2 前項の規定により制定される政令には、その政令の規定に違反した者に対して二年以下の懲役若しくは禁錮、十万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑を科し、又はこれを併科する旨の規定、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関してその政令の違反行為をした場合に、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金、科料又は没収の刑を科する旨の規定及び没収すべき物件の全部又は一部を没収することができない場合にその価額を追徴する旨の規定を設けることができる。

第百九条の二
1 災害緊急事態に際し法律の規定によつては被災者の救助に係る海外からの支援を緊急かつ円滑に受け入れることができない場合において、国会が閉会中又は衆議院が解散中であり、かつ、臨時会の召集を決定し、又は参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないときは、内閣は、当該受入れについて必要な措置をとるため、政令を制定することができる。

 つまり、濫用の危険がある国家緊急権はあえて設けず、災害などの緊急事態には法律を整備することで対処しようというのが日本国憲法の趣旨であり、そのための法律として災害対策基本法が用意されているのであるから、自然災害における非常時の措置に関しては、災害対策基本法を改正することで対処するのが筋ではないだろうか。

◆【こんなにあるのにまだ足りない?】緊急事態に権限を集中させるその他の法律一覧

 緊急事態条項のない日本国憲法下では「緊急事態に対応するすべがない」という主張をよく耳にするが、そんなことはない。前出の災害対策基本法をはじめとして、緊急事態に対応するための多くの法律が既に存在している。

 そして、内閣総理大臣に権限を集中させる法律も存在する。

(1)国民に物資をみだりに購入させないように協力を要求する(災害対策基本法108条の3)
(2)省庁や地方自治体、JRやNTTなどに必要な指示を出す(大規模地震対策特別措置法13条1項)
(3)防衛大臣に自衛隊法8条に規定する部隊等の派遣を要請する(大規模地震対策特別措置法13条2項)本来は防衛大臣に帰属する権限を内閣総理大臣に帰属させている
(4)警察庁長官を直接指揮監督し、一時的に警察を統制(警察法72条)
(5)原発事故の場合に市町村長、都道府県知事に対して避難の立ち退き、または屋内避難のため勧告・指示を出すよう指示することができる(原子力災害対策特別措置法15条、16条)

 さらに、災害救助法には都道府県知事および市町村長に強制的に執行する権限が定められており、これに対する罰則も設けられている。

 このように、内閣に立法権を認める規定、内閣総理大臣に権限を集中させる規定、必要に応じて人権を制限する法律が現行憲法下でも存在する。

◆現行憲法のせいで災害時のガレキ撤去もできない、という「嘘」

 緊急事態条項は東日本大震災の翌年、2012年の自民党改憲草案から登場した。緊急事態条項の創設に賛成する論者たちは、東日本大震災を引き合いに出し、災害対策において『憲法が障害になることが明らかになった』という意見を繰り返し述べてきた。緊急事態条項の必要性を主張する憲法学者の百地章氏は、自身が監修する著書(※)の中で「東日本大震災の時、ガレキは個人の所有物が流れたものであり、それらを勝手に処分すれば憲法の『財産権』を侵害することになりかねないということで、ガレキ処理は遅々として進みませんでした」という書いている。救助活動や災害支援の現場において、憲法が大きな壁となっている旨を主張しているのだ。
※ 女子の集まる憲法おしゃべりカフェ(2014年、明成社)