「35歳からの妊活」をテーマに、さまざまな角度から妊活最前線の情報をお届けするこの連載。今回は妊活や不妊治療に取り組む夫婦をサポートする事業を展開する吉川雄司さんが、妊活のハードルをグッと下げてくれるテックの活用アイデアを解説。手軽に自分の体を知ることができる便利ツールが、続々登場しています。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/west)

■手軽な検査キットで、自宅で卵巣年齢をチェック!

35歳を過ぎると、妊娠率はゆるやかに下降線をたどりはじめます。妊娠できるタイムリミットを考えるなら、35歳からの妊活は回り道をしないことが大切! 効率よく妊活を進めるためにまず取り組みたいのが、自分の体を知ることです。妊娠をさまたげるトラブルがないかをスクリーニング検査することで、妊活の方針が立てやすくなります。

ただ、不調もないのに病院に行く、というのは、なかなかハードルが高いものでもあります。

「生理も順調だし、普通に夫婦生活を持てば大丈夫じゃない?」
「仕事が忙しくて、病院に行く時間がとれないし……」

こんなモヤモヤを抱えている人も少なくないでしょう。

そこで吉川さんがおすすめするのが、この夏にお目見えしたばかりの新しい検査キット「F check」です。

■約10日で結果が自宅に届く

「『F check』は、自宅でアンチミューラリアンホルモン(AMH)を検査できるキットです。AMHは、卵巣内に卵子の元になる原子卵胞がどのくらい残っているかの目安となる数値。もし年齢別の平均値と比較して自身のAMHの数値が低ければ、卵子の残数が少ない可能性があり、妊活や不妊治療ができる期間が限られてくることを表します。また、数値が高く、そして月経不順も同時に起きていると不妊の原因となる疾患である多嚢胞性卵巣症候群の疑いがあります。いずれの場合も、不妊治療も視野にいれながら、より詳しい検査をしたほうがいい。急いで妊活すべきかどうかを知るために、大きな目安となる検査項目です」

検査はいたって簡単! 専用ツールを使って、自宅で少量の血液を採決し、検査センターに送るだけ。10日ほどで検査は完了し、結果はスマホやパソコンで確認することができます。

■早い段階で自分のAMH値を知ったほうがいい

これまではAMHの検査は、産婦人科や不妊治療専門クリニックを受診しなければ受けられませんでした。

「不妊治療をするかどうか決めかねている人にとっては、病院の敷居はまだまだ高いと感じます。もし不妊症だと診断されたらどうしよう、という精神的な不安もあるでしょうし、金銭的なハードルもあります。不妊治療はほとんど自己負担なので、検査だけでも数万円がかかります。治療が必要だとわかったとき、高額な費用をかける覚悟があるのか、今の段階ではわからない、という人もいるでしょう。また、地方では、不妊治療クリニックの数がまだ少ない現状があります。病院まで出かける時間的な負担がネックになっている方も少なくないと思います」

『F check』の販売価格は1万9880円(税別)。それに対して、クリニックでAMHの検査を受ける場合の費用は、だいたい5000〜10000円ほどです。ただ、価格だけで単純に比較はできない、と吉川さんは話します。

「検査を受けるために半休をとらなければならなかったり、人気のクリニックだと待ち時間が長いことも。そうしたことがハードルに感じる人にとっては、自宅で自分の好きなタイミングで手軽にできるキットは利便性の高いものだといえるでしょう。『F check』は、検査後に専門カウンセラーとのオンラインでの相談ができる、というサービスも開始される予定と聞いています。クリニックでの検査でもいいし、まずは検査キットを使うのでもいい。何より大切なのは、できるだけ早い段階で自分の体に目を向け、ライフプランの目安となる数値を知ることだと思います」

■男性には、自宅でできる精子チェックを

「女性がするもの」というイメージが持たれやすい妊活ですが、当然ながら、妊娠は女性ひとりではできません。不妊に悩む夫婦の約半数は、男性にも原因がある、と言われています。

「妊活をスタートするときには、ぜひ男性もいっしょに検査を受けることをおすすめします。不妊治療専門クリニックに行くのは抵抗があるという男性も多いでしょうが、男性のブライダルチェックは泌尿器科で受けることができますよ。また、病院に行くこと自体が面倒、恥ずかしい、という方には、自宅でできる精液検査のキットもあります。たとえば、『Seem』というアプリでは、専用キットとスマホのアプリで、手軽に精子の運動率や濃度をチェックすることができます」

■飲みすぎた翌日は精子が激減することも

精子の健康状態は、日によって、体調によっても変動します。睡眠不足が続いたり、飲み過ぎたりした翌日チェックすると、精子の数が激減していたり、運動率が極端に悪くなっていることも。

「普段、男性はティッシュのなかか、あるいはコンドームのなかに入っている精子しか見たことがない。それが、理科の実験のように観察できるとなると、やはり興味が湧いてきます。妊活について調べたり、生活習慣を見直したりするきっかけにもなると思います」

キットで調べられる数値だけでは、妊娠力を総合的に判断することは難しいもの。AMHも卵子の残数がわかるだけで、現時点での妊娠できる可能性を示す数値ではありません。また、精液検査も、病院で調べればさらに詳しく前進運動率や奇形率なども測ることができます。

ただ、妊活を始めるとき、また将来の妊娠を考えるとき、目安となる数値を知ることは、計画を立てるときの足がかりとなるはず。とくに35歳をすぎてからの妊活ならば、やみくもに手探りで進むのではなく、きちんと自分の状況に合わせた計画を立てることが大切。かしこい妊活のために、テックを活用してみるのも一案といえそうです。

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吉川 雄司(よしかわ・ゆうじ)
ヘルスアンドライツ 社長
妊活や不妊治療に取り組む夫婦をサポートする事業を展開。クラウドファンディング「妊活大事典プロジェクト」発起人。twitterアカウント:@UG_0117ブログ:https://ameblo.jp/yy-0117/
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(ヘルスアンドライツ 社長 吉川 雄司 構成=浦上藍子 写真=iStock.com)