【ライオン・キング】正直アニメ版はあんまり…だった私が“超実写版”を観て『ライオン・キング』を心から大好きになった5つの理由

圧巻の映像美や再現度の高さが話題の、"超実写版"『ライオン・キング』(2019年8月9日(金)より全国公開中)。
『ライオン・キング』“超実写版”の意味とは? パークへの展開は? ジョン・ファヴロー監督インタビュー
劇団四季やアニメ―ション版のヒットで、知らない人はいない名作ですが、
「そもそもアニメ版の方に思い入れがなく、観に行くか迷ってる」
「アラジンなど人物が主役のものは良いけど、動物モノの実写ってどうなの?」
という声も時折聞きます。
そこで本記事では、幼少期から正直本作があまり面白いと思えず、実写化の話を聞いた時も「へぇ…」ぐらいの熱量だった筆者が、今回の実写版で『ライオン・キング』が大好きになった理由を解説!
必ず劇場に観に行きたくなる、"超実写版"『ライオン・キング』の魅力を掘り下げて行きます。
誰もが知る超メガヒット作
「サークル・オブ・ライフ=命の環」をテーマに、誰もが知る壮大な物語である『ライオン・キング』。
オリジナルのアニメーション版は1994年に公開され、全世界観客動員数では『アナと雪の女王』を超えて、アニメーション史上No.1を誇ります。
ミュージカル版は、映画・演劇・コンサートを含めたエンターテイメント史上最高の62億ドルを記録。
今なお人気が衰える事を知らず、まさに”キング・オブ・エンターテイメント”と呼ぶにふさわしい、超大作です。
超大作、なんだけど…
実は筆者、幼少期からアニメ版『ライオン・キング』がどうしても「傑作だ! 」と言い切れるほど響かず…
冒頭の「サークル・オブ・ライフ」のシーン、大好きな悪役スカー、アニメーションで描かれる壮大なサバンナの景色など、魅力は多いのですが、どうにもストーリーに入り込めない。
理由としては、ザックリ以下の3つがあると思います。
1. 父 ムファサの死が辛過ぎる
いや、もうここは何度見ても辛い。
身内の策略で、子の目の前で親がヌーの大群に踏み殺されるなんて、当時まだ子供だった自分からしたら、トラウマもんです。
その後シンバが、父の亡骸にすり寄って静かに泣くシーンも、しんど過ぎて身を切られそうになるし…
あまりにもこのシーンがしんどくて、作品を繰り返し楽しんで観られないんですよね。
2. “ハクナ・マタタ”の精神に疑問
「ハクナ・マタタ」とは「どうにかなるよ、心配すんな」という意味で、故郷を追放され絶望していたシンバを、ティモンとプンバァがなぐさめ、説いて聞かせる精神です。
子どもながらに、あまりこの精神が好きでなく、
「さすがに責任放棄しすぎでは…」
「出会ったばかりのはみだし者2人に言われて、そんなすんなり故郷の事を忘れちゃうの?」
と、疑問に思っていました。
「せめて1度ぐらい母やナラの心配をしてもいいのに、ヘラヘラ気楽に暮らし続けるシンバ」に、なんだか納得できなかったんですよね。
加えて、子供心にティモンとプンバァが、「全てを忘れられる楽園」に笑いながら誘い込む悪い大人のように見えて、ちょっと嫌悪感があったんです。
(もちろん、今は大好きなキャラですよ! )
3. 後半のスピード感について行けない
ハクナ・マタタから一転、ヘラヘラ気楽に暮らすシンバをナラが訪れ、速攻で愛が芽生え、突然ラフィキに導かれ、空から語り掛ける父の言葉に覚醒し、突如王の自覚を持って走って故郷へ帰る…
という怒涛の展開を迎える後半。
ここがもう、子供のころの筆者には到底ついて行けず、
「さっきまであんなにヘラヘラしてたのに、急に責任感じて故郷に戻るの? 」と、疑問まみれ。
怒涛のスピード感からの、ラストのタイトル「ドーン! 」が消化できず、モヤっと感が残ってメッセージ性が理解できなかったのか…
「気楽に行こうぜ」な中盤のゆるっと感からの、後半の怒涛の置いてけぼり感が、わかりやすく「面白い!」と思わせてくれなかった要因かな、と思います。
頂点を極めた“新時代の『ライオン・キング』”
ここまで「なんだかなー」な面ばかりつらつら書いてしまいましたが、今回の”超実写版”『ライオン・キング』を見て、全てがひっくり返りました。
とにかく素晴らしく、今はもう『ライオン・キング』という1つの作品が、大好きになってしまっています。
その理由と魅力を、5つのポイントで解説して行きましょう。
1. ここまでやる!? 半端ない再現度
地平線に浮かびあがるオレンジの太陽、プライドロックに集まる動物たち、そして誰もが知る、あの“サークル・オブ・ライフ”が流れる壮大なオープニング--
既にこのシーンだけで、あまりの完全再現ぶりに度肝を抜かれました。
細かなシーンの数々やセリフ、カメラワークなんかも、ほとんど相違ありません。
私たちが知っている『ライオン・キング』の何もかもが、そのままそっくり実写化されていて、アニメ版との違いを探すのが、もはや難しいぐらい!
