“深い睡眠”に変える、最も簡単な方法とは

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連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。

 寝苦しい夜に、忙しい仕事も重なり、「寝ても疲れが抜けない」と感じるビジネスパーソンは少なくない。睡眠不足は体にとって、どんな危険を引き起こすのか。中野氏が解説し、最も大切な“深い睡眠”に変える方法について、優しく指南してくれた。

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「布団に入っても仕事のことが頭から離れなくて寝つきが悪い。寝ても何となく疲れが抜けない気がする」。多忙なビジネスパーソンから、こんな相談を受けることは少なくありません。「筋肉を鍛えて体力をつけて元気になりたい」と言うのですが、実は筋肉を鍛えるよりも睡眠を改善することがとても大切です。

 睡眠には肉体的疲労を取り除くだけでなく、頭の中をスッキリさせる力があります。不要な情報を整理し、必要な情報を圧縮する。パソコン作業に例えるとデータを圧縮する作業が、睡眠中に行われています。

 日中、忙しく働き、膨大な情報が頭に入ってくれば、当然、脳を整理するにも時間がかかります。それなのに、寝たくても寝付けなかったり、睡眠時間が削られたりすれば、脳の情報処理が追い付かず、新しい情報が入らなくなります。だから睡眠が足りない日の翌日は、頭が回らないし、集中力も低下します。

 この時、私たちは「脳の情報処理の遅れているなあ」とは感じません。人は睡眠不足が続くと、本当は肉体的には疲れていないのに、「体の疲れが抜けない」と感じるのです。

 また、睡眠不足は集中力の低下や記憶力・やる気を減退させるだけではありません。睡眠が取れない、情報処理が追いつかないというストレスは、他の欲求、例えば食べることに走るなどで発散します。

 実は睡眠不足はホルモン分泌や自律神経にも影響を及ぼし、食欲を高めるホルモンの分泌を促します。どうでしょう。みなさんも、身に覚えがありませんか? 寝ていない、運動をする気にもならない、でも食欲だけは旺盛で、ついつい食べることに走ってしまう……。気づいたらパンツがきつくなっていた、お腹ぽっこり体型になっていた、というわけです。

有効なのは自律神経の調整、中野氏が推奨する「一番簡単な方法」は?

 疲れを取るのも、食欲をコントロールするのも、最も大切なのが、質のいい睡眠、つまり深い睡眠です。そして、そのために自分でできることの一つが、体の緊張を取り除くことです。

 暑さなどで寝苦しい、仕事のことが頭から離れずに寝付けない、あるいは寝る直前まで持ち帰った仕事をしている……という人は、脳が一種の興奮状態になっています。この場合、有効なのは自律神経の調整。“リラックスの神経”である副交感神経を優位にして、筋肉や脳を緊張状態から弛緩した状態へと持っていきます。

 一番簡単な方法は、自分が心地良く感じる温度の風呂に浸かることです。水の浮力も手伝い、心身ともに緊張から解き放たれます。また、寝る直前に、ベッドの上でできる簡単なストレッチを行うのも効果的です。種目は自分が気持ちいいと感じるものであれば、何でもOK。この時、痛みを感じるまで伸ばすのではなく、「伸びていることが気持ちいい」と感じる範囲で伸ばすのがコツ。夜のストレッチは、副交感神経に優位にするだけでなく、体に意識が向くため、頭が切り替わり、仕事のことを忘れられるという効果もあります。

 逆に、効果があるようで効かないのがアルコール。「眠れないからアルコールを飲んで寝よう!」と酔っぱらうまで飲むと、入眠はしやすくなりますが、睡眠は浅くなり、途中で目が覚めることも。また、翌日、体力も回復する感覚のある人もいますが、実はアルコールによって脳が騙されているだけ。実際には疲労は抜けていないので、根本的な睡眠不足の解決にはなりませんよ。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。クルム伊達公子選手の現役復帰にも貢献した。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。主な著書に『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。