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世界最高のGTカー

スタイリッシュかつラグジュアリー、エレガントで素晴らしい。われわれのことではない。世界最高のGTカーを2台用意した。改良型のアストン マーティンDB11 AMRと呼ばれるモデルだ。

そして新型のベントレー・コンチネンタルGT。この両車は非常に似通った設計思想を持つようだ。両社が考える最高のGTカーであるはず。それはすなわち速くラグジュアリーで魅惑的でなければならない。そこで今回時間を割き、どちらがより良いか比較してみよう。

まずはベントレーでロードテストを始めよう。
「わたしはこのクルマの大ファンなんだけど、運転しての感想はどう?」

「実は背中が悪いんだけど、このクルマは背中が痛くならないね」

「快適だということだね」

「そう快適性は抜群だ。運転もしやすいし、シートポジションも完璧。すべてが自然だね。これがランボルギーニなら腰を壊してしまうだろうね。降りるのすら大変だ。すべてが自然な体勢で、脚も伸ばせるし腕も伸ばせる。頭も窮屈じゃない。とても居心地が良いね」

「エンジンは6LのW12気筒で最高出力635ps最大トルクは91.8kg-mだ。カチカチ音がするのが聞こえるかな」

「吸気音でも排気音でもないね。フューエル・インジェクターかな?」

「踏めば速いし音も良いね。すごいパワーだ」

「ひとつ面白いのは、とても複雑なエンジンだよね。街乗りの低速低回転ではポート噴射で気筒休止機構も持ち、高負荷時には直噴になる」

「このふたつの組み合わせもだけど、クルマ全体が非常に複雑だね」

「DCTを搭載して、後輪駆動ベースの4WDでLSDも搭載。今回ベントレーはシャシーの運動性能もアピールしているね。たしか100%近くのパワーを後輪に配分できるとか」

「そうそう。最大90%とかだったかな」

超長距離移動も快適

「単なるGTを超えたクルマだね。今朝の時点で燃料は満タンで、航続距離は830kmと表示されてたよ。500km弱で給油するのは面倒だからね」

「そんな長距離走らないって思うかもしれないけど、仮に一回の走行距離は短いとしても、給油しに行くのが週に1回で済めば3日に1度よりはだいぶ楽だよね」

ベントレー・コンチネンタルGT

「わたしは飛行機が嫌いだから、このクルマで移動したいね。短距離フライトの代わりにこのクルマを使う。バカバカしいかもしれないけど、エディンバラまで往復するなら絶対鉄道よりクルマだね。ミュンヘンやフランクフルトに行くにも電車じゃなくクルマに乗りたい」

「満タンで830kmというのは十分な航続距離だ。わたしの長距離移動では大きな差がでるね。単なるGTを超えたクルマだ。インテリアはどう思う?美しいよね」

「とても良いね。工場を見に行ったんだけど、ステアリングの革を縫ったりしていたよ。非常に美しく仕上がっているね。あとでアストンのそれも確認しよう」

「ステアリングのスティッチひとつを取っても彼らには専門の部署があるんだ。そこのひとたちは家からフォークを持ってきてリムのエッジに刺して使うんだ。こんな感じでね。次から次へと移動しながら。だから持ってきたフォークによってスティッチの間隔が決まるんだ」

「つまり違うフォークを持ってきたら、スティッチも変わる。これが本当のラグジュアリーカーだね。ラグジュアリーさについてひとと話すとして、メルセデスなどとは比較できない。違うクラスのクルマだからね」

「高級かつ320km/hで走れるGTカーだけどちょっと重すぎるね。2245kgはディスカバリーに匹敵する重さだ。この大きさの割にとても良く走るね」

「日産GTRを思い出すよ。あのクルマも車重を運動性能につなげているね。確かに重いボディがこの走りを支えているのかもしれないライドコントロールは素晴らしいね」

落ち着いて走れる足回り

「高速道路を走ってきたんだけど、ひとつ気付いたのはタイヤノイズが大きめだ。でもボディコントロールは本当に良い。これだけ重いクルマだとスプリングが底付きしがちだよね。だけど質量のおかげもあって段差の衝撃が減衰される」

