ここまでCEPが小さくなると、核弾頭によって広範囲を破壊するのではなく、500kgの通常弾頭や特殊弾頭で目標を狙い撃ちするという運用方法に変えられます。核を使いませんので、報復核攻撃の可能性が大幅に下がり、たいへんに使いやすい兵器と言えます。また、「こうかばつぐん」な精密攻撃により目標を確実に破壊できます。

◆4:ハードターゲットでも余裕で破壊できる

 我々の身の回りでハードターゲット(警備や警戒が厳重なために攻撃が困難な人や場所)となり得るきわめて頑丈な建物として代表的なものは、PWR(加圧水型)の大型原子炉です。幸いなことに合衆国原子力規制委員会(NRC)は、現存の商用大型原子炉へ航空機が突入した場合を想定した報告を公開しています*。
<* NUREG/CR-5042 UCID-21223 Evaluation of External Hazards to Nuclear Power Plants in the United StatesC. Y. Kimura, R. J. Budnitz 1987/11 U.S.NRC (要約版)執筆にはこちらを用いている。全文は、ローレンス・リバモア国立研究所からのフルテキストとして同じくNRCで公開されている>

 難しいことはすべて省略しますが、この報告のなかで最後の方に掲載されているTable 6.4.2の中の数字を使います。この表は、突入する航空機の質量と鉄筋コンクリート(RC)の厚さ、突入物のコンクリートへの侵入深さの割合(侵入深さを鉄筋コンクリートの厚さで割ったもので、1.0で貫通を意味する)を示しています。

 航空機の機体は生卵のようなもので、目標に衝突しても自身が押しつぶされて四散してしまい、運動エネルギーを目標の破壊に使えません。日本のKamikaze Attackがガソリン火災の派手さの割に大型艦艇には、たいした損害を与えられなかった理由がこれです*。
<*陸軍特別攻撃隊1 高木俊朗1986年08月25日 文春文庫などで厳しく批判されている。爆弾としても衝突速度が遅いために装甲で跳ね返されてしまった>

 従って、シミュレーションでは、エンジンの突入で近似計算されています。これは現在も使われている手法です。ここでは航空機エンジンの代わりに500kgの弾頭とその速度でおきかえることします。

 最も保守的な見積もり(最大限壊れにくい方に傾けた見積もり)では、約2tのエンジンが約1000km/hで突入した場合、厚さ1.8mの鉄筋コンクリートに約60cm侵入して制止されることになります。

 KN-23は、弾頭500kg、終末速度が最大で7,200〜8,400kmとされています。運動エネルギーは質量に比例、速度の自乗に比例しますので運動エネルギーは想定された大型航空機の12〜28倍となります。仮に弾頭質量を250kgに減じた場合は、運動エネルギーは、想定された大型航空機の6〜14倍となります。

 ここで粗い近似となりますが、侵入深さは運動エネルギーに比例すると仮定します。

 厚さ1.8mの鉄筋コンクリートは、弾頭質量500kgの場合も250kgの場合でも弾頭によってそれぞれ4〜9倍、2〜4.5倍の余裕度で貫通され、内部への侵入を許します。また、計算上音速の5倍でもすべての場合で貫通され、音速の4倍でも殆どの場合貫通されます*。
<*音速の四倍では、軽量弾頭の場合に限りコンクリートの厚み90%強の侵入深さで制止され、ここで弾頭が炸裂する>

 さて、現実の大型原子炉はどうでしょうか。ここで大飯原子力発電所3,4号炉についての論文*が使えます。
<*大飯原子力発電所3・4号機PCCVにおけるコンクリート工事|山本 貢, 瀬戸川 葆, 木村 稔|コンクリート工学, 1991 年 29 巻 2 号 p. 27-40>

 これによると大飯原子力発電所3,4号炉の格納容器は、外径45.6m、高さ65.6m、胴部が厚さ1.3m、ドーム部が厚さ1.1mのプレストレスト・コンクリートであり、更に内側を厚さ6.4mmのライナープレート(金属板)で内張りされています。