2019年12月に検査マニュアルを廃止予定

 金融庁は9月10日、2019年12月を目標に従来の「検査マニュアル」の廃止を明らかにした。廃止時期に言及したのは初めて。
 昨年6月に公表した「検査・監督基本方針」で、段階的に分野別の基本方針を策定。今年4月以降の「検査マニュアルを廃止する方針」を明記していた。
 これまでの検査マニュアルは、「債権分類基準」により不良債権を分類し、損失額を算出し引当算定するルールが根幹だった。
 今後の検査・監督方針案について金融庁は、「金融機関が自ら経営理念や方針などを策定し、将来を見通した引当をできるようにする。担保・保証だけではなく将来のキャッシュフローに基づく返済可能性にも着目」し、これまで以上の金融仲介機能の発揮を求めた。今後、業界団体や公認会計士などと議論を重ね、最終案を年内に発表する意向だ。

「債権分類基準」から「将来性」へ

 バブル崩壊後の不良債権処理に有効だった検査マニュアルの「債権分類基準」は、財務内容や担保、保証が重要視された。いわば「過去」をみる実務で、これが定着していた。
 「正常先」や「要注意先」は、予想損失を過去の実績から算出。「破綻懸念先」や「実質破綻先」、「破綻先」は、回収不能額を見積もり、個別で償却や引当を行ってきた。
 だが、人口減少や高齢化社会、低金利による金融機関の業績悪化など、環境が大きく変化。従来のやり方の弊害も指摘されていた。
 金融庁は、「これからは金融機関が独自の経営理念に基づく経営戦略があることを理解し、個性や特性に着目した検査・監督を行っていく」と説明。ビジネスモデルの持続可能性を確認し、各地域や産業別にリスクを評価できるようにする。
 例えば、地域の重要な産業が「漁業」の金融機関の場合、これまでは業績や財務内容による債務者区分で引当や償却を行ってきた。今後は、「好漁や不漁など産業の変動を前提に(取引先と)付き合い、(正常先でも)将来性をみて引当を行い支援する」(金融庁)。将来性を重視し、今後起きることへの支援をしやすくする。

地域金融機関の生き残りをかけた取り組み

 金融機関は、それぞれの地域や産業事情に精通し、より踏み込んだ取引先との対話が必要になる。現場に寄り添う当然の姿勢だ。
 過去の実績や定量、定性情報だけでなく、足元の情報に加え、将来予測も重要となるだけに、金融機関の力量も問われる。
 金融庁は、過去の実績に基づく現状の引当実務を否定していない。だが、今後は将来のリスクを引当に反映できるが、各金融機関がそのリスクにどのように対応しようとしているかを重点に検査・監督する。
 そのため金融機関は、事案の理解を深めた説明が必要で、融資を受ける企業側もまた将来のリスクや持続性などの説明が重要になる。
 苦境が続く企業や地域、産業の再生支援が強まるが、地域金融機関の経営方針や戦略で取引の変化も現実味を帯びてきた。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2019年9月12日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

‌金融検査マニュアルを廃止する金融庁