放送作家の高須光聖が、世の中をもっと面白くするためにゲストと空想し、勝手に企画を提案していくTOKYO FMの番組「空想メディア」。8月25日(日)の放送では、先週に引き続き美術家の会田誠さんが登場しました。



左から会田誠さん、高須光聖



◆現代美術家=YouTuber?

高須:今はInstagramやYouTubeで、発信しようと思えば誰でも発信できますよね。今まで発信する場所がなかった人が、方法を見つけたら何か発信するって時代になってきているじゃないですか。美術界も、どんどん変わってきてます?

会田:それは思いますよ。広く“ネット以前”と“ネット以後”じゃ業界も変わってきたでしょうし、僕の意識も変わっていて。無関係のままでもいいんですけど、やっぱりある時期から無関係のままっていうのはさすがに止めようかなと思って。

(中略)

素人とプロの垣根が溶けていく状況は、こちらとしてはキツイこともあるわけですよね。でも、面白いってこともあるし、歴史的な必然で避けて通れない。例えば、ビデオアートなんてものは、もともとテレビ局とか大手メディアが高級なカメラを持っていて、だんだんとホームビデオカメラが出てきて、そんななかで個人のアーティストがそういう機材でやり始めたみたいなところがあって。

現代美術家のやることって、もともとYouTuberがやっていることとかTwitterでの発言とかに似てるって言いますかね。(彼らと)仲良くなれないこともないし、もしかしたら追い落とされる天敵が現れたのかもしれないのですけれど。

◆“美術に興味のない人”に作品が伝わる時代

高須:僕らが“これは広まるべきじゃない”と思っても、なぜかネットでは意図とは違って広まっていってしまったり、作品が価値をなくしてしまったり……ということもありますよね。

会田:美術作品においては、昔から美術ファンって人がいて。ざくっと言っちゃうと、美術作品を読み取れるだけの教養、文脈と言ったりもしますけれど、そういうのを読める美術マニア・美術ウォッチャーがいるんです。

例えば、マルセル・デュシャンって人が便器をひっくり返した作品を出したとしたら、それがどういう意義があるのかってのがわかる人。

前は、そういうのがわかる人だけに見られてたんですね。だからいろいろと、「ウンコを缶詰にする」みたいなアートを出してもOKだったんですけど、ネット時代で美術に興味がない人にも情報が届いちゃって、「美術館でウンコの缶詰を展示しているなんて、けしからん!」とか、思わぬ遠くからクレームが来る。でも、僕からしたら“これは嫌な時代になった”とか、そういうつもりもないんですよね。

◆一般人の目に触れるとは、想定していなかった

会田:昔の美術業界は、ちょっといやらしい業界だったのかもしれない。“一般ピープルは置いて、俺たちわかるやつだけでやろうぜ”っていうのが、業界の悪いところだったのかもしれなくて。そういう遠くからクレームが来るってのは、時代として必然(だと感じます)。

僕の作品も要するにそういうことですよ。包帯を巻いた少女の絵(「犬」という作品)とかも89年に描いたし、あれを描いたときに一般の人の目に触れるってことをあまり想定しなかった。美大の学生だったときに描いていましたし、将来アーティストになれるという保証もない無名の画学生なので、半径何メートルの周りの人間関係に見せるつもりで描くわけですよね。

それが今ネットで、僕が20歳そこそこで描いた絵が、全国津々浦々の男女平等を考えているおばさまの目に触れたりして、“キーッ”ってなるのは仕方ないとは思うんですけれどね。


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<番組概要>
タイトル:空想メディア
放送日時:毎週日曜 25:00〜25:29
パーソナリティ:高須光聖
番組Webサイト:https://www.facebook.com/QUUSOOMEDIA/