実写映像化された事による、圧倒的な説得力
もちろんアニメ版ありきですし、そちらも素晴らしいのですが、全てが迫力の実写映像になった事で、より物語や動物たちの生き様に、説得力が増した感じ。
どの場面も「ここまでやる?! 」レベルで丁寧に完全実写化されていて、「実写になると、こんなに凄いんだ…」と、いちいち感銘を受けてしまうほど。
本作がただの実写ではない”超実写版”である理由が、既に冒頭の4分間で、目の前に突き付けられた感覚でした。
とにかく、「サークル・オブ・ライフ」のシーンだけでも必見!! 鳥肌モノです。
2. ブラッシュアップされ飛躍を遂げた『ライオン・キング』の音楽
アニメ版『ライオン・キング』は、サウンドトラックがディズニー史上最高のCD売上げを記録した作品でもあります。
本作では、エルトン・ジョンら豪華な音楽チームが再集結!
おなじみのミュージカルナンバー5曲が、馴染み深さも残しつつ、新たなアレンジで25年ぶりに蘇りました。
シンバ役のドナルド・グローヴァ―&ナラ役のビヨンセは、共にグラミー賞を受賞経歴を持ち音楽界の頂点を極める2人であり、豪華キャストで聴ける最新版の楽曲たちに、もう大興奮!
前述の「サークル・オブ・ライフ」もですが、劇場の大音量で聴くミュージカルナンバーたちは、もう毎曲スタンディングオベーションしたくなるほど素晴らしかったです。
注目は「Be Prepared(準備をしておけ)」
中でも、ハイエナたちと手を組み策略をめぐらすスカーが歌う「Be Prepared」は、アニメ版と全く違うアレンジで、本楽曲をこういう解釈で生まれ変わらせられるのか…!と、驚きました。
とにかくアレンジが格好良く、スカーが高らかに野望を歌い上げるアニメ版に対し、メロディーもほぼセリフに近いような感じ。
囁くようにハイエナたちをそそのかし、息をひそめて恐ろしい計画を練り上げている様がより明確に表れていて、凄みと迫力が段違いでした。
“ディズニーミュージックの最高峰”と賞されるアニメーション版の音楽を受け継ぎつつ、最高の人材によって、新たに生まれ変わったナンバーを、是非劇場の大音響で聴いて欲しいです。
3. より丁寧なストーリー描写で、「サークル・オブ・ライフ=命の環」感が明確に!
“自然界の命は大きな環で繋がっている”という、命あるものへの敬意に満ちた「サークル・オブ・ライフ(命の環)」の思想は、ライオン・キングの世界観を支える大きなテーマのひとつ。
本作では、「世界は皆で分かち合うものであり、それぞれが果たすべき役割がある。一人ひとりが独立しながらも、お互いに繋がっている。」という、新たなメッセージも込められています。
アニメ版に比べて、特にラフィキが「シンバが生きている! 」と気づくシーンや、幼少期は「展開早すぎ…」と思っていたラストシーンで、このテーマがより深く、随所で丁寧に描かれていました。
より浮き彫りになった不朽のテーマ
また、アニメ版では少し端折られていた、助けを求めるナラの決死の覚悟やシンバの葛藤、ハクナ・マタタの解釈がより丁寧に描かれた本作。
「サークル・オブ・ライフ」のテーマが、より浮き彫りになった事もあり、後半の展開やラストシーンに、かなり説得力が出たように感じました。
故郷へ戻って戦い、かつて父が立っていた場所=いわば玉座に恐る恐る足を踏み出し、ついに父と同じようにシンバが咆哮した瞬間の重みが、もう段違い。
幼少期は2回タイトルが出ることが疑問でしたが、1回目はムファサ、2回目は成長し名実ともに王となったシンバに向けての『ライオン・キング』なんだな、と言うのが、より明確に響く感じ。
プライドランドに生命が戻り、誕生の儀式に再び動物たちが集まり、最後にシンバの子が吠える。
命の環は繋がり、繰り返される、また巡って行く…それが「サークル・オブ・ライフ」だ!
