■60歳以降の男女に「友情」はない

男女を問わず、いくつになっても異性との付き合いは大切です。自分とは違った視点に触れることができ、知らなかった情報を得ることができるからです。それがないと、思考の柔軟性が失われ、若々しさを保つことはできなくなります。

ただ、60歳を過ぎれば男女の間に「友情」は成立しないということを覚えておくべきでしょう。友情とは、情報や人間関係などのギブ・アンド・テークで成り立つもの。退職して第一線から退くと、情報や人間関係の供給が細りますから、男女の友情も「それっきり」になりがちです。

すると、残る男女の関係性は「恋愛」しかありません。60歳以降は恋愛こそが若さを保つカギになるのです。その場合、20代や30代ではないのですから、一緒に食事をして話をするだけでもいいでしょう。60歳からは男女ともに、そういう付き合いができる相手をいかに見つけるかが非常に大事になってきます。

といっても、シニアになったらセックスをするなというわけではありません。現代の男は85歳くらいまでは性交が可能だといわれます。では、元気なままでいるにはどうしたらいいか。60歳を過ぎると「長生きのために体力を温存したい」と言い出し、セックスを含め抑制に努める男がいますが、それはむしろ逆効果だと思います。つまらないことを心配しないで、できることはやりきる、出せるものは出し尽くすべきです。

私は当年88歳ですが、いまだに体力があり余っていると感じています。執筆という体力勝負の仕事で、2019年だけで単行本を6冊書く予定です。まして60代や70代の男はどんどん体力を使うべきでしょう。恋愛やセックスも然りです。

ひとつ提案があります。既婚者は60歳を前に1度は「この結婚生活は今後うまく続くのだろうか」と結婚生活を「棚卸し」することです。

結果として離婚するかどうかは別として、ほかの女性と関係を深めるという選択肢もあるでしょうし、妻から三行半を突きつけられるかもしれません。そもそも結婚生活に不満を抱えている女性は男性が考える以上にたいへん多く、私の知る限りでも60代女性の不倫は珍しくないのです。

この30年で働き方が多様化したように、恋愛や結婚のあり方も大きく変わりました。寿命が延びた分、1人の相手と添い遂げるのはいよいよ難しくなったと感じています。

■いくつもの人生を経験できる

これからは60代以上の離婚、再婚が増えるでしょう。それは裏を返せば、いくつもの人生を経験できるということです。第一の人生と60代からの第二の人生でパートナーが替わることもあるでしょうし、互いに恋愛を楽しみながら片目をつぶって添い遂げる人生もあるでしょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SPmemory)

「出会いがない」「もう老けてしまって自信がない」と嘆く人がいますが、そんなことはありません。セミナーやオンラインサロン、そのオフ会といったさまざまな場所で、新たな出会いがあるはずです。気になる異性がいたら、「この人と恋に落ちるかもしれない」と思うでしょう。すると意識が変わり、多くの人は若々しくなるのです。

結婚のあり方が変われば倫理観も変わります。60代以降の恋愛が、特に珍しいことではなく、当たり前のことになる日が近づいているように思います。

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櫻井 秀勲(さくらい・ひでのり)
きずな出版社長
1931年、東京都生まれ。東京外大卒。「女性自身」などヒット雑誌の編集長を歴任、「女学の神様」「恋愛の神様」と呼ばれる。2013年から、きずな出版社長。近著に『60歳からの後悔しない生き方』がある。
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(きずな出版社長 櫻井 秀勲 構成=医療ジャーナリスト・井手ゆきえ 撮影=大杉和広 写真=iStock.com)