古くは、ハンス・オフトから2トップだと言われて出場したにもかかわらず、トップ下の位置まで降りてプレープレーしようとした三浦カズだ。オフトから注意されてもカズは簡単には従おうとしなかった。

 代表チームでは岡田ジャパン時代(2007〜2010)まで、普通に見かける光景だった。前線の4人が高い位置で右も左も関係なく、まさに流動的に動き回っても、右サイドを任されたはずの中村俊輔が、その7割以上の時間、中盤でゲームメーカー然としたプレーに及んでも、テレビ解説者や評論家はそれに異を唱えようとしなかった。

 続くザックジャパン時代は香川真司だった。左サイドを任されたにもかかわらず、多くの時間、真ん中でプレーした。この流れで臨んだブラジルW杯では、その香川の流動的な動きが致命傷になった。

 勝利が義務づけられた初戦のコートジボワール戦。香川が対面で構える相手のSBを放置したことが失点の大きな原因になっていた。

 だがその後、少なくとも代表チームで、ポジションを大きく外してプレーする選手を見ることはなくなった。川崎フロンターレの家長昭博に依然、その気は多少あるが、見かける頻度はグッと減った。

 流動的を奨励する声も、監督のシナリオと言うべき布陣を、軽んじる声も減っている。香川や中村のようにポジションを外すことが、高い位置から守るプレッシングにどれほど大きな影響を与えるか、世の中に広く浸透したからに他ならない。

 ベストメンバーにこだわるデメリット。布陣やポジションを軽視するデメリット。日本サッカーは、ここ何年かの間に遅まきながらそれぞれのデメリットに気付いた様子だ。悪い癖、非サッカー的な独自の習性はパッと見、減っている。これから探るべきは裏の部分。目を凝らしていきたい。