その裁判過程は割愛するが、判決が出た2017年1月25日のことだ。東京地裁の裁判長は、前者は「却下する」、後者は「棄却する」と述べただけで、ものの10秒で退廷した。

 異様な法廷だった。まず、被告席には誰もいなかった。被告は傍聴席に座っていた。また、原告団と裁判所との間には「主文に続き判決要旨も読み上げる」との申し合わせができていたが反故にされた。

 しかもその判決文は、住民がその数年前に区を相手取って起こした「スーパー堤防取消訴訟」(2013年12月に敗訴)の判決文のコピペだった。曰く「本事業は、限度を超える権利侵害とは言えない。2度の移転を回避したければ、区の土地買収に応じればよかったはず。事業には公共性がある」というものだ。

◆一部しか完成していないスーパー堤防でも「効果がある」と東京高裁・都築裁判長

 今回の東京高裁での控訴審でも住民側は敗訴した。しかし、都築政則裁判長が読み上げた判決文のなかで、筆者が「おかしい」と思った表現がある。

「地球温暖化の影響等も考慮すれば、超過洪水が発生し、(従来の)堤防が決壊する可能性は否定できない」というものだ。裁判所は本当に、地球温暖化と洪水の関係性を小岩1丁目において熟慮したのだろうか? 

 また、堤防は一直線につながって、初めて堤防の役目を果たすものだ。一部だけが完成しても意味がない。だが都築裁判長は、小岩1丁目という一角にだけスーパー堤防を造成することに関しても「効果がある」と断じた。

 傍聴席で筆者の隣に座っていた水問題の専門家は「あり得ない」と口にしていた。原告側の小島延男弁護士は「ひどい判決だ」と振り返り、おそらく上告をするものと思われる。高橋さんらは「これは小岩1丁目だけの問題ではない。もう少し頑張らねばなりません」と言葉を締めた。<文・写真/樫田秀樹>