『まほろ駅前多田便利軒』(11)、『さよなら渓谷』(13)、『日日是好日』(18)などの力作を世に放った大森立嗣監督が、演技未経験のYOSHIを主演に迎え、共演に菅田将暉、仲野太賀を配し、新たな世界観を押し広げた映画『タロウのバカ』が公開される。オーディションを重ねたが主演が見つからず、あぐねた大森監督がインターネットで「14歳、有名人」と検索してYOSHIがヒットしたことからの出演オファーだったというから、運命の結びつきにも、そして菅田や仲野といったクレバーな俳優と渡り合うYOSHIの存在感にも、大きく惹かれる一作となった。

戸籍もなく、一度も学校に通ったことがない少年タロウ(YOSHI)は、スポーツ推薦で入った高校で怪我をして居場所をなくしたエージ(菅田)、ウリをやっている同級生に恋心を抱くも臆病なままのスギオ(仲野)と日々つるんでいる。タロウと遊んでいるときだけは心が解き放たれるエージとスギオだったが、奔放な日々の中、事件が起こる。

劇中、彼らが手にすることになる拳銃が、運命を途方もない方向に加速させる。だんだんと曖昧になっていく生と死の境界線、閉塞感とエネルギッシュさにからめとられる。YOSHII、菅田、仲野ーーこの三人でないと成り立たなかったであろうバランス、本作での得難い経験について単独インタビューした。

――三人での居方があまりにも自然で、特に、劇中何回か出てくる秘密基地でのシーンはアドリブのようにも見えました。基本は台本に沿っていたんですか?

仲野 いえ、アドリブ結構あったよね?

菅田 ある、ある。

仲野 YOSHIは平気でアドリブをかましてくるので、その自由さはすごく衝撃でした。将暉もすごくアドリブが上手なんですけど、YOSHIはそれに全然ついていってて。だから、すごいなと思って……。

菅田 いやいや、「自分はしてません」みたいな言い方してる。

YOSHI うん。自然に(仲野はアドリブを)言ってるよ。

仲野 俺、アドリブ全然できないから……。

菅田 エチュードの化け物みたいな太賀が、よく言うよ!

仲野 俺、台本に忠実な男だから。

菅田 嘘だよ(笑)。

仲野 でも、本当にYOSHIの対応力の高さをすごく感じました。

菅田 確かに。こっちも対応せざるを得ないしね。

仲野 そう。こっちが合わせていく、っていう。

菅田 動かされることって、普段あまりないよね?

仲野 ないね。

――なかでも、記憶に残っているYOSHIさんのアドリブエピソードなどは、ありますか?

菅田 あるシーンで、エージ仕切りでふたりを動かすところがあるんです。ドライ、テスト、本番と何回もやっていくと、慣れてもくるから、みんな違うことをしてくるわけなんですけど。本番のときかな、YOSHIがなかなか純粋に言うことを聞かず、ヘラヘラヘラヘラしていて。そのままこっちにガーンと突っ込んできたから、「おっ、来たな」と。じゃあ、こっちはこっちでちゃんと役割として、ねじ伏せようと思って、ドーンとぶつけたんです。

YOSHI すげえ痛かった!

菅田 あれ、よかったね!

YOSHI よかった! 湖ができたもん、ここ(目の周り)に。

仲野 湖(笑)?

菅田 湖、できてた?

YOSHI “かきくけこ(湖)”が出てきた。「涙がこぼれる!」みたいな。将暉も、俺が泣いてるとき、すごかったよね。湖ができてた。

菅田 うん。そうだけど……。

仲野 ちょっと、「目の上に湖」っていう表現がすごい(笑)。

菅田 すごいね(笑)。

――(笑)。YOSHIさん的には、俳優としての面白さみたいなものをおふたりから現場で思う存分、味わった感じですか?

