まだ先と思っていても、いつか向き合うことになる「相続」。元プライベートバンカーの世古口俊介さんが、不動産を相続するときにありがちな「困った状況」を解説。それを回避するための対策も紹介します。

■元プライベートバンカーが教える、相続のキホン

 はじめまして。株式会社ウェルスパートナー代表取締役の世古口です。「相続」をテーマに連載を始めることになりました。最初に、少しだけ自己紹介をしたいと思います。

 私は、大学卒業後に日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)に入社し、プライベート・バンキング本部で富裕層向けの証券営業に従事し、その後も、三菱UFJメリルリンチPB証券(現・三菱UFJモルガンスタンレーPB証券)を経て、クレディ・スイス銀行(現クレディ・スイス証券)でプライベートバンカーとして仕事をしてきました。

 2016年にウェルスパートナーを設立し、現在も富裕層や事業オーナー向けに資産配分と資産運用設計の最適化コンサルティングを提案しています。この連載では、私のプライベートバンカーとしての経験、顧客から寄せられた相談を踏まえて、相続について知っておきたい基本的な事柄を説明します。

■「富裕層」ってそもそもどんな人?

 一般的には、プライベートバンキングサービスは「保有資産10億円以上」の方向けに提供されるものですが、そうした富裕層は日本にどのくらい存在するのでしょうか。「相続」を身近な問題としてとらえるために、そのあたりから説明していきたいと思います。

 野村総合研究所は、2018年12月に発表した富裕層に関する調査結果の中で、2017年の日本における富裕層は126.7万世帯、その純金融資産総額は299兆円と推計しています。この「純金融資産総額」の中身は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いたもの。その金額をもとに総世帯を以下5つの階層に分類しています。

出典:野村総合研究所
国税庁「国税庁統計年報書」、総務省「全国消費実態調査」、厚生労働省「人口動態調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」、東証「TOPIX」および「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」、「NRI富裕層アンケート調査」などから野村総合研究所(NRI)が推計。

 上の図にもあるとおり、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」は118.3万世帯、そして純金融資産保有額が5億円以上の「超富裕層」は8.4万世帯となっています。

 つまり、純金融資産1億円以上の「富裕層」「超富裕層」に分類される世帯は126.7万世帯です。一方、総務省が発表した平成29年1月1日時点での日本全世帯数は5,363.9万世帯となっており、これを分母とすると、富裕層の割合は約2.3%になります。

■「富裕層」だけの問題じゃない、「相続争い」「相続税」の問題

 保有資産1億円以上の富裕層は相続人に相続する資産が多く、また相続税も多くなるので、相続に関する悩みが多く、私たちも相談をいただくことが多いです。しかし、相続争いや相続税は一部の富裕層だけの問題ではありません。保有資産1億円未満でも、相続争いや相続税の問題が発生する場合が多々あります。

 では、相続争いや相続税はどういった方に関係するのか。以下の簡単なマトリックスをもとに確認してみましょう。

 この図を見ると、自分も該当しているという方が多いのではないでしょうか。前述の野村総合研究所の調査は、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた「純金融資産保有額」をもとに推計したものでした。

 しかし、一般家庭では自宅等の不動産に相続財産が集中しているケースが多いですし、子どもが2人の家庭なら相続財産が4,200万円以上あれば相続税の対象となるため、意外と対象になる方が多いことがわかります(今回は、小規模宅地等の相続税の特例は考慮しません)。

 たとえば相続財産が6,000万円あり、法定相続人が3人いた場合は4,800万円を除いた1,200万円が相続税の対象となり、相続税率をかけた金額が相続税金額となります。これを、相続が発生してから10か月以内に納税するのがルールとなっています。なお、この相続税は累進課税となっており、相続財産が多ければ多いほど税率が高くなります。最も高い税率は55%となり、保有資産が数億円以上の富裕層は頭が痛い悩みとなります。

 また一般的な相続の手続きとしては、遺言がなければ相続人同士の遺産分割協議でどの資産を誰に分けるかを決めることになります。そして遺産分割協議で決定された内容を遺産分割協議書に記すことで、その相続財産の権利が相続人にあることを証明するのです。

 この遺産分割協議書を銀行や証券会社に提出することで、被相続人から相続人に名義が変更されます。そして相続人は、その相続した相続財産金額に応じて相続税を相続発生から10か月以内に納税することになります。つまりたくさん相続すればするほど納税金額も大きくなるということです。遺言や信託銀行が提供している遺言信託などを利用していると上記の限りではありませんが、一般的にはこのような流れが多いかと思います。

世古口 俊介[著]

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