大迫、南野のゴールシーン以外でも、選手間の連係が冴え渡った前半戦。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 南米選手権でベスト8、準々決勝ではブラジルを苦しめたパラグアイを相手に、日本は危なげなく勝利を収めました。ただ、収穫も課題もこれまでの森保ジャパンの1年間をなぞったような試合でした。2次予選に向けては不安を打ち消しましたが、その先を考えるとまだまだこれからといったところでしょうか。
 
 スタメンはほぼこれまでの森保ジャパンと変わらないメンバー。注目されたのはボランチに橋本選手、GKに権田選手が起用されたことでした。このふたつのポジションは他に比べて序列が不透明な状況です。特に、柴崎選手の相方は横一線。森保監督が橋本選手にかける期待を感じました。
 
 対するパラグアイは、日本対策としてシステムを少しいじってきました。特に守備時には4−5−1のように立ち、中央に固まってくる日本の中盤に対しディフェンスラインが中にポジションを取り、それによって空くサイドのスペースには両サイドハーフの10番ゴンサレス選手と9番サムディオ選手が埋めに下がる。それにより、ほぼマンツーマンのような守り方をしてきました。
 
 それに対し、10分を経過する頃から、中島選手と大迫選手をはじめとする起点となる選手たちがポジションを大きく変えて相手を撹乱しました。そのうえで、ボールをシンプルにはたくのではなく、仕掛けたり、コンビネーションを駆使して前へと前進したり、とアグレッシブにパラグアイの中央を破壊しにいったので、徐々にパラグアイは”あっぷあっぷ”の対応を迫らされていました。

 そこにきての見事な先制点です。
 中島選手が外から内側に入ってきてボールを受け、それにパラグアイの右サイドのふたりが釣られた瞬間に、中島選手はシンプルに堂安選手を使いました。それによりスペースが見えた長友選手がオーバーラップ。クロスボールこそ相手に当たって大迫選手の元に届いたものでしたが、サイドの崩しは見事でした。
 
 さらに、大迫選手のゴール前の相手の背中を取る動きとタイミングが完璧でした。セオリー通り、相手を出し抜いて相手の前を取ることができたその動き出しは、彼がプロに入り、プロ仕様のゴールの取り方として身に付けたもの。これまた素晴らしかったと思います。

 2点目も形こそ違えど、そこで見られたディテールは1点目と重なるものばかりでした。
 
 ゴールに向かう動きを繰り返したことで生まれたサイドのスペース。相手の背後からタイミングよく飛び出すサイドバックのオーバーラップ。そして、ゴール前の密集したエリアでスペースを作り出した南野選手の相手の背中を取る動き。これらがつなぎ合わされた攻撃こそ、森保ジャパンの形と言えるでしょう。
 
 2ゴール以外も、久々に見られた躍動感と連動性。橋本選手と権田選手の活躍も含めて、前半は明るい材料ばかりが見えました。
 
 後半に入り、両チームとも3人の選手交代を行ないました。日本は久保選手と原口選手を両翼に起用し、さらにサイドバックに冨安選手をテストしました。
 
 一方のパラグアイはシステムを変更。4−4−2(4−2−3−1)のような形にして、攻守によりアグレッシブな戦いを挑んできました。
 
 後半の頭で光ったのは右サイドのふたり、久保選手と冨安選手でした。ふたりで何度も右サイドを制圧しにかかり、実際ゴールまであと一歩まで何度も迫りました。
 
 しかし、時間を追うごとに様相は変化。前半とパスルートが変わり、中島選手の左サイドを起点としていた攻撃が右を多く経由するようになったのは悪いことではありませんでしたが、前半のメンバーよりスタートポジションを外に取る久保選手のスタンスと周りとの距離が広がって、コンビネーションが生まれなくなってしまいました。