YOSHI もちろん。将暉とか太賀もそうですけど、やっぱり撮影スタッフの皆さんが、自分に対してすごくフランクでいてくれて。僕も将暉も太賀も、撮影スタッフ全員で『タロウのバカ』を作り上げたという感じだから、とにかく愛があった。みんなと接してて、現場にすごく居やすかったんですよね。気を遣わないというか。そこが一番大切だった。重苦しい感じだとさ、「うーん」となっちゃうから。

――縮こまってしまうかもしれなかった。

菅田 うん。YOSHI、主演だからな。

YOSHI そう、そう、そう。

菅田 よかったよ。

YOSHI 変な話さ、主演でできなかったらやばいじゃん? だから愛があったから、よかったかも。

菅田 よかった。それが、もうすべてだよ。

――愛情を持って現場作りをしていくことは、菅田さんも仲野さんも決められて臨んだことだったんですか?

菅田 どうしたってYOSHIは初めてだし、わからないこといっぱいあるだろうし、とはいえ、俺らも教えすぎたくないし、俺らにすらわからないこともあるなかで……。15歳で、今までお芝居をしていなくて、初めて映画に主演で出る、しかも大森さんのもと、こういう作品に出るというだけでも嫌でもすごく注目されてしまうから、どうせだったら、YOSHIが自分で「やってよかったな」と思うものにしたいじゃないですか。だから、そのために「必要なことはないかな」とは考えていました。

仲野 そうですね。あくまでYOSHIが主人公ですから、とにかくYOSHIが光ればいいし、YOSHIが結局、主役の重みみたいなものも、ある意味、どこかで感じてしまう環境に置かれてしまったというか。主役というものの重圧は、たぶん彼自身にもあるだろうし。

YOSHI そうだね。

仲野 でも……、とにかくYOSHIが魅力的に映れば、この映画が勝つと思っていたので、彼がのびのびやって、なおかつ、いい作品になるように、と。僕も将暉もそうですけど、全スタッフが感じていたことだと思います。

菅田 そうだね。YOSHIが自由であればあるほど、いいというか。

――輝く映画であるということですね。

仲野 『タロウのバカ』自体、YOSHIが15歳のときに撮った映画だから、あの瞬間のYOSHIだからこそ出てる何かが、ちゃんと映っていると思うんです。きっと今のYOSHIだったら、たぶんできなかったことが。

YOSHI そうだと思う、本当に。わかる。

仲野 あのときをちゃんと残せているのが、この映画の最大の価値なような気もしますし、人がどんどん変化していく、子供が大人になっていくその境界というか。

YOSHI 一番グワーッという感じだったからね。

仲野 そう。

菅田 本当だよね。

仲野 グラデーションのすごい良いときを、大森監督が切り取ってくれているんじゃないかな、という風に思います。

YOSHI タイミングがバッチリ合致した。

――そのあたり、当然YOSHIさん自身の個性の輝きがあると思うんですが、伸びやかなその時期にご一緒できたことは、おふたりの俳優人生にとっても影響がありましたか?

菅田 うん、そうですね。

仲野 学びは、すごいありましたね。

菅田 面白かったですね。「こういう時間、欲しかった」みたいな感じ、ありますね。

仲野 うん。YOSHIの奔放さというか自由さって、ある意味、ほかの現場では、もしかしたら衝突が起きることがあるような気もするんです。でも、それはたぶん僕の想像の範囲で。『タロウのバカ』の現場でも、YOSHIはすごく自由でのびのびとやっていて、最初、大人は身構えるんですけど、最終的には首を縦に振るんですよ。YOSHIを見て考えさせられるというか、「これってそうだよな、これが真っ当だよな」って、大人も考えちゃうというか。

菅田 今日のインタビュアーさんも、実際、全員そうだったからね。

仲野 みんな、顔色、変わっていったでしょう?

菅田 うん。

仲野 それがYOSHIの魅力だし、うん。きっとYOSHIは、そうやって大人を納得させる何かを持っているので、こっちが心配しているだけで、全部その範疇を超えてくれるから、そんな人と出会えたのは、すごくよかったです。

YOSHI うれしい!! 最高です。出会えたことに感謝だし!