「フワフワ感が残る場合もあるけれど、今はアダプティブサスはベントレーモードだね」

ベントレー・コンチネンタルGT

「これはベントレーおすすめのセッティングだ」

「わたしはこれが素晴らしいと思う。エンジニアたちは何がベストかを分かっているんだね」

「ステアリングは非常に分かりやすいわけではないけど、重さは適切だし、優秀かつ先進的でクルマの性格に合っているよ。神経質なステアリングはこのクルマには似合わない」

「例えば812スーパーファストとは長距離移動で差が出るね。俊敏に感じるかもしれないけどわたしにはちょっとやり過ぎに感じちゃう」

「リラックスできるクルマがいい。乗れば乗るほど好きになれるね。セッティングをコンフォートに変えてみよう。違いがわかるかな」

「良いんだけど、クルマ全体がフワフワするね。それにモードを変えた直後は大げさに変化するように味つけられているね」

「硬めのスポーツモードにしたら、最初の数秒はとても硬くなって、徐々に戻る感じだね。だから違いがわかりやすい。面白いトリックだ」

「スポーツモードとの違いが感じられるね。ベントレーモードに戻そう。サーキットじゃない限りこれで十分だ」

ベントレーは素晴らしいクルマであった。アストンはどのように対抗するのだろうか。

アストンの仕上がりは

「さあマット、どう思う?」

「良い車だね」

アストン マーティンDB11 AMR

「四角いステアリングは好みじゃないけど。スエードの表皮はベントレーよりしつこいかな?乗り心地は若干硬めだね。ダンパーは一番柔らかいGTモードだ」

「このボタンは少し男っぽい感じだ。さっきまでのベントレーはオルガンストップやウッドがそこら中に使われて、レザーやアルミも多用されていたから、少しだけ大衆的に感じる。悪い意味ではなく」

「たいていの場合、大量生産車の方が超高級車よりチリも合っているよ。でも少しだけ普通のクルマに感じる。プラスティックも目につくしね」

「2段階くらいの差があるように感じる。でもどこがベントレーとそんなに違うかはわからない。とても美しく仕上がってるんだけど、見た目だけを取ったら少し普通のクルマだよね。もちろん悪い意味じゃなく、良くできている」

「でもコーナーでの走りはそんなことない。非常に良くコントロールされている。確かに硬いけれど」

「このクルマのモノコックはカーボン製かな?」

「いやアルミニウム製だよ。わたしはこのクルマが気に入ったけど、少し狭く感じる?」

「そうだね。そこは若干劣る。でもこのシートは快適だ。背中の曲線に合う感じがする」

「そして面白いのは、よりスポーティなのに快適性が
大きく損なわれてないことだ。長時間乗っても苦痛じゃないだろう」

「でも君のいう通り、質感はベントレーよりわずかに
劣るかもしれない。例えばこのデジタル式メーター。わたしは好きだけど、この配色ははるか昔に見覚えがある。1984年か85年くらいかな」

「シアンとマゼンタって名前の色だ。マゼンタって色はその時初めて知ったよ。そしてこのブルーはシアンだろう」

「このレトロな計算機能付き時計のようだね」

「まさにこの時代だ。これはちょっとラグジュアリーではないね。良くできているけど、少しズレているんだ」

ベントレーを上回る走り

「足回りは確かに硬いけど硬すぎるというほどではないね。だから乗り心地は非常に良い。とても快適だ」

「これはDB11 AMRだけど、同じV12搭載のDB11はもう少しだけ柔らかいね。そして後からV8搭載モデルを追加した」

アストン マーティンDB11 AMR

「DB11の良いところは、この類のクルマにしては俊敏なことだ。でも時々、奇妙な動きをする」

「コークスクリューみたいな動きだね。パワーを与えるともたれかかるようだった」

「でもV8モデルにはそれがなかった。そこでV12の立場を確保するために出したのが、AMRというわけだ。だから少し硬めになってるんだけど、それによって快適性は損なわれていないようだ」

