サヨナラ弾を放ったヤクルト・村上宗隆

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◆ チーム一丸「みんな諦めずにやっている」

 19歳の一振りが勝負を決めた。

 9回裏・無死一塁、ヤクルトの村上宗隆がDeNAの守護神・山崎の投じた初球を捉えると、打球はバックスクリーンへと突き刺さる25号逆転サヨナラ2ラン。右腕を挙げてガッツポーズした村上。19歳6ヶ月でのサヨナラアーチはプロ野球史上最年少という偉業だ。

 本塁ベース付近でチームメイトから水をかけられ、祝福を受けたヒーローは、お立ち台で「最高です!」と声を張った。

 「前の打席も打てていなかったし、いい意味で開き直って、しっかり初球から『来たら打とう』と思った」と話し、ストライクゾーンなら積極的に打つことを心がけた。

 9回に4番手で登板したマクガフが打たれ、2点を勝ち越された直後だった。

 敗色ムードが漂い始めた中、先頭の4番・バレンティンがバックスクリーン右へと運ぶ24号ソロを放つと、続く5番・雄平が内野安打で出塁し、執念を見せた。

 「みんな諦めずにやっている。僕もその中の一人ですし、なんとか勝ちたいと思ってみんなやっている。結果的に僕が打ちましたけど、みんな一丸となって繋いでくれて、ああいうホームランが打てたと思う」

 8月はここまで11試合で5本塁打。30本の大台も見えてきたが、若き大砲は記録よりもチームの勝利に貢献することを誓う。

 「いろいろな面で迷惑をかけている。こうして勝つことが一番みんなで喜べると思うので、もっともっと勝てるように頑張りたいなと思います」

◆ 小川監督「これがホームランの力」

 小川淳司監督は、村上に対して「すごいですよね、ああいうところで」と、土壇場でチームを救う一撃を放った若武者を称賛した。

 「これだけお客さんが入ってくれて、ああいう形で最後勝てて本当に良かったと思います。なかなか神宮で勝てない試合が多かったので…」と安堵し、ホームのファンに勝利を届けられたことを喜んだ。

 そして、「これがホームランの力。あっという間のすごいゲームだったと思います」と、劇的な幕切れとなった“真夏の神宮劇場”に指揮官も酔いしれた。

 村上自身、サヨナラホームランは野球人生で初めての経験。「なんか不思議な感じですね」と語った背番号55は、これからも闘志あふれる一打でチームの勝利に貢献する。

取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)