作家が書いたサスペンスには、人間が描けているという点で、納得できるものがある。樋口顕シリーズ第7弾の当作も、謎解きの仕掛けのための仕掛けではなく、人間心理の奥底が犯罪の理由として上手く使われていた。少年院に送られる途中で少年犯の原田が脱走し、少年課の氏家(佐野史郎)が追う。一方、その現場で6歳の少年・祐基を轢きそうになる。彼の母親・叔江が自宅で殺されていた。
原田は都下の祖父の家に隠れていたのを逮捕されるが、後にこの祖父も何者かに殺されてしまう。その犯人が300万円を預けたコインロッカーのある某駅の場面が出たが、筆者はこの某駅に土地勘がある。この駅にコインロッカーがあったっけ? 映像と違うぞ。
強行犯係の樋口(内藤剛志)は、井沢叔江の夫・則之(高橋和也)のアリバイに不自然さを感じる。疑われた井沢は弁護士の黒崎雅夫(宅間孝行)に事件弁護を依頼。あれ、懐かしや。NHKの朝ドラ『つばさ』で元々は脚本や演出をやっていた宅間が俳優業にも味をしめて、「演じる方をやってみたい」と発言したのを昔読んだ。今回の弁護士役、姿もよく、演技は硬いが本望だっただろう。これは余談。
二転三転ののち、意外な犯人が捕まる。6歳の祐基の父親は則之ではなく、意外な人物だった。則之は完全な無精子症で、妻が殺された後で息子との関係に悩みに悩む。内藤は近頃出過ぎで、テレ朝のドラマかと錯覚したほど。もっと別の強行犯係も開拓してくれよ。(放送2019年9月2日20時〜)

(黄蘭)