軽減税率対応のレジ導入状況は、遅れに遅れ、現時点で4割程度しか移行していないという

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 10月1日より、現行8%から10%の消費増税が行われる。「低所得者層のため」との“配慮”から生活に直結する食料品の消費税率は据え置きとなるが、その線引きは曖昧で、消費者はおろか事業者に混乱が予想される。果たしてどんな事態となるのか。

◆「低所得者層のため」!? 不合理だらけの消費増税

 消費増税まで、あと3週間ほど。今回は増税だけでなく、新しく軽減税率が導入される。低所得者の負担にならないようにと公明党が主張し、飲食料品と新聞の税率は8%のままに。諸物価高騰の折、命にかかわる食べ物の税率は、ありがたくも据え置かれたわけだ。しかし、弱者保護の名目で導入される軽減税率、実は不合理だらけだという。『月刊飲食店経営』の編集長・毛利英昭氏は、外食=贅沢という古いイメージから飲食店での店内サービスを軽減税率の対象外とした為政者たちに疑問を呈す。

「いまや単身世帯率は30%を超えています。一人暮らしの高齢者も多い。買い物や料理に困っている人にとって、外食は生活の重要な基盤です。外食といっても牛丼一杯が380円なら、家で作るより安い。それなのに外食は贅沢だと一律に10%にしたのには違和感を覚えます」

 軽減税率が低所得者のためになるかは未知数なものの、線引きの曖昧な軽減税率によって、混乱が生じるのは確かだろう。

「人手不足の影響で、飲食業界も外国人に頼っています。日本語が十分でないスタッフもいるなかで、10月からはさまざまな質問が店員に寄せられるでしょう。食べ残ったものを持ち帰りたいが軽減税率は適用されるのか、セットのジュースだけを店内で飲み、残りはテイクアウトしたいなど。お客さまに消費税が8%か10%かを説明しないといけない場面が増え、レジは混雑が予想されます」

 店側に何ら落ち度がなくても、軽減税率がらみで客からクレームを言われる心配もある。

「8%のテイクアウト客が店内で食べていたら、他のお客さまから文句が出るかもしれません。軽減税率が適用されるかどうかは、購入する段階で決まります。『席が混んでいて持ち帰ろうとしたが、会計を終えた瞬間に空いたので、座って食べた』。この場合は差額の2%は払う必要はありません。でもテイクアウト用の容器で食べていると、10%を払ったお客さまには白い目で見られるかもしれません」

 ほかにも、通常の屋台は外食と同じ10%になるが、移動販売車(フードトラック)や祭りの出店は机や椅子を店側が用意していないので軽減税率の対象で8%に。このわかりにくさに不満を抱く客は増えそうだ。毛利氏は、「店員を守るためには、しっかりクレーム対策の準備をしなければならない」と助言する。

◆イートインスペースがある店の苦悩

 一方でスーパーやコンビニは、イートインスペースがあっても、会計時に持ち帰りかどうかを一人一人確認する必要が生じるのでは。

「買ったものをイートインで食べれば、軽減税率の対象外で10%です。でも小売店は『ここで食べる場合は申告してください』と明記したポスターを貼っておけば、レジでお客さまに尋ねなくてもいいのです。実際はイートインを利用するお客さまも『ここで食べます』とわざわざ言わないかもしれない。店側も消費税は預かっているだけで、8%でも10%でも得も損もしないので、持ち帰り客がイートインで食べていても積極的には注意しないのが賢明だと思うでしょう」

 たかが2%のために、嘘はつきたくない。されど周りが黙っているのに自分だけが馬鹿正直に白状して損をするのも癪なだけ。それならいっそのこと、出前や宅配を頼む人が増えると予想されるが。

「デリバリーの潜在的ニーズは高いですし、出前館やUber Eatsなどの専門サービスの普及で、店側も始めやすくなっています。ただ店で食べるより2%安くなっても、配送料はそれ以上にかかります。軽減税率を理由にするデリバリーの増加は、そこまで多くはならないでしょう」