ソニーがパソコンのペルチェ素子で体を冷やす? 夏は涼しく、冬は暖かい、スマホで温度調整できる「REON POCKET」

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今年も猛暑による熱中症が深刻化している。
近年の日本は、毎年たくさんの人が熱中症による、めまいや立ちくらみといった症状に悩まされている。熱中症は、暑さのために体の温度調整がうまくできなくなるために起こり、命に関わる事態になることも多い。気温の高い猛暑日だけでなく、梅雨などの湿度が高い日でも熱中症になるので厄介だ。

熱中症の予防としては、冷房が効いた涼しい室内や喫茶店などの店舗で休み、水分を十分にとるなどして、体温を下げることが推奨されている。

しかし仕事に追われるビジネスパーソンは、そうそう仕事中に休むわけにはいかない。

ソニーの「REON POCKET(レオンポケット)」は、そうした人に最適な熱中症対策グッズだ。


■スマホで温度調整できる、ウェアラブル冷温感デバイス

REON POCKETは、インナーウェアに装着する冷温両対応のウェアラブルデバイス


REON POCKETは、衣服に装着し、スマホで温度調整ができるウェアラブル冷温感デバイスである。名称は、冷温(レイオン)に由来する。

REON POCKETでは、温度調整にペルチェ素子が使用されている。
ペルチェ素子とは、パソコンなどのCPUを冷やすときにも使われている電子パーツで、ペルチェ効果という物理現象を利用して温度を下げることができる。
ペルチェ効果を簡単に説明すると、2つの異なる金属に直流電流を流すと、片方が冷たくなり、もう片方が温かくなるという現象だ。

REON POCKETは、このペルチェ効果を使って「冷」と「温」の温度調節をしている。


REON POCKETの裏側に温度が変化する温度調整のパーツがある


REON POCKETは、専用インナーウェアの背中側の首元にあるポケットに入れて使用する。
首元に装着するのは、温度を感じる部分(感受性)が首元に多くあり、装着しやすく、重さも気にならないからだ。

専用インナーウェアは、東レインターナショナルが提供している。
素材は吸水・速乾性を持つポリエステルの極細繊維で、着心地に配慮して柔らかな風合いに仕上げられている。サイズは、S/M/Lの3種類が用意されている。


REON POCKETは、背中に装着する


REON POCKETの効果だが、体表面の温度を36度から23度まで下げてくれるという。


REON POCKETを使えば、 体温表面温度を36度から23度まで下げてくれる(画像提供:ソニー)



■数秒でヒンヤリを感じるREON POCKET
REON POCKETの使い方は、実に簡単だ。
専用インナーウェアのポケットにREON POCKETを入れ、専用スマートフォンアプリで温度を調整するだけだ。

スマートフォンアプリの温度調節には、オートモードとマニュアルモードが用意されている。
オートモードは、REON PCKETが利用者の体温、行動(静止/歩き)をセンサーで感知して、適切な温度を自動で設定する。
マニュアルモードは、手動で5段階の中から温度を選択する。


REON POCKETの専用アプリで温度調整ができる


REON POCKETを試作機で実際に体験してみた。
専用スマートフォンアプリを使いREON POCKETの設定温度を下げると、数秒でヒンヤリとした冷たさを指で感じることができた。

REON POCKETが下げられる温度の下限は、20度位までだそうだ。
人の表面温度をセンサーでモニタリングしながら、20度以下に冷やさないように温度を調節してくれるという。

また温度の上限は40度位までで、高温やけど、低温やけどが発生しないようにしている。
低温やけどに対しては、使用時間に合わせて徐々に温度を下げる仕様になっているとのこと。

REON POCKETは、温度調節ができないこれまでの保冷剤や使い捨てカイロと比べて、センサーや手動での細かい温度調節が可能な点で、より進歩した製品と言えるだろう。


■アパレル企業と横浜国立大学の先生の助言から製品化へ
ソニーは2016年8月、腕時計「FES Watch U(フェスウォッチ ユー)」のクラウドファンディングを実施した。「FES Watch」は、文字盤とベルトに電子ペーパーを採用しており、ユーザーがその日のファッションに合わせて、腕時計のデザインを自由に変えられるというものだ。

「FES Watch」では、テクノロジーをファッションの表現や楽しみ方に使うことがテーマであり、その業務をおこなっているときに、色々なアパレル企業との接点が生まれた。そのときに出会ったアパレル企業から「ソニーのテクノロジーを衣服の快適性や機能性に使えないか」との話が出てきたという。そうした方向性に可能性を感じ、そこから新製品の模索がはじまった。

プロジェクトメンバーの中に、たまたまカメラの設計に携わった人がおり、その人の発案がREON POCKETの開発へと繋がった。カメラでは、高画質を実現するために、放熱技術は必要不可欠となっている。その技術を画質ではなく、人を快適にするために使おうという発想から、ペルチェ素子を使って人を快適にするアイデアが生まれた。ただし、ペルチェ素子がカメラに使われていたわけではない。


REON POCKETの中が見える試作機


REON POCKETを、人の体のどこに装着すればよいのか?

色々な論文を探して、研究データを見ていた際に「人は首元に温度を感じる感じる部分(感受性)が多くある」という論文を見つけたのだとか。

実際に首元で試すと、快適に感じられたそう。一方、脇や頸動脈では冷たすぎたそうで、冷感と快適感とは違うものであることに気づかされたのだという。
あとは、付け心地だ。首元への装着だと、REON POCKETは付けやすく、重さも含めて気にならないという。

製品化にあたっては、
・どういった温度制御にすべきか
・どこの部位を冷却することが快適さに繋がるか
などといった点について、横浜国立大学運動生理学の先生にも助言をもらいながら開発を進めてきたという。


REON POCKETは現在、ソニーのクラウドファンディング「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」で支援者を募集し、1週間で目標額に達している。なお、REON POCKETのクラウドファンディングは、2019年8月19日に終了している。
REON POCKETの製品版は、2020年3月以降に出荷する予定。


関連リンク
「REON POCKET」


ITライフハック 関口哲司