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毎週末、海外旅行をしているのと同じ

いつも月曜日は目覚めが悪い、会社に行くのが辛い、勤務中ボーッとしてしまうといった人は、それは「時差ボケ」によるものかもしれません。実は、週末に寝だめをしてしまうと時差ボケ状態になりやすくなるのです。

時差ボケとは、体内時計と睡眠時間帯がずれてしまう現象。平日に社会的制約(仕事、学校、家事など)があるなか、平日と休日で睡眠時間や就寝・起床時刻に大きなズレがあることをソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)といいますが、そうなるとまるで海外に行った時のような状態になります。体のためと思って長く寝ていても、このような不規則な眠り方は体内時計を狂わせ、逆に心身を不調にさせてしまうのです。

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毎週末、何時間も寝だめをしてしまうと、実際に旅行に行かなくとも毎週末に海外に行っては帰ってきて、時差ボケがなおらないまま翌日からいつもの時刻に起床し生活をする、仕事場に行かなければならない人は出勤する、といったことを繰り返しているようなものなのです。休日にいつもより3時間も4時間も長時間寝てしまうと、日本にいながらインド(時差が3時間半)にいるような時差ボケに見舞われます。

また、遅く寝がちで、出勤するために早く起きる生活になると当然、睡眠不足な毎日になりますが、睡眠不足は心にも影響を与え、抑うつも強くなることが分っていますから注意が必要です。「ブルーマンデー」というものがありますが、ソーシャル・ジェットラグは、休日明けの月曜日に体調がすぐれず憂うつな気持ちになるこの「ブルーマンデー」の要因でもあるようです。

体調が戻るのが遅い人は、こうした不調が回復するのが週の中ごろだったりする場合もあります。会社に勤務していても十分なパフォーマンスを発揮できないまま木曜日になってしまうかもしれないのです。月曜と火曜に眠気と疲労感が強く、水〜木曜日まで影響してしまうことがわかった調査報告もあります。

いつも眠たい日本人

寝だめをしてしまいがちな理由として日頃の睡眠不足がありますが、OECD加盟国の中でも日本人は世界に比べ睡眠時間が短い国です。また厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成27年)では、睡眠不足気味、眠気を感じる人が多い結果となっています。成人で「1日の平均睡眠時間が6時間に満たない」と回答した人のうち、「睡眠時間が足りなかった」と回答した人は男性で34.6%、女性で39.5%、また「日中に眠気を感じた」と回答した人は、男性では44.5%、女性では48.7%もいます。土日の寝だめをしている人が多いと見受けられる調査報告(NHK生活時間調査 2011年)もあるくらいです。

日本人が睡眠不足になる理由には、労働時間が多い、通勤時間が長い、女性では帰宅後の家事に時間がとられるという理由で睡眠時間が削られることがあるようです。さらに懸念されることに夜のスマートフォンの使用時間が長いという理由があげられるでしょう。このような理由から、平日をやり過ごした週末に寝だめをしてしまう人が多くいるのだと思われます。

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では、時差ボケを作らないようにするにはどうすればいいのでしょう。当然ですが、寝だめをやめることです。日頃の睡眠不足を解消していけば寝だめはやめられます。そのためには、寝だめの時間を平日に分散させて睡眠時間を増やしていくという方法があります。平日に1時間ほど早く眠れるような工夫が必要です。1時間も早く眠れない場合は15分でも30分でも早く寝るようにし、睡眠不足を解消していくようにしましょう。

また、平日も休日も同じ時刻に起床することが体内時計を整える重要なポイントです。どうしても平日と同じ時間に起き上がれない日は、2時間(できれば1時間)以内で調節するか、いつもと同じ時刻に一旦、起き上がり朝食をとって、午後に30分以内の仮眠をとるようにします(ただ、長すぎる仮眠は夜の不眠や睡眠リズムを崩す要因になります)。

夜型の人は、朝型に修正するのはなかなか困難ですが、就寝1時間前にはスマホなどの光に曝露されないようにする、夜は部屋の明かりをできるだけ落とす、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる、起床時刻はできるだけ同じにする、などを2〜3週間継続していけば、後ろにずれた体内時計を前に戻すことができます。そして体内時計が整い始めれば夜は自然に眠くなるでしょう。

正しい「眠気」とは

さて、なぜ夜のスマホや光に曝露されると眠りにとって良くないのでしょうか? 眠りの仕組みを知ることでそれは理解できます。

眠りを司っているホルモンに、睡眠ホルモンとも呼ばれる「メラトニン」というものがあります。メラトニンは脳の松果体から分泌されます。朝は体内時計からの信号でメラトニンの分泌がストップし、その後、目覚めてから14〜16時間くらい経過すると再びメラトニンが分泌されます。徐々に分泌量が増え、その作用で深部体温が低下し、眠気を私たちは感じるようになります。

メラトニンの分泌は主に光によって調節されるので、夜に強い照明の中にいたり、スマホやPCの画面を見ていたりするとメラトニンの分泌量が減り睡眠覚醒リズムが乱れる原因になるのです。メラトニンの分泌に影響が出ると、なかなか眠れなかったり、また睡眠の質を落としてしまったりします。

体内時計はどこにある?

では、そもそも体内時計はどこにあるのでしょうか。体内時計の本体は、脳の視床下部にある視交叉上核にあると考えられています。地球の1日は24時間ですが人の体内時計の周期はほぼ24.5時間です。そのため放っておくとこの生体リズムは日々ずれていき、睡眠をとる時間帯がだんだん遅い時間にずれてしまいます。そうならないようにするには、毎日、体内時計をリセットすることが必要です。

脳の視交叉上核以外にも、心臓、肝臓、腎臓から皮膚などにいたるまで、ほとんどの末梢組織に、時を刻む時計遺伝子が存在します。つまり体内時計は、脳にある親時計(中枢時計)と内臓など体にある子時計(末梢時計)とがあるのです。

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子時計は、親時計(中枢時計)に連動しつつ個々に時を刻んでいます。体内時計の親時計は、“朝の光”でリセットされます。朝、目を覚まして、光が眼の網膜に入ると、その刺激が脳の視交叉上核に伝わり、すると視交叉上核は松果体にメラトニンの分泌を抑制する命令を出して、開始時刻がリセットされるのです。子時計は、朝食をとることで針を合わせます。

また、体内時計には、時を刻むこと以外に、自律神経の働きを調節する役割があるため、親時計と子時計が同調せず、リズムが毎日くずれた状態の生活を続けると自律神経失調症になりやすくなります。心身ともに健康であるためには、規則正しい体内時計が不可欠というわけです。