スコットランド到着翌日にさっそくベンチ入り。そして、緊急出場となった食野。スタンドを沸かせるプレーも見せた。(C) Getty Images

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 移籍発表と同じように、そのときは突然やってきた。
 
 J1ガンバ大阪からマンチェスター・シティへ完全移籍した食野(めしの)亮太郎。先月30日にスコットランドのハーツに1年間の期限付きで移籍することが発表され、翌31日のハミルトン戦で早速ベンチ入りした。そして試合開始から31分、味方選手の怪我に伴い、食野は本拠地タインカッスル・パークのピッチに立った。大阪を飛び立ち、スコットランドのエジンバラ空港に到着してから、わずか29時間後のことだった。
 
「希望ポジションはトップ下」と語る食野がフィールドに入ると、クレイグ・レビーン監督は4−3−3から4−2−3−1にシステムを変更。食野の特性を生かすため、トップ下のポジションを置く4−2−3−1に迷わず変えた。
 
 41分には、その食野が持ち味を示した。「キュッ、キュッ」と地面から音がしてきそうな鋭い切り返しと細かいステップで敵を抜くと、ペナルティエリア手前の位置からミドルシュート。枠を外したが、場内から拍手が起きた。
 

 しかし、長距離移動の疲労と連係不足がたたり、その後はなかなかチャンスに絡めない。結局、試合は2−2の同点で終了。シュート場面以外は食野に大きな見せ場がなく、本人も「自分では納得できるものではなかった」と嘆いたが、試合後の地元メディア『エジンバラ・ライブ』による「良い足技を見せたが、明らかに疲れていた」との評価がすべてだった。
 
 チームメート全員の名前すら覚えていない状況で臨んだデビュー戦。食野は「雰囲気を掴むのには重要だった。次はもっと良くなるように」と前を向いた。
 試合前日に行われた入団記者会見で、印象に残る言葉があった。「自分と似たタイプの選手は誰か?」と英人記者から質問が飛ぶと、食野は「エデン・アザールとリオネル・メッシに憧れています。あと、セルヒオ・アグエロも好きです」と答えた。
 
 そこで、会見後の囲み取材で、もう少し深く聞いてみた。「アザールやメッシの動きを自分のプレーに取り入れたり、意識していることはある?」と。食野は次のように答えた。
 
「意識していますね。特にアザールは右利きで自分と同じで、ポジションも似ている。ターンの仕方や身体の使い方とか、ゴールに向かうプレーとかすごく参考にしています」
 
もともと、食野は「海外サッカーがすごく好き」なのだという。マンチェスター・Cはもちろん、昨シーズンまでアザールが在籍したチェルシーの試合も日本でよく見ていた。さらには、リーガ・エスパニョーラのバルセロナやレアル・マドリー、アトレティコ・マドリーもお気に入りのチームだと明かした。
 
 たしかに、食野のプレーにはアザールの影響が色濃く見える。ドリブル時に重心を落とし、鋭い切り返しとターンで相手ゴールに勢いよく迫る。スペースのない局面でも積極的に仕掛ける姿勢は、トライすることを良しとするイングランドやスコットランドに合いそうだ。
 
 食野は言葉を続ける。
 
「アザールはお尻周りや体幹がすごくしっかりしている。そこは自分もヨーロッパで身につけたい。こっちのグラウンドは日本よりぬかるんでいて、そこでやることで足腰が強くなると思う。アザールのような小柄な選手がボール取られないようにするには、体を鍛えなくてはいけないと思うので。今まで以上にそこは努力していくつもりです」
 
 さらに、スコットランドで活躍するイメージもできている。ポイントは、屈強な身体を持つ選手たちの中で、自身の小柄な身や俊敏性をいかに生かすか。
 
 
「すごくパワフルでフィジカルの強い選手がたくさんいる。スコットランドには、そういうイメージがあります。でも、その中に(小柄な)自分が入ったら、また違いができて面白いのかなと思ったりしますね。大きい選手の中に小さい自分がいる。そういう極端な違いで、生きられるんじゃないかと。どうしても真っ向から勝負すると負けちゃう部分が多いと思うので、うまく身体の切れで相手を振り回して。そういうプレーができやすいリーグかなと思っています。