北海道コンサドーレ札幌
FW鈴木武蔵インタビュー(後編)

 今年3月、北海道コンサドーレ札幌のFW鈴木武蔵が、森保一監督が指揮を執る日本代表に初めて招集された。

 これまで、2011年U−17W杯、2016年リオデジャネイロ五輪と、日の丸をつけて戦ってきた。そして、ついにA代表入り。およそ2年半ぶりに日の丸のユニホームに袖を通した鈴木は、「最初はびっくりした」と言う。

「『ワンチャンあるかな』って思っていたけど、『他にもFWはいるしなぁ……』とも思っていたんで、(代表入りは)そこまでは期待していなかった」

――初めての日本代表の”空気”はどんな感じでしたか。

「U−17代表の時から一緒にやっていたメンバーがいたんでよかった。誰も知らなかったら、威圧されて『緊張するなぁ〜』って思っていたんですよ。人見知りなんで(笑)。だから、合流した時、リオ五輪組のみんなに『絶対に一緒に飯行ってよ』って言っていました」

――五輪代表との違いを感じましたか。

「注目度がぜんぜん違う。代表で移動するとき、別に話しかけられるわけじゃないけど、警備員がすごく並んでいてびっくりした。新幹線で移動した時も、駅のホームにめちゃくちゃ人があふれていて、『代表って、こんなにすごいの』って感じ。(所属)チームの移動では(行く先々で)人がごった返すことなんてないんで、『すごい、(代表は)こんなに違うんだ』って思いました」

――日本代表の選手から、刺激を受けることはありましたか。

「小林祐希選手とは、話をしました。オランダ(ヘーレンフェーン)でプレーしていたので、『英語とか、(言葉の問題は)どうですか?』って聞いたんです。そうしたら、『(こちらから)どんどん話をしないとダメだよ』と言われました。小林選手はすごくコミュニケーション能力が高くて、性格が海外向き。(そんな小林と接して)『自分も人見知りしている場合じゃないな』『いろんな人と話ができるようにやっていかないといけないな』と思いました」

 3月に招集された日本代表には、中島翔哉、南野拓実、室屋成といったリオ五輪組がいて、彼らはすでに代表メンバーに定着している。2018年ロシアW杯では、リオ五輪組が主力に加わることはなかったが、次の2022年カタールW杯では、主軸を務めるべき選手たちである。

――今後、日本代表ではリオ五輪組がチームの主力になっていく、という意識は強く持っていますよね。

「そうですね。リオ五輪が終わった時、みんなで『代表に入っていかなければいけない』という話をしたんです。自分は、その時はまだまだだったので、代表に入るのは『夢のまた夢だな』と思っていましたけど、ようやくって感じですね。

 どの世代も、五輪を経て、代表の主力になってW杯へ、という流れになっているので、自分もそういう意識が強い。これからは、リオ五輪組がもっとチームの中心になっていかなければいけないと思っています」

――最近は東京五輪世代、久保建英選手をはじめ、若い選手の活躍が目立っています。そうした状況をどう見ていますか。

「(Jリーグに限らず)代表でも、活躍する選手の年齢が低くなっていますけど、それはすごくいいことだと思います。若い時から長く代表にいることで、”代表の感覚”というのがより培われていくので、そういう選手がたくさんいたら、日本代表がさらに強くなっていくと思います」

 森保監督のサッカーのベースは、札幌で指揮を執るミハイロ・ペトロヴィッチ監督のスタイルにある。森保監督は、ペトロヴィッチ監督の攻撃的なサッカーに、守備的なエッセンスを加えて、同スタイルの完成度を高め、サンフレッチェ広島を率いていた時に3度のリーグ優勝を達成。強いチーム作りを実現した。

 そういう意味では、初の代表入りにも、鈴木は戦術的にはそれほど混乱することなく、スムーズに溶け込むことができたのではないだろうか。

「(3−5−2の)札幌と(4−4−2の)代表ではシステムが違うけれど、確かに方向性はミシャさん(ペトロヴィッチ監督)と似ていると思います。練習メニューも同じような感じですしね。

 代表では、できるだけペナルティーエリア近くで動いてほしいとか、ポストワークとか求められましたけど、やれている感はありました。(先発出場した)コロンビア戦では、ここに(パスが)出てくれば決定機を迎えられるというシーンがあったし、ヘディングシュートでも惜しい場面があった。ただ、まだ他の選手といろいろすり合わせていかないといけないし、もっと話をして要求していかないといけないですね」