と言うメッセージが、実写映像の説得力と丁寧な描写で、ストレートに心に響いた事に、感動を覚えました。
4. アニメでは描き切れなかった、実写ならではの迫力やリアルさ
アニメ版『ライオン・キング』は、美しいアニメ―ションで描かれるサバンナの壮大な景色、生き生きと動く動物たちが魅力です。
アニメでここまで出来るんだ! と言う、草木や背景、動物のリアルさは、他に類を見ません。
本作ではそれらが全て実写映像になるわけですが、もう「シンバ、すぐそこにいるじゃん…」と錯覚するほどのリアルさ。
動物たちの毛並み、筋肉の動き、ふとした表情や咆哮の迫力たるや!
実際はアニメのようにライオンが涙を流すこともない…なのにキャラクターの細かな心情まで伝わって来ます。
ラストの決闘シーンのド迫力ぶりは、思わず身がすくんでしまうほど。
フルCGだとは思えない、美しくリアルなシーンの数々はもう、ひとつの新たな"映像体験"でした。
目の前に広がる、臨場感あふれるサバンナの大地
美しい風景の数々も凄い。
シンバたちが暮らすプライドランドや、暗く怪しい象の墓場、ヌーが暴走する谷底、ティモンらが暮らす美しいジャングル…
アニメ版でおなじみの舞台が、想像を遥かに超える"超実写版"の映像となって、目の前に飛び込んできます。
草木の匂いや岩肌をなぞる風、砂ぼこりまで感じられるような立体感と壮大さに、驚くばかり。
でもちゃんとアニメ版の舞台として忠実に再現されていて、「あ、あの場所だ…! 」と一目でわかる様は、作り込みが本当に凄い。
シンバたちが暮らすサバンナの地が、どんなに広大なものなのか、実写版でまざまざと見せつけてくれました。
臨場感と没入感が半端ない映像の数々は、絶対に劇場で見るべきです!
5. 大人になって分かる、本当の『ライオン・キング』
冒頭で書いた通り、子供心には納得できない箇所が多く、正直そこまで好きな作品ではありませんでした。
ですが、"超実写版"『ライオン・キング』は、「実写映像による説得力」「丁寧な心情やストーリー描写」「新たな解釈や映像体験」で、昔感じていたモヤモヤを、すべて腑に落ちさせてくれたんです。
大人になって気づく、父ムファサの大きな愛
シンバを襲うハイエナをムファサが助けた後、シンバが「父さんには怖い物なんてないんでしょ? 」と、無邪気に問いかけます。
対して「今日は人生で1番怖かった。お前を失うかもしれないと思ったから。」と、答えるムファサ。
この台詞の凄さは、大人になってみないとわからないなと、強く思いました。
その後のヌーの暴走シーンも、親目線だと無我夢中さに心を打たれて、もう…
親にとって愛する子どもは、自分の全てを投げ打ってでも守るべき存在なんですよね。
自分が子どもの頃にはわからなかった感情を、リアルな描写で気づかせてくれました。
必要だった"ハクナ・マタタ"の精神
全てを忘れて気楽に暮らすシンバに、疑問を抱いていた幼少期。
これも大人になって観てみると、シンバのメンタルケアには必要な精神なのかも、と思えました。
突如起こったあまりにも辛い出来事と、対する自責の念が重すぎて、何もかも忘れ去らないと自分を保てなかったのかもしれない。
父の死を毎晩思い出したり、責任に苛まれ続けたり、時々故郷に帰って、遠くから苦しむ母やナラの姿を見たり…なんて育ち方をしたら、きっと幼いシンバの心は壊れてしまうと思う。
少々強引な展開だと思ってたけど、そのぐらいしないと、あの辛い現実をシンバも観客も消化できないのかもな、と思います。
例えば、仕事で人間関係がキツかったら、無理して壊れるより、休んだり環境を変えても良いし、自分の幸せは自分で選べるもの。
時には辛いことを忘れて、新しい場所で新しい人生を歩むのも、悪くはないんじゃないかな。
これまでに色んな作品を見て来て学んだ事や、自分が少し大人な考えが出来るようになった事で、そう思えるようになりました。
これは実写版の本作で、より深く丁寧に、キャラクターの心情を描いてくれていたおかげだと思います。
完全実写化ゆえにストーリーは全てわかっているはずなのに、こんなにも新たな解釈や感想を持たせてくれた"超実写版"『ライオン・キング』。
目の前いっぱいに広がる迫力の映像や、生命溢れるシンバたちの活躍を、ぜひ劇場で体感してみて下さい!
『ライオン・キング』2019年8月9日(金)全国公開