アンカーで起用された東京ヴェルディMF佐藤優平

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[8.18 J2第28節 東京V 0-0 山形 味スタ]

 東京ヴェルディの永井秀樹監督はJ2第28節の山形戦、攻守を司るアンカーのポジションに攻撃的なポジションを持ち場とするMF佐藤優平を起用していた。「360度の視野を確保できるところがいいし、ボールがきちんと止まる」(永井監督)。そうした指揮官の想定どおり、28歳のテクニシャンは本職と遜色ないプレーを繰り出し続けた。

 就任して6試合、永井監督がピッチに送り出すメンバーは毎試合のように入れ替わっている。左右のウイングにはそれぞれFW小池純輝とFW河野広貴を配置し、左右のウイングバックにそれぞれDF奈良輪雄太とDF山本理仁。このような組み合わせはいずれも今季初めてだ。しかし、それより驚きを与えたのが佐藤のアンカー起用だった。

 試合後、公式会見の場で意図を問うと「初めて使うことでうちのコーチングスタッフも『えっ…』ってなっていたが、自分の中では違和感がない」という返答の後、冒頭の理由が語られた。たしかにユースを指揮していた際にはMF藤本寛也、MF森田晃樹をアンカーで起用する場面もあり、そういった意味では一貫していると言える。

 もっとも、結果が求められるプロの世界において、守備的な選手が一人でも減るのは大きなリスクにもなる。しかしながら、この日は無失点に終わったことで問題なし。相手がブロックを敷いてきたため、パスコースは限定的だったが、「前を向いた瞬間にサイドを使おうと思っていた」(佐藤)という高精度のサイドチェンジも見せていた。

「どのポジションでも中盤の選手ならできないといけないし、ある程度プレーモデルはミーティングでも示してくれるので、アンカーがどういうプレーをするのか、シャドーがどういうプレーをするのかは分かっているのであまり違和感はない」。指揮官と口を揃えるかのように、佐藤も冷静にそう言ってのけた。

 とはいえ、最後まで得点を奪えなかったのもたしか。むしろ求められるのは攻撃面の向上だ。永井監督は「スペースの支配がまだまだ」と相手の布陣を踏まえた空間管理に課題を指摘していたが、低い位置に立つ場面が目立った佐藤も「真ん中にボールが入った時、もっと(スペースに)潜る作業ができればチームとしても良かった」と反省を語った。

 その他、逆足選手を並べたサイドバックは「相手が5バックでハメてくる時、ワンタッチのフリックで早く渡せるように」、両ウイングは「理解度が高い選手というのが基準の一つ」と起用基準を明かした指揮官。今後も選手の個性をピッチ上に落とし込むメンバー選考は“永井ヴェルディ”の一つの注目点となりそうだ。

(取材・文 竹内達也)