「コントロール性は高くなって、操舵性も素晴らしいね。昔のヴァンキッシュやヴァンテージの素晴らしいステアリングを思い出すと、これはそれにはかなわないけど。最近のアストンの中では一番それに近いと思う」

「このクルマがベントレーに勝るところは、スポーティさだね。より二重人格的なクルマだし、洗練性はベントレーに大きく劣るところはない。だけどそれに加えて楽しさが付加されている」

「これはFRであることに加えて、500kg近く軽いことも影響していると思う。パワーは同等で639psだ」

「0-97km/h加速ではベントレーの方が速いけど、四輪駆動だからね。それでもわずか0.1秒の違いだ。おそらく現実世界に近いローリングスタートなら、こちらが勝つだろう」

「スペックは非常に似通っている。最高速度は335km/hと333km/hだし、0-97km/h加速はベントレーが3.7秒でこちらが3.8秒だ。公称値ではね」

「馬力は639psと635psでほとんど変わらない。

「だけど車重は大きく違う。これは重要な違いだね。でもこのV12ツインターボはもう少し軽くできたんじゃないかな」

「これは5.2Lだよね」

「ただ気に入ったのはDCTじゃなくいにしえのATでありながら、サウンドは非常に良いことだ」

「本当に良い音だね」

「以前の自然吸気エンジンと大差ない。ベントレーよりも良い音だね」

「僕もそう思う」

「コーナー間のつなぎも良いね。DCTは必要ないと思う。ベントレーはポルシェ譲りのものがあるけど、必ずしも高級車に合うわけではない」

「しかもDCTよりも軽いよね」

「シフトアップは十分に速い。どれだけ速くしたいんだろう。シフトダウンはそれほど速くないが、減速中だからそれほど問題はない。シフトダウンの時間はそれほど気にならないだろう。最近のATはすぐロックアップするからDCTと大差なくクルマに合っているね」

GTに何を求めるか次第

「エルゴノミクス的には文句ないけれど、一部は少し気になる。これは若干扱いにくい。最新のメルセデス製インフォテインメントではなく数世代前のものだ」

「だけどパドルがコラムに取りつけられているのは良い。いつでも操作しやすい。それと長めに引くとドライブに戻るのが好きだ。もう一度引けばマニュアルになる。なぜ他社はこうしないのだろう。わからないけど賢い選択だ」

アストン マーティンDB11 AMR

「天井のラインはどう思う?これはオプションだけど」

「自分で注文するならつけないかな。だけどレースチームに由来するのは良いね」

「それはそう思う」

「トリム全体についてはベントレーの水準には達していないけど、十分良くできている」

「ひとつ付け加えるなら、S007っていうタイヤの銘柄は最高だ。アストンに007」

「それはクールだね」

「自分で買うならどっちにする?」

「ベントレーは気に入った。あらゆる場面で優秀だ。だけど運動性能はこちらが上」

「そうだね」

「それでいて快適性はベントレーに劣らない。だからよりスポーティなこっちが気に入った」

「限界まで飛ばしたり、パワースライドをするわけじゃないけど、こちらの方がはるかに軽いし重さが邪魔になることが少ないと思う。より二重人格的なクルマだね。だからアストンを選ぶ」

「同意見だね」

「航続距離はやや短くて560kmくらいだけど、それは仕方ない。ベントレーは特にラグジュアリーさが気に入った。だけどドライバーとして気になる部分はほぼすべてこちらの勝ちだ。長い航続距離を求めるならディーゼル車を買えば良い」

「そうだね。このクルマはわたしのニーズに合う。十分ラグジュアリーだし、このクルマなら山越えもできそうだ」

「じゃあこうしよう。もしGTに乗ってポルトガルの別荘に行くとしたら港、に降り立ってからのドライブはどちらに乗っても楽しめるだろう。でもこちらはサーキットでも本当に楽しめそうだ。スポーツカーとしてね」

「南仏の山道なんかも良い。ベントレーにはできない走りができる」

「その通りだね」

「それでいて快適性は十分。結論はGTに何を求めるか次第、ということだ」