――森保監督から、何か声をかけられましたか。

「『ミシャさんのところでやっていたら間違いないから、そこでしっかりとやってほしい』と言われました。森保監督は、ミシャさんの考えというか、ミシャさんのサッカーを尊重されているんだなって思いましたね」


日本代表への思いを語る鈴木武蔵

 9月からは、いよいよカタールW杯へ向けての戦いが始まる。アジア2次予選の相手は、キルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴル。FIFAランキングが低い格下の相手ばかりだが、そうした戦いのなかでも、タフな戦いが予想される最終予選に向けて、チームの底上げ作業が求められる。

 鈴木はその戦力として、初めてW杯予選に臨む可能性が高い。リオ五輪のアジア予選はセントラル方式だったため、ホーム&アウェーでの戦いは初めての経験だ。

――リオ五輪のアジア予選はセントラル方式で実施され、とくに最終予選はハードスケジュールのなか、厳しい相手と対戦し、大変だったと思います。

「ほんと、そう。もう、めっちゃ大変でした。だから、東京五輪組はうらやましいですよ。予選がないっていうのは」

――いよいよカタールW杯予選が始まります。過去のW杯予選は見ていましたか。

「前回の最終予選では、初戦のUAE戦で敗れたり、タイ相手に苦戦したりしていたのをよく覚えています。見ていて思ったのは、アジアのレベルが上がっているな、ということです。日本に対しては、しっかり引いて、ゴール前をガチガチに固めて必死に守ってくるチームが多かったんですけど、そうなると簡単に点が入らない。次第にスタジアムの雰囲気も変わってきて、(戦っている選手たちは)焦りが出てくるんだろうな、というのを見ていて感じました。

 今回の予選も、そういう展開になるんじゃないかなと思います。そこで、自分たちが焦(じ)れてしまうとうまくいかないので、相手の布陣に穴ができるまで、ゆっくりとボールを回していく。そういう心構えが大事かな、と。見ている方々は、格下相手なので『勝つのは簡単』と思うかもしれないですけど、サッカーは何が起こるかわからない。相手が引いても、いかに慌てずにやれるか。それは、札幌でも、代表でも、同じですね」

――初めて挑むことになりそうなW杯予選への抱負を聞かせてください。

「楽しみでしかないですね。1試合、1試合、勝利にこだわって戦っていく。カタールW杯は、年齢的に一番いい時期で迎えられるし、もしかしたら(W杯に出場できる)最後の大会になるかもしれないですから、そこで出場して、点を取りたい。

 ただその前に、予選に勝つことが大事。チーム内でのレギュラー争いもあります。FWには大迫(勇也)さんがいますからね。僕は、大迫さんを追い越すことはできないと思うので、大迫さんみたいな選手になるのではなく、自分のオリジナリティーを出して戦うしかないと思っています。

 あとは、森保監督が判断することですから。大迫選手がいい、と監督が判断をすれば、それはそれで仕方がありません。プレースタイルの違いによる差だと思いますから」

 カタールW杯までは、2次予選、最終予選と長い戦いが続く。そのなかでは当然、選手の入れ替わりがあるが、最後まで必要とされた選手は、そのまま主力としてW杯に行きつくことができる。その”グループ”に入ることができれば、鈴木が「最大の目標」とするW杯も見えてくる。

 そのために、今はペトロヴィッチ監督のもとで、ストライカーとしての自分磨きを続けている。実際、確固たる成長を見せており、だからこそ、日本代表への道も開けた。そういう意味では、リオ五輪から着実にキャリアアップしているが、ここまで、自分の思い描いてきたプランどおりに来ているのだろうか。

「今、25歳ですけど、昔(の自分のなかで)描いていたものとはかなり違いますね(苦笑)。20歳前後で海外に行きたかったですから。でも、その夢はまだ捨てていません。海外で、言葉がわからない厳しい環境のなかでも点を取っていく――修行に近い感じの海外移籍をして、成功したい。できれば、W杯に行く前に海外で揉(も)まれて、自分に足りないものを補って、万能型のFWに本当になりたいです」

 世界で戦う準備は整いつつあるが、今の鈴木には結果を残すことも必要だ。目標のシーズン15得点をマークし、チームをAFCチャンピオンズリーグ出場圏内に導くこと。それが実現できれば、カタールW杯前に、海外行きのチケットを獲得することも、決して難しくはないだろう。

 そうして、鈴木武蔵という”脅威”はさらに増大していく。それが、鈴木のためにも、もちろん日本サッカーのためにもなる。

(おわり)