ラグビーW杯の開幕まで1か月を切り、日本ラグビー協会が報奨金制度の導入を明らかにした。大会に登録される31人の選手とスタッフに、優勝で500万円、ベスト4以上で300万円、ベスト8で100万円が支払われる。

 同じW杯ということで、条件反射的にサッカーと比較したくなる。

 昨夏のロシアW杯の日本代表は、グループステージ突破で600万円(金額は推定、以下同)が支払われた。そのほかにコロンビア戦の勝利給が200万円、セネガル戦の引分けで100万円が上乗せされるので、選手ひとり当たりの報奨金は900万円になった。

 もっとも、サッカーはFIFA(国際サッカー連盟)から出場国に経費が拠出される。これが150万ドルで、グループステージを突破した日本は成績による配当金としてさらに900万ドルを受け取った。そもそも財源が豊富なだけに、報奨金の額も高く設定することができたと言える。

 ラグビー協会はどうか。

 サッカーのFIFAにあたるラグビーユニオンは、経費や分配金を拠出しないという。ラグビー協会が独自に財源をひねり出し、報奨金を設けたのだ。金額よりも心意気が評価されるべきだろう。

 他でもない選手自身も、報奨金の有無に影響されないと思う。
 
 2016年から細い糸を辿るようにラグビーの取材をしてきた。競技の魅力や本質を理解できているとは言えない立場だが、選手の話を聞いていると真っ直ぐな情熱を感じる。
 
 国内での人気や国際的な競技力でサッカーに先行され、ここ最近のバスケットボールの盛り上がりを肌で感じている選手たちは、今回のW杯の結果次第でラグビーの未来は明るくも暗くもなる、との自覚を抱いている。ここできっかけをつかまなければ、ラグビーを根付かせることはできないとの危機感は強い。『4年に一度じゃない。一生に一度だ。』という大会のキャッチフレーズは、日本ラグビーのW杯に賭ける思いを表したものでもある。
 
 チームのターゲットは、史上初のベスト8入りだ。
 
 ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの南半球のチームに加え、シックスネーションズを戦うイングランド、フランス、アイルランド、ウェールズらが『ティア1』と呼ばれる第1グループを形成する世界のラグビーは、サッカー以上に明確なヒエラルキーが存在する。20か国が4つのグループに分かれてプール戦(グループステージ)を争うので、どのグループにもティア1の国が2つ以上は入ってくる。世界ランキング11位の日本は、8月発表の世界ランキングで3位のアイルランド、7位のスコットランドと同居する。
 
 ベスト8へ進出するのは、各プールの上位2チームだ。ラグビーの勝点はサッカーと異なり、勝敗に関係なく1試合で4トライ以上を奪えば「1」を獲得できる。7点差以内の敗戦にも「1」が与えられる。勝点計算はサッカーより複雑になっていくが、いずれにしてもアイルランドかスコットランドのどちらかを倒すことで、準々決勝への道が開けてくる。

 個人的に感じるのは、97年の日本代表との共通点である。

 フランスW杯出場に向けてアジア予選を戦っていたチームが、同年9月開幕の最終予選で悪戦苦闘したのは、当時からのサッカーファンならご存じのとおりである。首位通過の可能性を韓国に奪い取られ、一時は2位での第3代表決定戦進出も危ぶまれた。かつての国立競技場で、試合後に暴動が起こったこともある。

 出口の見えない暗闇をさまよいながら、当時の選手たちは何を考えていたか。

 02年の日韓W杯開催前最後の大会に、自力で出場権を得るという使命感と責任感が、一人ひとりの選手の、チーム全体の拠りどころとなっていた。試合に出たいといった声はときに聞いたが、自己本位な思いに触れたことは一度だってなかった。フランスへ辿り着いて02年につなげるとの思いを支えに、2か月半に及ぶ日々を乗り越えていったのだった。

 22年前に見たサッカー日本代表に、ラグビーW杯に挑むチームが重なる。