提供:週刊実話

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配給/ワーナー 丸の内ピカデリーほかにて全国公開
監督/矢口史靖
出演/三吉彩花、やしろ優、chay、三浦貴大、宝田明ほか

 60年代には『君も出世ができる』(64年)などがあったが、日本映画でなかなか成功例の少ないのが和製ミュージカル。まあ、映画ファンの中には「どうして突然歌って踊るのか? 外人さんならともかく、日本人にはどうもなじめんなぁ」という素朴な疑問をお持ちの方は少なくない。かく言うボクも得意じゃない。そんな“疑問”に応えるかのようなこの新作は、見事なミュージカル・コメディーに仕上がった。そして、三吉彩花という“スター誕生”でもある。

 ミュージカルが大の苦手なOL・静香(三吉彩花)は、ある日、ウサンくさそうな催眠術士・マーチン上田(宝田明)に術をかけられ、音楽を聴くと、ところ構わず歌い踊り出すハタ迷惑な体質になってしまう。こうして、この迷惑極まりない催眠術を解くため、静香は日本中を駆け巡るハメになる…。

 これまで、『ウォーター・ボーイズ』(01年)、『スウィング・ガール』(04年)など音楽性豊かなエンタテインメント精神あふれる映画を作ってきた才人・矢口史靖監督もまた、なぜミュージカルは歌って踊るのか? という素朴な疑問を考えた。その必然性を追求したら、ヒロインは“催眠術をかけられたんだから、憑かれたように歌って踊らざるを得ないでしょ”にすりゃあイイ。とね。

 もう、会議室で、オフィスで、レストランで、ヒロイン・三吉クンは、ダイナミックに踊りまくり、狂ったように歌いまくり、ついでに大ドジ、大ボケもかますサマは、ほとんどアクション映画のよう。彼女は猛特訓の末、スタントなしでこれをこなす姿がアリアリ。何よりタッパがあって、大画面に映える。ルックスも井森美幸(古いか?)とかに似ていて、一目惚れしたね。大跳躍シーンでは、思わず“スカートの奥”が何とか見えんか、と首をヒネってしまったほど(笑)。

 こうして、仕事もお金も評判も失った彼女が、あの怪しげな催眠術の行方を追って何千里となる後半は、まるでロード・ムービーのような展開。ものまね女芸人のやしろ優や歌手のchayが扮する、ヒロインと同類の迷走女性たちとの“トリオ漫才”のようなドタバタ行脚が笑える。そして騒動の元凶となる催眠術師を演じた“レジェンド”宝田明がさすがに絶品の領域。往年のミュージカル・スターでもある宝田氏が、今年85歳にして、超久々に銀幕で歌って踊るシーンは感動もの。見終わると“ミュージカルは苦手”の呪縛がアレヨアレヨと解けて、踊り出す? 歌い出す? かも知れない。
 《映画評論家・秋本鉄次》