発生がなかった。

地区別、最多は中部の16件

 地区別では、年間喫茶代の支出が大きい岐阜市や名古屋市のある中部が16件(前年同期比100.0%増、構成比38.0%)で最多。中部では愛知県が13件(同85.7%増、同30.9%)と全国の3割を占めた。次いで、近畿13件(同18.1%増、同30.9%)、関東8件(同33.3%増、同19.0%)と続く

喫茶店の店舗数はピーク時から半減

 一般社団法人全日本コーヒー協会の統計データによると、喫茶店の全盛期はバブル景気にまっしぐらの1981年(昭和56年)。全国に15万4,630店あった。だが、バブル崩壊後は店舗数が減少をたどり、2016年は6万7,198店と、ピーク時から56.5%減少した。
 だが、従業員数はピークだった1981年の57万5,768人から、2016年は32万8,893人と42.8%減少にとどまり、店舗数の減少率に届かない。これが喫茶店を苦境に追い込むもう一つの要因でもある。人件費などのコスト削減に限界を抱えた「喫茶店」は、労働集約型のビジネスモデルの典型でもある。人手不足とともにコーヒーの香りと人の温もりを感じられる空間が、街から消えようとしている。

 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの年間「喫茶代」は2004年の5,355円から2012年の5,016円まで減少をたどった。ところが、2013年から再び増加に転じ、2018年は6,761円と右肩上がりを持続している。こうした中で、喫茶店は冬の時代が続く。
 消費者ニーズの多様化で、喫茶店に求められる役割も変化している。2019年(1-8月)の喫茶店の倒産原因は、販売不振が8割(構成比83.3%)を占めた。昔ながらのコーヒーへのこだわりが価格転嫁や新商品開発の遅れにつながり、喫茶店の苦境をさらに深めている。
 コーヒーが高級嗜好品でなくなり、コーヒー豆本来の味を求める人も減り、団塊世代は退職世代に入っている。こうした消費者の嗜好に合わせ、テイクアウトや提供商品の差別化など、個性的な店作りが生き残りに必要になっている。
 古き佳き時代の名残りを差別化につなげるのか。逆に、若い世代のニーズに合致した手軽で安価な商品提供に転換するのか。いま、喫茶店は最大の分岐点に差し掛かっている。