平成元年、月島の小さな写真館が店を閉じようとしていた。主の奥田凛子(岸惠子)は親友の日下部綾(渡辺美佐子)が亡くなり、不動産屋に立ち退きを迫られていたから閉店を決めた。凛子と綾は昭和19年、フィリピンのルソン島での壮絶な敗走から、命からがら帰国した大和撫子と比国とのハーフの2人だった。2人には死の行軍中、瀕死の兵士を殺してしまった秘密があった。

19年の場面はシリアスなジャングルの情景にリアリティがあり、凛子(清原果耶)綾(山口まゆ)ともに素朴な戦時下の若い女性を好演しているが、平成の場面での凛子は、80代半ばの岸惠子、ちょっと苦しかった。しかし、突然訪れてきて、傍若無人に凛子にからむ田宮美咲(安藤サクラ)が面白かった。現像機器のメンテ問屋・田辺蓮司(伊東四朗)の娘で、父親とは長い間疎遠、田宮が凛子に懸想しているのを誤解してツンツンするが、次第にトーンダウン。

「昭和も遠くなりにけり」の今、世界中が一瞬でSNSにつながれる時代の青年たちに、70年以上も前の大戦下を想像しろといっても無理である。大体近頃の若者たちには、大戦時の敵がアメリカだと知らない大学生もいるのだ。過酷なルソン島での女の子たちの現在が、写真館の老女として繋がっているこのドラマの意図は、成功したかどうかは別にして、評価してやりたい。この凛子のような年代の女性が健在なうちに、もっと同様のドラマが作られることを望む。(放送2019年8月8日22時〜)

(黄蘭)