■サラリーマンの秘宝「財形貯蓄」を活用せよ!

2018年にクラウドポートが発表した「初任給に関するアンケート調査」では、初任給を貯金に使った人がおよそ2人に1人という結果が出ています。そのうち「貯金を将来的に運用したい」と考える人は65%。初任給を株などの投資に回したという人も増加しており、若年層の投資への意識は年々上がっているものと思われます。さらにこのアンケートの「リターンが小さくても保全性が高いもの」(約60%)、「1万円くらいの小額から投資できるもの」(約34%)、「手間がかからずほったらかしで運用できるもの」(約27%)という結果から、新社会人の多くが、リターン以上に利便性を重視していることが見て取れます。

銀行での自動積立定期預金や、証券会社で自分が選んだ株式を毎月積立購入できる“るいとう”(株式累積投資)、投資信託の積み立て等は、リスクに応じて商品が選べ、最初に手続きすればあとはほったらかしてOKですが、私が新社会人へお勧めする積み立てはほかにあります。

「財形貯蓄制度」を使えば、安全かつ確実、しかも手軽に中長期の資産形成ができてしまうのです。

財形貯蓄制度(以後財形)は、勤労者の貯蓄や持ち家取得の促進を目的とした制度で、資金は事業主の協力を得て、天引きで引き落とされます。

前述の積立商品などは、銀行口座に引き落としのための残高がない場合、当然ながら積み立てはできませんが、財形であれば、給料から天引きとなるため、給料が支払われている限り強制的に積み立てられます。そのため、半強制的に“貯蓄グセ”が身に付けられるのです。

この財形には「一般財形」「財形住宅」「財形年金」の3つがあり、一般財形は使途の制限なく積み立てを目的としたもの。財形住宅は住宅の購入を目的とした積み立て、財形年金は年金としての受け取りを目的としたもので、満60歳以降に5年以上の年金として受け取りができます。

この財形のメリットは、まず、財形住宅と財形年金の合計550万円から生じる利子等が非課税になる点。さらに財形年金では年金の支払い終了まで非課税措置が継続されます。また、財形住宅の場合、残高に応じた長期かつ低金利の融資が利用できる点もメリットです。勤務先によっては利子補給が受けられることもあり、一般的な住宅ローンよりおトクになるケースも。

■財形住宅か財形年金のどちらかを選びたい

一般財形は使途が自由な代わりに、税制優遇がないため、新社会人であれば財形住宅か財形年金のどちらかを選びたいところです。非課税扱いとなるのは2つの合算で元利合計550万円ですが、先に財形住宅で550万円を積み立て、マイホーム購入に伴って全額払い出しをした後、財形年金をスタートさせれば、なんと1100万円を非課税で積み立てることができます。

ですが、財形住宅と財形年金はその名の通り、住宅と年金のために積み立てるものです。そのため、目的外の払い出しをした場合は解約利子が課税されるうえ、その間の非課税で支払われた利子も課税扱いとして追徴されます。

ただし、17年4月から、目的外払い出しの範囲が拡大され、災害等による被害や、疾病のための医療費が一定額を超えた場合などは非課税のまま払い出しが可能。万が一のときでもそのまま財産が残るのは、安心な要素でしょう。

“地味だけど結構使える”。制度は、意外と身近にあるものです。

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黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。
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(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)