チーム全体のバランスが崩れるなか、孤軍奮闘で攻撃陣を牽引した久保。プラストウ記者はあらためてその能力を高く評価した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 パラグアイ戦は、新たな“発見”というよりも“再確認”の色合いが濃いゲームだった。

 ゴールはふたつとも素晴らしい展開から生まれた。長友佑都と酒井宏樹がサイドからお膳立てし、大迫勇也と南野拓実が一流のフィニッシュを見せた。とはいえ、長友、酒井、大迫らベテラン組の個の技術や戦術理解度の高さは、もはや分かり切っている。より重要なのは、彼らがどれだけ新しく加わったヤングタレントを盛り立て、連携し、サポートしているか。そこだけを切り取ると、実に見事な“再確認”ができた。

 エリアごとのコンビネーションで見れば明らかだ。酒井と堂安律、長友と中島翔哉、吉田麻也と冨安健洋、さらには吉田と植田直通と、いずれも心強いセットだっただろう。やはりこれまでの森保ジャパンのベースを担ってきた前半出場のメンバーは、攻守両面での連動がスムーズでバランスが良かった。パス回しも観ていて安心できたし、アジアカップのときよりも確実に進歩した印象を受ける。

 取り立ててニュースにはならないが、代表チームにおいてはこうした“再確認”がきわめて重要な位置を占める。実際、日本の欧州組には時差ボケや移動の疲れが残っていただろうが、一人ひとりからはあまりそれが感じられなかった。シンプルな約束事のもとで、ストレスを抱えずにプレーできているからで、寄せ集めでタイトな日程で強化を図る代表チームでは大切な要素となる。

 
 そんななか、個人的に目を引いた選手がふたりいる。橋本拳人と冨安の両人だ。

 26歳ながらこのチームではベテランの部類に入ってしまう橋本は、なによりポジショニングが冴えていた。90分間を通して安定感があり、パラグアイが隙あらば狙っていたカウンターの芽をことごとく摘み取る。攻撃面でも局面を前に進めるパスを迷わず撃ち込んでいたし、ボールタッチ数が多く、ミスが少ない。

 この日は柴崎岳、板倉滉と中盤で並んでも、ひとつ位置を下げてバックラインに入っても、橋本のプレー精度と安定感、読みの鋭さはチームの大きな武器となっていた。堅守速攻を徹底してくるアジア勢と対峙するワールドカップ予選では、彼のようなタレントが不可欠だということが分かっただろう。

 もうひとりは、この夏にイタリア・セリエAのボローニャに活躍の場を移した若き守備者、冨安だ。パラグアイ戦では本職のセンターバックのみならず、サイドバックでも異彩を放った。見慣れていないのもあって、攻撃面での関与はいかほどかと見守っていたが、オーバーラップのタイミングも頻度もクロスの質も申し分なかった。1対1の守備対応は言わずもがなだ。原口元気に通したロングフィードは圧巻だった。

 まだまだ伸びしろがふんだんにありそうな、末恐ろしい若者である。
 後半頭から登場した久保建英も、持ち味を存分に発揮した。

 ドリブル、ボールキープ、フリーキック、コーナーキック、そしてシュートと、十分なインパクトを与えたと言える。もはや中心メンバーのひとりと断定して差し支えないだろう。

 正直言って、チームとしてのバランスは前半のほうが断然良好だった。そのせいか、久保の貪欲にゴールを狙う姿勢がやたらと目立ち、やや独善的な振る舞いに映ったのも確かだ。しかしこれは、久保のせいではない。大迫、長友、酒井、中島、堂安、柴崎らがピッチからいなくなり、バランスが著しく崩れたなかで、むしろよく存在を示したと思う。18歳でこれだけの完成度を持った日本人選手を、わたしはいままで見たことがない。確かなクオリティーを“再確認”できた。

 
 パラグアイは個の能力において、日本に勝るとも劣らないレベルにあったと感じるが、カシマスタジアムを覆った高温多湿に苦しみ、本来の力を発揮できなかった。いずれにせよパラグアイ戦は、週明け火曜日に行なわれるワールドカップ予選の初戦、ミャンマー戦に向けたテストの場としては適していなかった。パラグアイよりはるかに弱く、戦術的にも自陣に引き籠るだろうミャンマーを想定した試合にはなり得なかったのだ。

 といった見方もできるが、ゲーム内容自体は非常に建設的で、良いリハーサルとなったのは間違いない。なぜなら選手、メディア、サポーターの誰にとっても、簡単に言えば「Feel Good」な試合だったからだ。チームの自信を深め、観る者に幸福感を運んだ試合と換言できる。心理的な価値が大きい。

 森保一監督の狙いもそこにあったのだろう。強化の道筋はすこぶる順風満帆だと感じるし、ベテランも若手も素晴らしく、楽観的な展望しか描けない。もはやそう容易く、森保ジャパンは非難の対象にならないだろう。

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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日。91年に英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。