2018年のU-19アジア選手権に出場した当時の久保。アジアの舞台では無類の勝負強さを発揮してきた。(C) Getty Images

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「ハッキリ言って、重みが違うし、背負っているものも全然違うと思ってます。自分はU-17の予選、U-19の予選だったりでアジアで戦ってますけど、今度は『アンダー』もつかなくなる。相手も強くなりますし、自分たちのレベルも上がりますし、1個上のステージで戦っているのかなと思います」
 
 自身初のワールドカップアジア予選初戦となる10日のミャンマー戦(ヤンゴン)を前に、久保建英(マジョルカ)はA代表で予選を戦う意味の大きさをこう表現した。

 
 確かに、隔年開催のU-17やU-20ワールドカップとは違い、ワールドカップは4年に1度しかない。予選方式もセントラル開催だった前者とは異なり、約2年という長期間にわたって広大なアジアをホーム&アウェーで戦う難しさも比べ物にならない。今回から海外組の一員となった彼にしてみれば、移動や時差調整、環境適応という新たな難題も加わる形になった。「生半可な気持ちではカタールに行けない」という覚悟を持って、今回の森保ジャパンに参戦しているはずだ。
 
 とはいえ、年代別代表のアジア予選経験が大きな力になるのはひとつの事実。それは中村俊輔(横浜FC)や遠藤保仁(G大阪)ら代表レジェンドたちも言っていることだ。97年ワールドユース(現U-20ワールドカップ)と2000年シドニー五輪の両予選を戦っている戸田和幸氏(解説者)も「アジアは暑さや水、食事、移動距離や時差などのいろんな問題があるから、年齢の若いうちに経験しておいた方が耐性や対応力が身に着く。年代別代表の経験はA代表にも確実に生きる」と前向きにコメントしていた。
 
 とりわけ久保は、2015年U-16アジア選手権予選をモンゴル、2016年U-16アジア選手権をインド、2018年U-19アジア選手権をインドネシアと、タフな場所で真剣勝負を経て世界切符を掴んできた選手。その経験値は非常に大きい。
 
 2016年9月のU-16アジア選手権(U-17ワールドカップ・アジア最終予選)を振り返ってみると、重圧のかかる初戦・ベトナム戦で彼は開始16分に精度の高い直接FKでゴールネットを揺らし、先制点をゲット。チーム全体の緊張を和らげる大役を果たしている。
 
「試合前に『相手の壁が飛ばないから、あんまりコースを狙いすぎずにしっかりと強くボールを蹴れば入るよ』というアドバイスをもらっていて、その通り蹴ったら入った。狙い通りのFKだったかなと。キレイに決まったんで、なんかすっとしたというか、緊張が取れたかなという感じがしました」と値千金の得点を冷静に振り返れるところも堂々たるもの。森山佳郎監督も強心臓ぶりには舌を巻いていた。この大会の日本はベスト4で敗退したが、久保は4試合に出場し4ゴールと大活躍。大舞台での強さを見せつけている。
 一方、昨年のU-19アジア選手権(U-20ワールドカップ・アジア最終予選)でも、初戦・北朝鮮戦の開始8分に斉藤光毅(横浜FC)に絶妙のスルーパスを出していきなり先制点をアシストしてみせた。そして2-2に追いつかれた63分には、味方の得たFKをまたも直接蹴り込み、相手の追い上げを阻止。結局、このゴールが決勝弾となり、日本は5-2で勝利。難敵を倒したことでグループを首位通過し、準々決勝も完全アウェーの状況下でインドネシアを撃破、世界切符を手にしている。この一戦で久保は宮代大聖(山口)の2点目をアシスト。またも持ち前の勝負強さを発揮したのだ。
 
 この時の彼は横浜F・マリノスで試合に出られず苦しんでいた。今もレアル・マドリーからマジョルカにレンタル移籍して間もなく、チーム内での地位も固まっていない状態だが、勝負の懸かった大舞台では必ずと言っていいほど結果を残すのが久保建英という選手である。それをA代表というトップカテゴリーの中でも継続できれば理想的。むしろそうならなければ、真のスターに上り詰めることはできない。ミャンマー戦は輝かしい代表キャリアを築くための重要な第一歩。U-16、U-19の最終予選のようにゴールから入ることができれば、勢いに乗れるはずだ。
 
 そのシナリオを現実にすべく、直近のパラグアイ戦(鹿島)で確固たる自信と手応えを掴みたいところ。今回はベンチスタートが濃厚だが、久保は短時間でも強烈なインパクトを残せる。「自分が呼ばれた理由を見せなきゃいけない」という言葉通りのパフォーマンスを大いに期待したいものだ。
 
取材・文●元川悦子(フリーライター)