仲野 ……リップサービスね。

菅田 これが大人のやり方だ!

YOSHI それは……ちょっとやめてもらえる?

菅田&仲野 (笑)。

――俳優人生という括りでなくとも、「出会えてよかった」というのがいいですね。

仲野 なんで、こんなバイアスかかっちゃったんだろうな、俺の人生。

一同 (笑)。

菅田 ね! 本当だよな。

仲野 うん。

――そんなふうに思います?

仲野 思います、本当。

菅田 思います、思います。でも割とさ、「そういうのなくやってこう」としてきた感じもあるじゃん。

仲野 うん、自負はある。「ギリのところまでやってきたぞ」みたいな。

菅田 それでも、いっぱいあるもんね。

仲野 あるし、YOSHIを見ていると、「もう全然手前だったんだ、俺の、このラインって」って。

――その“ライン”は、この作品やYOSHIさんに関わったことによって、やや取っ払えた部分はあったりするんですか?

菅田 どうだろうなあ……。

仲野 映画の中では、何か開放できた感じはあって。それは楽しかったです。

菅田 そうなんだよね。

YOSHI 僕が言いたいのって、将暉と太賀とかじゃなくて、全国民に言いたいんですけど、単純に人生を楽しんでほしいんですよ。本当に! 難しいと思うんですけど。今の世の中って、ネガティブで経済が回っているじゃないですか。「善は悪に勝てない」って言いますけど、俺は、その真逆のことを起こしたくて。難しいんですけど、そういう型を作りたいんです。結局、「型にはまらない」っていうのが一番難しいことであって。

世の中で1から10のことは誰でもできると思っているから、僕は0から1のことをやりたくて。今やっていることは、新しい「YOSHI」というアイコンが現れて、どんどん有名になっていって、YOSHIのアイコンの次の世代を引き継いでくれる人たちが現れたらいいな、というのがあるんです。その0から1を作り上げたいんです。この映画もそうですけど、すべて。

菅田 そこで俺らは迷うんだよね。1から10を1回やらせるべきなのかどうか、というところが、ずっと俺らの課題だったよね。

仲野 現場でのね。

菅田 うん。たぶんいま求められる人ってさ、「1から10を1回できますよ」と見せた上で、0から1を作れる人だと思う。

――それは、まさに菅田さんや仲野さんですよね。

菅田 そうだとうれしいですけど、それはやりたいことじゃないですか。でも、YOSHIには普通に、純粋に0から1だけでいってほしい感じもあるし。

仲野 それはある。

YOSHI なるほど。

菅田 でも、きっと1から10を問われる瞬間があるから。

仲野 それでいて、0から1のYOSHIを許容する社会であってほしいな、とも思うしね。

菅田 そうだね。

YOSHI だから、そういう社会を作っていかなきゃいけない、というのはあるよね。

――もし1から10が必要になったときには、相談できるおふたりもいますし。

菅田 そう、相談してくれるんですよ。

――この先や未来のこととかを、ということですか?

菅田 うん。

YOSHI たまにね。俺、人生で結構ぶつかることが多くて。「ここ、なんでこういうふうに」って。

菅田 怪我だらけだもんね。

YOSHI そうだよ。ズキズキですよ、常に。転んでは起き上がって。ポジティブなので立ち上がるのは早いんですけど、その分多い。そうなっていくうちに自分は成長していってるんだと思う。

菅田 そこが素直だからいいよね。

仲野 うん。

YOSHI なんかね、僕ってすっごい素直なんですよね!!

仲野 (笑)。

菅田 すっごい素直だと思うよ。嘘がないから。

仲野 YOSHIの場合には、YOSHIの魅力を発信したいっていう気概を持った大人の人が、きっと周りにいっぱいいるから。そういう人が少しずつ増えていけばいいな、と本当に思いますね。(取材・文=赤山恭子、撮影=映美)

映画『タロウのバカ』は2019年9月6日(金)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー。

出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀 ほか
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
公式サイト:www.taro-baka.jp
(C)2019映画「タロウのバカ」製作委員会

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